草津湯(八之湯)
大田区東矢口二丁目の「草津湯」に浸かってきた。
「草津湯」は、多摩川線の矢口渡駅から、歩いて5分ほどだろうか。
すぐ近くには、日体大荏原高校の広々としたグラウンドが見える。
この辺りを学区域とするのは、大田区立安方(やすかた)中学校だ。
学園と言えば、安方中学の卒業生が森田健作。
僕よりは、5歳ほど年長だろうか。
彼のテレビ・デビュー作である『おれは男だ!』を思い出す。
僕の高校時代と重なるが、話の筋などは覚えていない。
ヒロイン役の早瀬久美の清純でありながら姉御肌の独特なキャラクターと、森田健作の『さらば涙と言おう』の叙情的な歌唱……ドラマは、ひたすらドタバタ・コメディーなのだが。
森田健作はみるみるうちに演技力を身につけ、『おれは男だ!』から3年後には彼の代表作とも言える『砂の器』の吉村刑事役を、丹波哲郎を向こうに回して堂々と演じた。歌手としても役者としても、確かに何かを「持っている」と感じさせた。
驚いたのは、40歳代になると政治家に転じたことだ。当時のロナルド・レーガンに影響を受けたのだろうか。
最初は、タレント議員として、参議院で当選し、その後、衆議院に転じた。
われわれ大田区民にとっては、ちょっといわくのある新井将敬議員の自殺を受けて、東京4区の補欠選挙に立候補して当選したのだ。
紆余曲折の果て、縁もゆかりもない千葉県知事となった。
県知事として何をやりたかったのかも、よくわからない。
毎年、年度末には定年退職する職員の懇親会で、『さらば涙と言おう』を歌ってくれたそうだ。
身内へのサービス精神だけは旺盛だったわけで、どこぞの都知事よりははるかにマシかもしれない。
そういえば、彼にも「詐称疑惑」があった。
学歴については、正直に「明治学院大学中退」と語っていた。
しかし、森田健作のトレードマークである「剣道」には疑義があった。
剣道二段と称していたが、剣道連盟の免状がない。
実は、少年時代の剣道の師匠から「君の腕なら二段は間違いない」と言われただけなのだ。
免状を「偽装」することもなく、彼は潔くそう述懐している。
この点でも、どこぞの都知事とは違っていた……。
あれれ。お風呂の話が、どんどん脱線してしまった。
草津湯は、平日の昼間にもかかわらず、けっこう若いお客さんもいて、賑わっていた。脱衣場に入る前の、ロビーと言うのだろうか、ビールも飲めるスペースがある。