ケンと付き合いはじめてアタシは楽しく過ごしていた
とゆうより無理やりテンション上げていた
ヤスヒコの事は考えたくなかった 考えないようにしていた
でもいずれはバレるだろうし、いつか言わなきゃいけない それは分かってた
ヤスヒコからの電話にもハッキリとアタシの気持ちは出ていたと思う
電話もそれまでなら3日に一度はかけてほしいと言っていたけど週に一度でいいってアタシから言い出した
喧嘩になるから週に一度会うことももうやめようと、都合のいい時だけ会うようにしようと提案した
物理的にも精神的にもヤスヒコから離れたかった
自分のズルさを棚にあげて…
あの神戸での喧嘩、あれが最後の決め手になってヤスヒコと別れないままケンと付き合い出していた
ケンは毎週どこかに連れ出してくれた
世の中はクリスマス色になって南港のATCでは巨大なクリスマスツリーが誇らしげに飾られ、点灯式にはケンと一緒に行き写真をとったりはしゃいで過ごした
12月の街中で週末にはいつもケンとどこかに出かけてクリスマスプレゼントはペア物をお互い交換しようってお互い1時間だけ別行動してプレゼントを選んで買ったりなんかちょっと若かった頃に戻ったように楽しんでた
その日もケンと一緒に出かけている時だった
ヤスヒコから着信があった
ケンにちょっと電話してくるって断ってその場を離れて折り返し電話をした
「ワシや …… お前、他に男おるやろ」
ドキっとした
いつかはこんな時がくるのは分かってたのに…耳鳴りがしていた
「…うん もう付き合ってるねん」
「お前なぁ…ワシの事ナメとんか? 最低な女やな!」
「うん …アタシ最低やねん ごめんな」
「もうええわ 呆れて物も言えんわ」
電話を切られた アタシは正直ホっとしていた
ケンは「どうしたん?」と聞いてきたけど「なんでもないから気にしやんといて」とだけ言っておいた
これで終われた…そう思っていた
その後アタシはケンとクリスマスを迎えペアリングとペアのネックレスをお互い交換したり、年末も一緒に過ごして大晦日のイベントや初詣にとケンとの付き合いを満喫していた
年が明けて少したった頃、平日にヤスヒコから電話があった
「話があるから会われへんか?」って…
中途半端なコトしてどう考えても終わり方はアタシが悪い
難波の駅で待ち合わせをして近くの喫茶店で話をした
「お前、ワシとの事どう思ってんねん」
「ごめん アタシはもう付き合ってる子おるねん」
「知っとるわ ケンやろ? あのくそガキ… ワシあいつしばいてええか?」
「ケンはあんたと続いてたん知らんねん アタシが悪いねん」
「お前…そんなにワシが嫌やったんか?もうワシじゃアカンのか?」
「少なくとも今は無理やわ アンタの嫌なとこいっぱいあり過ぎるねん だから気持ちも離れてん」
「どこやねん 教えてくれや」
「…くわしくはようわからん でもまずアンタは家を出るべきや 自分の親のありがたみもそれで少しはわかるんちゃう?」
「お前はワシが家を出たらワシの事また考えるんか?」
「それはわからん でも今のアンタやったらまず無理 アタシ自分の親を悪く言う奴嫌いやねん あとカズの時みたいに義理欠いた態度とかね」
「…他は?」
「アタシが死にかけた時ほっといたコトやね アタシは一人で住んでて何かあった時に手遅れとかなったら嫌や
あとは一人暮らしはじめたら分かるんちゃう?例えばアンタの髪型を普通にするとか」
「頼むわ… ワシを見捨てんとってくれ… お前やないとアカンねん」
「遅いよ… アタシとより戻ってからあんた悪いとこばっかり見せたやん もっと早くに気付いてほしかったよ」
「もう一度、ワシにチャンスをくれ」
「それはあんたの自由やん アタシはもしあんたが変わってそん時にあんたと付き合ってもいいって思ったらそう返事するだけやもん」
「わかった ワシはワシの出来る限りのコトをしてお前をもう一度取り戻す」
「…期待はせんといて あんたの人生を動かす権利はアタシにはないしそんな責任とられへんから」
「…わかった それとな、お前せめてワシと会うときはその指輪とか見せんでくれるか あいつとペアとかやろ?」
「気がつかんでごめんね 次会う時には気をつけるわ」
話を終えてからアタシは涙が出た
もっと早くにヤスヒコが変わってくれてたら… そしてアタシがハッキリ別れないままケンと付き合ったりしたからヤスヒコを苦しめたんやなって
ヤスヒコはそれからちょくちょく連絡するようになっていた
そしてアタシが言った通り神戸の実家を離れて大阪へ越そうと思ってると
「お前と同じマンションに引っ越そうかと思う」
「それはやめて 頼むわ」
「そこまで嫌がるな ワシも凹むわ」
そんな会話をした翌週には引越しを実行していた
アタシの家から車で10分といった距離
何故そこなのかを聞いたら
「お前がまた具合悪くなったら助けに行ける距離やと思ったからや」
そう答えた
一方アタシはケンとは仲良く過ごしていて、もう一組のチャットで知り合ったカップルと4人で遊んだりもしていた
その頃はまだケンの嫌な部分も見えず、ヤスヒコの事はケンのコトを別にしても考える余地がなかった
ヤスヒコもそれは気付いていた
大阪へ越してきてしばらくしてからアタシの家の近所のファミレスで夜に会うことにした
ヤスヒコはあれだけこだわってたロングのちょんまげ頭をばっさり切っていた
「髪型どうしたん?」
「いや…お前の言う通りな 仕事の面接とか行くのにあの頭やったらアカンやろ」
アタシは何も言わなかった
「お前が困った時はいつでもこうやって来れる だからいつでも頼ってくれ」
「気持ちはありがとう でも今は…あの子おるから」
「そうか…それでもどうしようも無かったら呼んでくれな」
それだけ話して帰っていった
あれだけ嫌なとこをたくさんアタシに見せてたヤスヒコがまたアタシの為に動いていた
アタシは自分のやってしまったズルい行動もそのままじゃいけないって思ってケンに話した
付き合い始める時ほんとはヤスヒコと別れてなかった事
そして今ヤスヒコはアタシともう一度やり直そうと少しずつ努力している事
アタシはヤスヒコと戻る事は無いけど友達としてつきあいたい
すごくしんどい時にアタシの事を支えてくれてたのは間違い無いからたまに会う事もあると思うと
ケンはあまりいい顔はしなかったけど渋々了承した
あのまま会わないほうがよかったのか今でもわからないけど、あの時のアタシはせめてもの罪滅ぼしの気持ちでヤスヒコと会う事を望んでた
だけどヤスヒコの感情はアタシでは無くケンへの怒りが強くなってきていた
アタシはその度にヤスヒコを宥め、謝り続けた
それにも限界があった
ある日ヤスヒコと会ってる時に食事をした後にゲーセンのコインゲームコーナーで座って話してる時だった
「お前がそこまで言うならあいつには手ぇ出せへん
その代わりお前を抱かせろや
それがアカンねやったらワシはあいつをしばくだけの話や」
…頭が一回転したように眩暈がした 心が凍りついた気がした
こんなコトを言わせるほどアタシはヤスヒコを傷つけて追い詰めてたんだ…
一度だけ聞き返した
「それ本気で言ってんの?」
「当たり前や 誰がシャレでこんなこと言うねん」
そしてアタシとヤスヒコはそのままホテルへ向かった