「英国王のスピーチ」あたりからか? 娯楽大作は陰をひそめ、小品だけど心にしっとりと残る品の良いものが評価されるようになっていると感じる。
今年はノミネートされるどの作品も見たくて仕方がなく、公開されるや、映画館へすっ飛んでいく日々が続いている。結構大変なのだ。
ノミネートの中に「SELMA」という作品があった。
あら?私の名前に似てるわ、などとアホなことを思ったが、キング牧師の映画と聞いて心を正し、絶対見ると決めていた。
恥ずかしながら、“黒人の人権のために活動し世界を変えたが暗殺されてしまった”くらいしか知らない自分が情けなく、勉強のためにも見なくてはならなかった。
キング牧師についての長編映画はなんと、初めてだそうで!
今まで多くの人が作ろうとし、途中で頓挫するということを50年も繰り返してきたとのこと。
あのスピルバーグ氏でさえ最後の最後で諦めたらしいのだ。
というのも、キング牧師の有名な数々のスピーチに著作権があり、何人もの遺族が管理しているため、一人一人の許諾を取るのに相当骨が折れるらしい。スピルバーグ氏は全員の許諾を取ったものの、脚本で却下され、実現されなかった。
著作権!? なんとまあ。
それを今回女性監督が(40代で2作目にしての!)この難関を突破してしまった!
キング牧師を語るにはスピーチのシーンを省くわけにはいかない、でも著作権が。ではどうしたか?
なんと、遺族の許可を取らず、著作権法に触れないようにスピーチの内容を類語に変換してしまったのだ!すごい発想力!
法的には平等を約束されているのに、近年でも黒人がいわれなき理由で簡単に殺される事件が続いている。だから、今作らなきゃ!という強い信念があったそうだ。
そして、素晴らしい映画が完成した!
日本語タイトルは「グローリー ー明日への行進ー」
ストーリーはざっとこんな。
1965年3月7日、前年にノーベル平和賞を受賞したマーティン・ルーサー・キングJr.牧師(デヴィッド・オイェロウォ)の指導のもと、差別により黒人の有権者登録が妨害されていることに抗議する600名ものデモ隊がアラバマ州セルマを出発。しかしこれを白人知事を筆頭に警官隊が暴力を振るい鎮圧。彼らが進んだ距離はわずか6ブロックだった。この事件のショッキングな模様は『血の日曜日』として全米で報じられ、公民権運動への賛同者を集めていく。抗議デモには日に日に参加者が増え、ついに2万5000人にまで到達。やがて彼らの声は大統領や世界を動かし、歴史を変えていく。
(Movie Walker より)
こんな簡単な説明では全然表現が足りないんですが。
当時、人として認められていなかった黒人の自由と平等を勝ち取るために戦った人、ただ歩くことで世界を変えた一人の男の真実の物語。
タイトルの「行進」の意味、映画を見てより深く納得。
偏見に満ちた人種差別に苦しむアメリカ南部では、何千人という罪のない黒人たちが爆破や暴力等によって命を落としていた。キング牧師は黒人が選挙権を取得し、政治に参加して世の中を変えていけるよう尽力していた。その活動拠点として選んだのがSELMAだった。
そして黒人差別撤廃のため賛同する仲間たちとともに「非暴力」を掲げた命がけのデモ行進に挑むのだ。
この人種差別問題は、もっともっと長い歴史と人間関係を勉強しなくては。本当に奥が深く根も深い。キング牧師がJFK亡き後のジョンソン大統領と1対1の交渉ができるくらいの位置にいた人だったことも初めて知ったくらいだから。とほほです。
テーマ曲がまた素晴らしい!
「無抵抗こそが真の抵抗」、これこそが悪の連鎖を断ち切る唯一の方法だろう。
「だれかがあなたの右の頬を打つなら左の頬も向けなさい」
キリスト教です。
そして大好きな映画「ミッション」とテーマは同じだった。(これについては後日)
主演のデヴィッド・オイェロウォさん、7年もの間キング牧師を研究してきたそう。そのおかげか、本当に圧巻の圧巻の圧巻のスピーチ!!!
有名な「I have a dream」や「Glory、hallelujah!」を聞いた時は鳥肌。
あのカリスマ性は見事としか言いようがない!何度でも聞きたくなってしまうほど引き込まれてしまう。
日本にあんな圧倒的なパワーで人々を引っぱって行ける人がいたらどんなにいいだろうとつくづく思った。
彼はインタビューで言っていた。
「JFKやキング牧師などの犠牲の上に今の自由がある」と。
数年前に見た「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」
白人に家政婦として低賃金で雇われている黒人女性たちが受けた屈辱、差別を白人女性ジャーナリストが本にして訴える実話。
印象的な話は、白人の家で働いているのに同じトイレが使えない、汚らわしいからという理由を付けられて。というもの。
取材を申し込んでも、報復が怖くて最初は頑に断っていた黒人女性たちが、勇気を出してしゃべり出し、自分たちを主張し始める。どれほどの勇気が必要だっただろう。
「それでも夜は明ける」
ブラピがプロデューサーということでも話題になった。
自由黒人がさらわれて、12年もの間奴隷として働かされた体験談。アカデミー作品賞受賞作品。目を背けるようなつらいシーンが沢山あった。
1840年位から1960年前半の話。
どれも本当につらい人生を歩んでいるけれど、その中で泣きながら笑いながら逞しく生きる黒人たちが描かれていた。
どうしてこんな差別が生まれるんだろう。幼稚園生以下のような疑問が浮かぶ。
誰かを見下して人より優位に立たないと自分に自信が持てない人たちが作ったもの。
これはイジメの原理と一緒だね。
黒人がどんな理不尽な迫害を受けてきたか、島国で平和ボケしている日本人にはわからない。映画を見て衝撃を受けたって、実際にやられてきた人にしか本当の痛みはわからない。でもこの事実を知っているのと知らないでいるのでは大きく違う。現在起こっている事件の見方も変わる。
まあ、黒人の人種差別だけではなく、島国にいてはわからない差別は世界中いっぱいある。日本人は日本国にいる限り、人種としての差別はたぶんないだろうから、改めて幸せだとありがたく思った。
そして次に見た映画にキング牧師が絡んでいた!
どこまでも影響力のある方!
