作品データ :
原題 UNE NOUVELLE AMIE
製作年 2014年
製作国 フランス
配給 キノフィルムズ
上映時間 107分
普通の主婦が“特別な女友達”と出会ったことで、平凡だった毎日が華やぎ、刺激と興奮に満ちた人生へと変わり、女性としての輝きを増していく姿を描くヒューマンドラマ。監督は『しあわせの雨傘』のフランソワ・オゾン。出演は『タイピスト!』のロマン・デュリス、『間奏曲はパリで』のアナイス・ドゥムースティエ、『黒いスーツを着た男』のラファエル・ペルソナ。
ストーリー :
幼い頃からの親友ローラ(イジルド・ル・ベスコ)を亡くし、悲しみに暮れていた主婦クレール(アナイス・ドゥムースティエ)は、ローラの夫・ダヴィッド(ロマン・デュリス)と生まれて間もない娘の様子が気になり二人の家を訪ねると、そこにはローラのワンピースを着て娘をあやすダヴィッドの姿があった。そんなダヴィッドから女性の服を着たいと打ち明けられ、戸惑うクレールだったが、やがて彼を“ヴィルジニア”と名付け、女友達として絆を深めていく。「男に許されない事を全てやりたい」とパリジェンヌのように美しく着飾った“彼女”と過ごすことが、刺激と歓びに満ちた冒険へと変わっていくクレール。夫・ジル(ラファエル・ペルソナ)に嘘をつきながらもヴィルジニアとの密会を繰り返すうちに、クレール自身も女性としての美しさが増していくのだった。そんな中、ヴィルジニアが男であることに直面せざるを得なくなったクレールが、自分らしい生き方を見つめ、最後に選んだ生き方とは…。
▼予告編
■アナイス・ドゥムースティエ(Anaïs Demoustier、1987~)トークショー(2015年6月27日、有楽町朝日ホール):
本作の主演女優(クレール役)アナイス・ドゥムースティエが、「フランス映画祭2015」に際し初来日。本作上映後のトークショーで、製作現場での様子やフランソワ・オゾン監督の意図や共演者についてなど、率直な興味深いお話を披露。

――― 最初のご挨拶を。
皆さんこんにちは!こんなに沢山の方に見に来て頂いて本当にありがとうございます。日本ではフランソワ・オゾン監督はとても愛されている監督だと思っていますので、こうして監督作品を携えて皆さんの前に登場できて光栄です。
――― アナイスさんは去年だけでも5本出演されて超売れっ子でいらっしゃいますが、この映画出演を決めた経緯は?
一つ目のモチベーションは、オゾン監督はフランスでもとても才能のある監督のおひとりですから、オファーを頂けたら女優にとっては大きな喜びでした。しかも、女性を描くのが巧みな監督でもあります。
二つ目のモチべーションは、この物語がオリジナルでとても変わったラブストーリーだったことです。私が演じるクレールは、最初から最後までラブストーリーを通じて本来の自分自身に目覚めていくという素晴らしい人物造形に魅力を感じました。
――― アナイスさんはオゾン監督にどうして選ばれたのでしょうか?
オゾン監督は表現豊かな眼差しを持った女優を探していたということを聞いたことがあります。確かにこのクレールという役は、セリフの少ない分、女優にとっては難しい役柄でした。クレールの目を通して物語をたどっていく役目もありましたから、細やかな表情でシリアスな場面やミステリアスな状況を表現する必要があったのです。クレールがどんな気持ちでいるのかを想像しながら演じるのは、とてもやりがいのある役でした。
――― ヒゲの濃いロマン・デュリスさんを目の前にして吹き出すことはなかったですか?(笑)
この映画はちょっと変わったラブストーリーなので、クレールがそんなにイケメンではない男性に惹かれていくのが解らないかもしれませんが、ダヴィッドが完璧に女性になりきれていない男性の部分を残しているところがオゾン監督の狙いです。だからこそ、クレールが惹かれていくのが衝撃的で感動的になっていくのです。オーデションではもっと女装の似合う美しい男優さんもいたのですが、あえてロマンのような男っぽい男優を選んだ理由はそこにあります。
クレールがダヴィッドになぜ惹かれていくのか?それは彼のルックスとかフィジカルな部分ではなく、ダヴィッドが持っている自由なエスプリとか魂に惹かれていったのだと思います。クレールは物語の最初の方では内気で自分の居場所を見出せないような女性でした。それがダヴィッドによって、自分を解放していき、本当の自分自身をダヴィッドを通じて見つけ出していくわけです。
――― 映画館の中でのシーンで、ヴィルジニアに痴漢するのはオゾン監督ですよね?
そうです!(笑)
――― アナイスさんがクレールと同じ立場になったらどうしますか?
もちろん女装したいという人がいたら一緒に過ごしますよ。私はそうしたことに反対の意見は持っていません。この映画の素晴らしいのは、クレールの接し方が理解できるように仕向けているところです。時折クスクスッと笑ったり大笑いしたりすることもありますが、それは決してバカにして笑っているのではありません。ヴィルジニアに寄り添いながら楽しんでいる笑いなのです。オゾン監督はこのように遊び心のある軽やかなトーンでこの深刻になりがちなテーマを描きたいと思われたのでしょう。私もそう思って演じました。
――― ロマン・デュリスさんも役作りが大変だったと思いますが、アナイスさんから見ていかがでしたか?
ロマンとの共演は、素晴らしい体験でした。以前から女装する役をやりたい!と思っていたらしく、カツラを着けたりハイヒールを履いたりすると、子どものようにキラキラっと目を輝かせていました。私にとってもいい刺激になりました。
普通は女優の方が化粧に時間がかかるのですが、ロマンは2時間位かけて化粧していましたから、私の方が男優待ちをしていました。
――― 彼の喜び様は素顔の時から伝わってきましたね?
だから、オゾン監督はロマン・デュリスを選んだんだと思います。
――― クレールは、ダヴィッドの中の女性の部分に恋をしていたのか、それとも男性の部分なのか、あるいは亡くなった親友へのレズビアンのような恋情なのか、3つの想いが交差していたように感じましたが?
クレールが恋したのはヴィルジニアです。ダヴィッドのことはどうでもいいと思っていたのです。確かに複雑なラブストーリーなので、親友のローラのような完璧な女性をヴィルジニアにも感じていました。また、ダヴィッドが創造したヴィルジニアにもセクシーさを感じていたのです。この撮影はとても微妙で不思議な感覚で過ごしました。他の映画で見るようなロマン・デュリスの視線を感じながら、女装した時にはダヴィッドの創造物であるヴィルジニアの視線にも対面しなければならない、というとても心が動揺するような撮影でした。
――― クレールのファッションがとても素敵でした。ロマン・デュリスとラファエル・ペルソナという二人の人気俳優に愛されるお気持ちは?
本当に幸せでした。ラファエルとは2回共演したことがあってよく知っているのですが、今回ちょっと可愛そうな役でしたが、本当にいい人なんだなあと思わせる演技をしていたと思います。ロマンは子どもの頃から憧れていたので、今回共演できてとても嬉しかったです。
衣裳については監督と相談して、ストーリーの進行によってクレールが変化していくので、それに合わせて衣裳もマニッシュで目立たないものから女性らしいフェミニンなものへと変化していきました。自分の女性っぽいところを受け入れていくわけです。
――― オゾン監督が他の監督と違うところは?
とてもスピーディーに仕事をする方です。彼が1年に1本映画を撮っていて、現場でも彼のパッションを強く感じられます。子どもようにエキサイティングして、いつも楽しんで映画を作っています。技術上でも他の監督とは違う点があります。それは彼自身がカメラを覗いていることです。俳優との距離が近くなり、俳優にとっても見られているという快感があり、気持ちのいい関係です。
――― 7年後だという最後のシーンの意味は?
(アナイスさんから観客に質問) 皆さんはどう思いましたか?クレールが妊娠していましたが、相手がヴィルジニアだと思う人は?ジルだと思う人は?
不思議なラストシーンです。わざと疑惑を残しておくのが監督の狙いです。実は私も監督もヴィルジニアの子どもだと解釈しています。ジルは捨てられて…ということです。親子3人のシルエットが夕焼けの向こうに映ることは監督が示す家族のアイロニーです。
――― 最後のご挨拶を。
今日は見に来て下さいまして本当にありがとうございました。もし気に入って頂けましたら、他の方にも勧めて下さい。