
作品データ :
製作年 2019年
製作国 日本
配給 ワーナー・ブラザース映画
上映時間 117分
平山夢明の小説『ダイナー』(ポプラ社、2009年)を『ヘルタースケルター』の蜷川実花監督が映画化したサスペンス・アクション。元殺し屋の天才シェフが仕切る殺し屋専用のダイナー(食堂)を舞台に、殺し合いが日常の恐るべき世界でウェイトレスとして働くハメになったヒロインのサバイバルの行方を、華麗な極彩色のビジュアルで描き出す。主演は藤原竜也と玉城ティナ。窪田正孝、本郷奏多、斎藤工、小栗旬、土屋アンナ、真矢ミキ、奥田瑛二らがダイナーに集う個性的な殺し屋役で出演。
ストーリー :
幼い頃に母に捨てられ、祖母に育てられた孤独な少女オオバカナコ(玉城ティナ)。「即金・30万円」の怪しいアルバイトに手を出したばかりに闇の組織に身売りされてしまい、とあるダイナーでウェイトレスとして働くことに。そこは、要塞のような分厚い鉄扉の奥に広がる、カラフルで強烈な色彩美を放つ店内。店主と名乗る男は、元殺し屋で天才シェフのボンベロ(藤原竜也)。そして、ダイナーでのルール:①シェフに従うか、死ぬか。②殺し屋以外、入店不可。③どんな殺し屋でも、平等に扱う。
ボンベロが「王」として君臨するダイナーには、全身傷だらけの孤高の殺し屋スキン(窪田正孝)や、子どものような姿をしたサイコキラーのキッド(本郷奏多)、不気味なスペイン語を操る筋肉自慢の荒くれ者のブロ(武田真治)ら、ひと癖もふた癖もあるイカれた殺し屋たちが次々とやって来る…。毎日が極限状態の最高にブッとんでいる世界に放り込まれたカナコ。殺し合いさえ日常茶飯事の、命がクズ同然のこの狂気の世界で、果たして彼女は生き延びることができるのか…?
▼予告編
■私感 :
ストーリーも表現も、いわゆるベタな凡作だ。奇を衒(てら)った色使いはあるが…。
せめてもの救いは、ヒロインを演じた玉城ティナが(演技は下手だが)初々しい整った顔立ち(大きな瞳!)で可愛かったこと、またボンベロ役の藤原竜也が(外見上、線が細いのがひっかかるが)滑舌がよく耳朶(じだ)に心地よいこと。
そして、本作で何とか唯一見せたのが、ラストシーン:
時は経ち、メキシコ。町は「死者の日」のお祝いで活気づいている。その町に小さなダイナーを開いたカナコは、今日も“彼”のための席を綺麗に整えていた。…聞こえてくる荒い息遣いと、見慣れた足元。そこには、相棒のブルドッグ犬・菊千代を連れたボンベロが立っていた。抱きついてきたカナコの背中に、彼はそっと手を回した―。
何やらゴチャゴチャした画面の数々で食傷気味の私は、最後にいたって一瞬ホッと一息つき、解放感を味わった。
美少女カナコは、ついに狭苦しい日本の地から、長年の夢だった遠近感のあるメキシコの町に渡ることができた。そして、全員が殺し屋というトンデモない息苦しいダイナーとオサラバし、小さいながらも自分の店である安堵を誘うダイナーを開くにいたり、“愛する”ボンベロが生きているかは分からないけれど、彼の来店をいつまでも待ちつづけた―。
やがてメキシコの「死者の日」。それは、日本のお盆(「盂蘭盆会〈うらぼんえ〉」)のようなもので、1年に1度だけ亡くなった人が帰ってくると言われている日だ。ボンベロと菊千代が“愛する”カナコの元に来られたのは、「死者の日」なればこその出来事だったのかもしれない…。
しかし、それにしても、この場面で悠揚と現われた菊千代の姿はボンベロ以上に、私をグッと掴んで離さなかった。私が自他共に認める(犬が大好きな)愛犬家だったからだろう―。