科学と呼ばれる魔法が発達し進化を遂げてしまった。

まさに遂げてしまった…


様々な生命が無秩序に生産され、食料に娯楽に、進化という命題の下、歯止めが無くなった。

元々の固有種を見つけることは、ほぼ不可能になり、その固有種さえも生み出した。

それでも当初は生み出された命は新しい命を育まない措置が取られていた。

しかし、知的好奇心は倫理観や取り決めを吹き飛ばしてしまうものなのかもしれない。

一つの命が命を連鎖させるために生み出された。

制御していたものを開放すればいいだけなのだ、何よりも簡単だった。

そこから、完全に狂いだす。

気がついた時にはすべての命の連鎖が始まっていた。

命の本質を見誤っていたのかもしれない。

それこそまさに、命の力なのかもしれない。

大切なことは認識ではなく、現実なのだ。

爆発的に生命は増殖していく。

そして、種族を超えた交配まで起きてしまった。

未知の種が数え切れないほど生み出された。

新たな命は強かった。

すべてを作り出したモノ達よりも。


科学が望んだように新しい世界、秩序が生まれた。

無秩序な世界…


「こっちにいってみよう!」

声と呼ばれるものなのかもわからない声がした。

「似たような場所ばかりだなぁ。」

別の声がした。

「なんとなくこっちだよ。」

「任せる、お前の方がわかってそうだし。」

ボクは警戒を強めていく。

足音も近づいてきている。

「何かいるな…。まぁ大丈夫だろう。お前がいるからな。」

「そうそう、だいじょうぶ!つよいもん。」

声の通り片方は強そうな気配がする。

ボクは警戒から威嚇への距離を測っていた。

「こっちから挨拶しとくか?」

「たたかうの?いいよー!」

「いや、ただの挨拶だ。今は食料もあるしな。」

ボクは先手を取るために二匹の前に飛び出した。

「そっちから挨拶かい?……人型か…言葉がわかるか?」

「あいさつはー?」

ボクの牙をあらわにする威嚇は意味を持たないようだ…逃げるか…

「人型なら言葉が通じるだろう?俺の名前はミスティ、こいつはナル。お前は?」

敵意は無いようだ…が、警戒は続けながらボクは答えた。

「ボクはアルナー。」

「アルナー…アルか?アルでいいな。お前も行くんだろう?一緒にどうだ?」

「行く?どこに?」

「ん?お前は行かないのか?」

「ナルはいくー!」

「いや、お前は知ってる。それより、アル、お前知らないのか?」

「何を?」

「警戒は解いてくれ、話しづらい!どちらにしても向かうことになるからな。アル!お前も行くぞ。」

「いっしょ!いっしょー!」

「どこに?お前たちはなにものだ!」

「だから俺はミスティ、こいつはナル、いいから行くぞ。」

信じられるような状況ではなかったのに、この時ボクは行かなければ!と強く思ってしまったんだ。

心に刻まれた何かなのかはわからないけれど、ボクは二人と行くことにしたんだ。

「ボクはアルナーだ。」

そう言って先を歩き始めたんだ。

「アルでいいだろ。言いやすいし。それより道知ってるのか?」

「アル、アルー!」

追いかけてきた二人とボクは行くことにしたんだ。

何もわからないけど一緒に行くことにしたんだ。