カタメ | サムライTRADER ゲッツ

カタメ

安藤幹夫はクラスでも目立たない男だった

自分もそれでよかった

特にいじめられていたわけでもないし

一人が好きだった

休み時間もいつも一人でいたが

それが心地よかった

そういうたぐいの人間は

勉強が出来るのがお決まりだが

幹夫は学力もあるほうではなかった

女子には避けられてた

いつも一人でいて根暗だと思われてたし

顔が深海魚に似てるから

あだ名はあんこうだった

いや、あだ名とは呼べない

別にそう呼ばれるわけではないから

ただ自分のいないところでそう呼んでいるらしい

あんこうってキモいよね

そんな感じで言われているのだろう


そんな幹夫だが好きな人がいる

同じクラスの香織だ

だからといって特にどうって事ではない

ただ遠くから見ていただけ

自分を好きになって欲しいわけでもなく

好きと言いたいわけでもなく

ただ見てるだけだ

香織はクラスでも人気者だ

言葉にすると陳腐になるが

可愛くて、優しい

まさにそういう子だった

実は香織だけは

幹夫に2.3回話しかけた事がある

幹夫はそれを忘れる事はない

彼女の笑顔

幹夫にはまぶしかった

まぶしすぎたのかもしれない