ヤスヒコは黙って歩いていた アタシもその後を歩いた


向かった先は…皮肉にもケンと初めてカラダを重ねた同じホテルだった


黙って部屋を選びエレベーターでも会話はなくて…


たまにヤスヒコの視線は感じたけどアタシは何も言えなかった


部屋に入ってやっとヤスヒコが口を開いた


「ほんまにええのか?」


いいわけがない…自分から言い出したくせに何故こんなコトを聞くんだろう


「いいも何も… ただアタシ今生理中やで そんでもええん?」


「それはかまへん」



先にヤスヒコがシャワーを浴びて出てきて入れ替わりにアタシもシャワーを浴びた


その最中、悔しさと悲しさとごっちゃになって涙が出た


フーゾクの仕事して知らない男に肌をさらすことなんて慣れっこになってたのに…



プライベートだとなんでこんなに自分の感情が出ちゃうんだろうね



ヤスヒコは絶対こんなコト言う奴じゃなかったのに、プライドも何も忘れてしまうほど腹がたってたのかと思うと…


ケンと新しい恋をはじめてアタシはそれまで支えてもらったヤスヒコのコトを蔑ろにして…


ユウジのコトだってそう 苦しめた責任はアタシにあるんだよね


ケンに危害が加わるコトも避けたかった



シャワーから出るとヤスヒコはビールを飲んでいた


意を決してアタシはヤスヒコに「早く終わらせよう」と言った


生理中だったのでベッドに血がつくのは嫌だった


それに…もう感情の無い男に抱かれるのはベッドの上じゃないほうがよかった


大理石の床にタオルを広げてそこでするコトにした



生理中だったので前戯もそこそこにアタシの中に侵入してくる


イヤとゆう感覚では無かったけど不思議な感覚…


まったく…何も感じなかった


ただ上で腰を振るヤスヒコがたまに視界に入るだけでアタシは天井を見上げて色々考えてた


感情の無いセックスは気持ちよくないってゆうのは過去に経験して知ってる


それとも違う、なんかアタシのあそこと子宮は麻痺したかのように何も感じなかった



ヤスヒコのアタシへの気持ちも怒りも、アタシのしたヤスヒコへの裏切りも、そして今やってる行為、ケンへの裏切り…


全て頭の中でグルグル回ってただ天井を見つめているだけ



アタシはマグロ状態でいたからヤスヒコも途中で萎えてしまった


行為をやめた後にさっとシャワーを浴びに行き出てきてからヤスヒコに


「もう気は済んだ? 約束だからケンには手ぇ出さないでよ」


「…それは約束やからな」


そう言うとヤスヒコは肩を落としていた



ホテルから出て自宅に帰り缶ビールを飲んだら眠気がきていつの間にか寝てた




翌日は金曜でいつもならケンが仕事を終えてどこかにアタシを連れ出してくれる日


アタシもデリヘルの仕事を金曜は早めに上がって週末は休みをとっていた


店からは稼ぎ時なのにと言われていたけどプライベートの時間を何より大事にしたかった



その日も早めに仕事を上がってきて家でケンからの連絡を待っていた


昨夜のヤスヒコとのコトもあって早くケンに会いたかった


家でケンからの連絡を待った


いつまでたっても連絡はこなくて時間も深夜にさしかかる頃、アタシから電話をした


「今日は家でゆっくりしたいねん」


ケンの言葉を聞いてアタシは半ギレした


いつもなら怒らないと思う


でもその日はヤスヒコとのコトもあった翌日でケンに払拭してほしかった


「それならなんで早く連絡くれへんの?アタシずっと待ってるやん」


「ごめんって とにかく今日はしんどくて一人で居たかってん 明日迎えにいくから


それ以上話すとアタシはひどい言葉を口にしそうな気がしたので電話を切った


一人で居たい日があるのもわかるし普段のアタシなら(じゃあ明日ね)って一言で済ませたと思う


ただ、その日だけは一緒に居てほしかったんだ



そしてたったこれだけのコトだったけど…


ケンとすこしずつズレを感しはじめたきっかけの日になった