講演活動とスポットライト症候群 | SELF SUPPORT STUDY

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「講演活動とスポットライト症候群」

向谷地さんの新刊について書評でも書こうと思って、購入して来たのですが。
『吃音の当事者研究 どもる人たちが「べてるの家」と出会った』(向谷地生良・伊藤伸二著 金子書房 2,000円+税)
あまりに私のことを書いているので、私が書評を書いたら、手前味噌なのでやめます。
読んでいて、ふと、連想したのが、講演活動に伴う「スポットライト症候群」のことだったので、そのことについて書きます。

スポットライト症候群とは、講演活動で脚光を浴びて、むしろ居心地が悪い上に調子も崩す、という状態を指すと、私は概略的に述べておきます。

病気と上手く付き合う方法を当事者研究して、注目されて、講演でも喋って、ということをしていると、陥りがちなのがスポットライト症候群です。

病気と上手く付き合うことが出来るようになって来た。
割と喋りもたつ。
こういう人がなりやすいと思われます。

「病気から生還した→これからはメッセンジャーの役割をしなければ」こういう矢印が本人の中に出来ると、スポットライト症候群は起きます。実際には、向谷地さんや川村敏明先生は、病気の調子が悪い人程講演に抜擢して喋ってもらう、という人選をしているので、実際のところべてるの講演はこのような矢印ではないことが多いです。
ですが、割と喋りがたってしまうキャラの人は苦労を抱えることになります。

スポットライトの眩しい光の中は、病気の御旗を振ることが出来ますが、その一歩隣の闇には、社会的スティグマ(偏見差別)が多様に混ざり合う大海原があるのです。
本著の中で、「今まで自分が統合失調症をもっていることが自分の錦の御旗になって、そのことで生きてこられたのに、その看板の字がだんだん色褪せてきて、ただのひとりのソーシャルワーカー、ただひとりの自分という看板で生きなくてはならなくなったときにものすごく不安で、何を頼りにして生きていったらよいかわからない」(向谷地2013;p176)と、私の最新の相談をぶっちゃけて書いていますが(笑)。多様性の大海原には、ただひとりの自分でしかない裸の自分で泳ぎださないといけないのです。病気の御旗が振れるのは、もう流行遅れの技なのだと、肝に据えて。
スポットライトのじりじりと熱い光から出るのは、とても怖いのです。ですが、闇の中に泳ぎださなければならないのが、スポットライト症候群の宿命です。その熱い光の中で、病気にしがみついてはもったいないのです。

講演活動では、ユーモアたっぷりにユニークな意見を向谷地さんも私も述べるので、質疑応答の時に本気で「不謹慎な!」と怒られることも度々です。私も向谷地さんもそんなお怒りのご意見に「のほ~」としてお答えしますけれども。本気で「不謹慎!」と直接お怒りくださる方は、とてもセンスがいい方々だと思います。その向こうの闇に、多様な考えを持って、斜めに見ていたり偏見を持っていたりする無言の方々が居るはずです。闇に泳ぎだすのが怖いのは、そんな予想からでしょう。ただ、多様性の大海原は、それこそ全ての命を育む多様性なのです。だから、泳ぎだす勇気が重要なのです。

矢印の話に戻り、「生還のメッセンジャー」という使命感を持ってしまうと、雑多な思惑を持っている視線へ、身体が固くなるというか、力が入り過ぎているために柔軟になれないのではないでしょうか。

吃音もまた、雑多な思惑という大海原への航海のように感じられます。

当事者の講演活動は、スポットライト症候群とも付き合うために、雑多な思惑を持つ多様な人々を、「豊潤の海」と捉え直すことが重要ではないかと考えます。
そして、人生を自分が生きることは、その「豊潤の海」を泳ぐことなのです。そこに恐れや不安は付いて回ります。裏腹に悲しみもある、それであたりまえであり順調なのです。
あまり、一般化した答えらしい答えではありませんが、私は今日も、粛々と一日一日を生きています。

書評といえば、併せて購入した『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(押見修造著 太田出版 660円+税)の方が当たりでした(汗)。ここまで書いて向谷地さんの本を薦めないということが笑えますけど。
著者は吃音を持っていて漫画家になった方で、吃音を持つ主人公の青春を描いています。絵柄もかわいいし、青春漫画としてもおすすめです。この主人公の志乃ちゃんも、多様性の大海原へ泳ぎだした青春なのではないでしょうか。

肩に力が入り過ぎていて辛い当事者の方がいらっしゃったら、是非とも、鏡を見て!そして変顔をして!おもいっきりありえない変顔をして、クスッと笑えて来たら、親指を立てて満面の笑顔を自分に見せてあげてください。

By katsuko.