作品データ :
原題 CAROL
製作年 2015年
製作国 アメリカ イギリス フランス
配給 ファントム・フィルム
上映時間 118分

『太陽がいっぱい』などで知られるアメリカの女性作家パトリシア・ハイスミスが1952年に発表したベストセラー小説『The Price of Salt』を、『エデンより彼方に』のトッド・ヘインズ監督が映画化。離婚訴訟中のエレガントな人妻キャロルに心奪われた、若くミステリアスな女性テレーズの切なくも美しい禁断の恋の行方を、50年代のニューヨークを鮮やかに再現した衣装・美術と素晴らしい映像美で描き出す。主演は『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットと『ドラゴン・タトゥーの女』のルーニー・マーラ。テレーズ役のマーラが第68回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞。
ストーリー :
クリスマスを目前に控えた1952年ニューヨーク。飾り付けられた街は活気づき、誰もがクリスマスに心ときめかせている。
テレーズ・ベリベット(ルーニー・マーラ)は、マンハッタンにある高級百貨店フランケンバーグのおもちゃ売り場で、アルバイトとして働いている。フォトグラファーを夢見る彼女はいつもカメラを持ち歩き、恋人のリチャード(ジェイク・レイシー)からは結婚を迫られている。
端から見ると充実した毎日を過ごしているように見えるテレーズだったが、漠然とした空虚感をぬぐえずに何となく毎日を過ごしていた。
そんなある日、おもちゃ売り場にキャロル・エアード(ケイト・ブランシェット)が4歳の娘リンディに贈るクリスマスプレゼントを探しに訪れた。ふと、テレーズはキャロルを一目見て、その貴婦人然として美しく優雅な佇まいから目が離せなくなる。鮮やかな金髪。艶(なま)めいた赤い唇。真っ白な肌。ゆったりした毛皮のコート…。
【二人の美女(Cate Blanchett、Rooney Mara)の出逢いの場面】
「ふたりは同時に目を合わせた。テレーズは開けていた箱からふと顔を上げ、女性はテレーズのほうに頭を巡らせたので、まともにお互いの目をのぞきこむことになった。すらりとした背の高いブロンドの女性が、ゆったりとした毛皮のコートを優雅にまとい、コートの前を開けてウエストに片手をあてている。瞳はほとんど透明といっていいほどの薄いグレーだが、それでいて光や炎のように強烈な印象を与える。テレーズはその瞳にとらわれて目をそらすことができずにいた。」[パトリシア・ハイスミス、柿沼瑛子訳『キャロル』河出文庫、河出書房新社、2015年(クレア・モーガン名義『The Price of Salt』〈現在はハイスミス名義で『Carol』と改題〉)。]
キャロルもそんなテレーズの視線に気づき、二人はプレゼントを一緒に選び、イブまでに届くように手配する。
たまらなく魅力的だった彼女を想うテレーズは、キャロルが手袋を忘れていることに気づき、すぐに自宅へと郵送した。するとキャロルから百貨店に電話がかかってくる。内容は手袋のお礼としてランチへのお誘いだった。(※娘の誕生日プレゼントを郵送してもらい、その住所を書く。そこに手袋を忘れていって、郵送してもらう。そのお礼にランチに誘う―。)
翌日、キャロルに指定されたレストランで二人は色々な話をした。キャロルは離婚することが決まっているらしい。彼女の結婚生活は、多くの女性が夢に見るそれとは程遠い、愛のない打算的なものだった。
その週末、テレーズは郊外のニュージャージーにあるキャロルの屋敷に招待された。心を躍らせ屋敷に向かうテレーズ。しかし、楽しい時間になるはずだった週末は、一変して修羅場に変わってしまう。
二人だけで過ごしていた屋敷に、突然別居中のキャロルの夫ハージ(カイル・チャンドラー)が帰宅してきたのだ。クリスマスイブにリンディを迎えに来る予定だったのだが、どうやら勝手に日程を早めて来たらしい。キャロルとハージは激しく言い争い、ハージは無理矢理にもキャロルとリンディを連れて行こうとする。一方のキャロルは頑なに彼を拒絶する。そして、ついにはテレーズにまで八つ当たりをしてしまう。テレーズは傷つき、険悪な雰囲気を背に屋敷を後にするのだった。
泣きながらアパートへ帰ると同時に、キャロルからの電話が鳴った。キャロルは心にもないことを言ったことを謝り、テレーズのアパートを訪れる約束をして電話を切った。
その翌日、キャロルは弁護士に呼び出されていた。どうしても離婚したくないハージは、リンディの親権を共同から単独へ変更したいという申し立てをしてきたのだ。
彼の言い分は、キャロルと彼女の親友のアビー、そしてテレーズとの親友以上の親密な関係を理由にあげ、母親としての適正に欠けるというもの。それは“離婚を取り止めなければ、二度とリンディとは会わせない”という脅しに近いものだった。そうしてキャロルは審問までの長い間、娘と会うことを禁止されてしまう。
その夜、高価なカメラをクリスマスのプレゼントに、キャロルはテレーズのアパートを訪れた。どうしても惹かれ合う二人は、自分の心に正直に生きようと、思いつくままに西へと向かう旅に出る。
この車での小旅行の途中で、二人はついに禁断の愛の世界へと走っていき、お互いがお互いにとって何ものにも代え難い存在へと発展していくが…。
【ラストシーン⇒テレーズとキャロルの最後の決断】 テレーズは異性愛者ばかりの、仲間とのパーティを抜け出して、キャロルが会食をしているレストランへたどり着き、そしてゆっくりとキャロルに近づく。このテレーズの姿に気づいたキャロルは、少し驚き、そして何とも言えない愛情のこもった瞳でゆっくりとほほ笑む…。(※自分が誰だか分からなかった女性〈テレーズ〉と、自分が誰だか知りすぎて本当の自分を押し殺していた女性〈キャロル〉が、互いの存在によって本当の自分を見つけ、本当の人生を歩みだすのだった。)
▼予告編
▼ Behind the Scenes :
