世界を変えるお金の使い方/山本 良一
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10月の始めに、茨城県の老人が1億円を社会福祉協議会に寄付して亡くなっていたことがニュースで取り上げられていました。

生涯独身だった彼は、両親と3人で質素で事足りる生活をし、87歳で亡くなるまでの3年間は石岡市の老人ホームで暮らしていたのだそうです。

常々、 『私が死んだらびっくりする』 と、口にしていたそうですが、死後に銀行を経由して1億円を寄付された彼の計らいはとても人情が通っていて粋なものだったと感嘆してしまいました。


この本の中には、1億円とは言わずに、100円から私たちが世の中をフェアな方向に少しずつでも変えていける使い方がたくさん詰まっています。

内容が思いのほか深くて、素晴らしい一冊だと思いました。


私達は日本に暮らしていて、 『世界がもし100人の村だったら』 の本に統計されているように、世界基準で見るととても豊かな生活を送っています。

ですがそれは経済的に豊かであるだけで、幸福感がその上昇率と比例しているとは言えないようです。

この本では、『豊かさ・幸福 unequal 金・モノ』では無いことに気づき、“豊かさの中身” を考え直していく方向に各方面から最初の第一歩を踏み出している一般人が増えてきているということを、知らせてくれます。

そして私自身も常に、購入するものがどのような経緯で市場に並んでいるのかについて 想像力のアンテナを効かせて 『選択』 をしながらお金を使うのなら、自然・環境破壊、非対価的賃金で働く労働者、不要なダムや原発、無益な箱もの建設の減少化から、昔ながらの地場産業や文化を守ること、果ては国際援助に至るまで貢献することができるということを、豊富な事例と力強い解説の数々が教えてくれます。


ミスチル、坂本龍一氏、小林武史氏が発足したap bank に代表されるNPO銀行や、ふるさと税、環境税、福祉税への導入検討への動きなど、私達のお金が私達の想いに沿って運用されるステージにようやくたどり着きかけているのかもしれません。

いつもその記事から刺激とパワーをいただいているrumicommoniさんの記事でご紹介されていた、玉木雄一郎氏の改革案 にも感銘するものがありました。



最後にこの本からの一例をご紹介します。

9,900億円があれば、世界中の人々に毎年、安全な飲み水と最低限の衛生設備を提供することが出来ます』

9.900億円という額は、2004年時点での長者番付でいうと第34位の資産家が保持する金額なのだそうです。

1位となるとビル・ゲイツ氏で約5兆1300億円でした。


ここからは個人的な感想ですが、例えば長者番付上位者のうち、たった一人でも9.900億円を寄付してくれたのなら、世界中の人々が 清潔な“水” を得られて救われるという事実があるのに、それをしようという人間が一人もいない、ということに、単純に驚きを感じてしまいます。

非難でも失望でもなく、純粋な驚きです。


また、こんなものもあります。

『4000円で、まっくらな闇を体験できます。 視覚を使わずに歩き、ものに触れ、人と対話することで、世界への眼差しが変わり新たな感覚が広がります』

詳細は、dialog in the dark をご覧ください。


この本は、押し付けがましくない内容がギッシリと詰まった良書だと思います。

データが多少古いのが残念ですが (2007年 改訂版を切に望む)、是非、機会がありましたらご一読いただけたらと思います合格