生命の暗号を聴く 名曲に隠されたタンパク質の音楽/深川 洋一
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地球交響曲第6番 の記事でもご紹介しましたが、インドでは古くから 『音は神なり』 と言い伝えられてきました。

カトリック・キリスト教でも 『音楽は天国の言語であり、それを人間が発見して真似したのが教会音楽である』 という考え方があるそうです。

アフリカでは 『音楽は神々の言語である』 と見なされ、ギリシャ神話の中では、天空の神ウラノスと大地の神ガイアの娘とする、記憶の女神ムネモシュネと神々の頂点に立つゼウスとの間に生まれた9人の女神達の1人に、音楽の神エウテルペがいます。

いずれも、“音楽は天と地をつなぐものである” という伝承が、古今東西を問わずに残されているのです。


この本は、2001年5月にパリのナントという街で行われた、牛に寄生する “ウシバエ” の全滅作戦法に従わなかった二人の農夫の裁判を皮切りに展開していきます。

天然痘ウィルスを地球から絶滅させたように、牛の皮革に穴を開けミルクの産量に悪影響を与えるとされる寄生虫 “ウシバエ” を化学薬品を使って絶滅させる案は、国の命令でした。 しかし 2人の農夫は、

『“ウシバエ” の幼虫は牛に寄生しているだけで、その幼虫が牛の体内にいる

状態は病気ではない。

化学薬品を使って駆除すると、ミルクの中にその薬品が残留することが既に

証明されている。 それは消費者を騙すことだ。 そんなことはしたくない』

と、国の対策に反対をします。


そしてここで農夫側の証人として呼ばれた、ジョエル・ステルンナイメール博士の名前が登場します。

彼は独自の研究理論で “ウシバエ” の有益性について意見を述べるのです。

『ウシバエの幼虫は牛の免疫機能を向上させて消化を促進し、ミルクの品質も向上させます。 とりわけ重要なのは、ウシバエの幼虫が “プリオン” の産生とストレス関連タンパク質の産生を抑制することにあります』 と。


現在では狂牛病の原因が、“プリオン” であることがほぼ認められているといいます。 博士はウシバエがその “プリオン” を抑制し、更には牛のストレス関連物質をも減少させると証言し、その根拠を、『タンパク質の音楽』 を元に説明したのです。


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先ずは 『タンパク質の音楽』 とは何かをご紹介いたします。

彼は体内のタンパク質は、独自のメロディを持っているといいます。

つまり、「コラーゲン」 という題名の曲、「ケラチン」 という題名の曲、「インスリン」 という題名の曲、「成長ホルモン」 という題名の曲等があり、それぞれの曲はDNAの中に 『生命の暗号』 として隠れているというのです。


『ヒトゲノム計画』 により、約31億文字もあるというヒトDNA全文字の配列が

ほぼ完全に解明されたのが2003年。 今後はその配列文字の意味を理解する作業に重点が置かれるといいます。 (意味のある文章が書かれているのは

DNA全体のうちほんの数パーセントのみのようですが)


ステルンナイメール博士は、同じDNAという書物を文章としてだけではなく、

音楽としても読めることを発見したのです。

特にアミノ酸配列を解読してメロディに変換する規則を見いだすと共に、その

メロディの持つ意味まで明らかにしたのです。


粒子としてのアミノ酸が、「波動」としての側面を垣間見せることもある。

それは体内で特定のタンパク質を構成するプロセスの中で、異なった種類のアミノ酸 各々からミクロな波動(振動数)が発生し、それぞれが連なって特定のメロディを作り上げるのです。


その音は実際には非常に高音で、人間の耳には聞こえない音楽です。 普段私達が耳にしている音域よりも更に76オクターブ高くした音なのだそうです。 そして各アミノ酸が発する音(メロディ)は、12平均律音階に一致していて、中途半端なピッチの音は無いのだそうです。


1つのタンパク質からは2通りのメロディが得られます。

1つはそのタンパク質の合成を盛んにするメロディ、もう1つはそのタンパク質の合成を抑えるメロディです。

なぜメロディがそのような影響を与えるのかというと、それぞれのタンパク質がDNAと同じく特別な情報を含んでいるからで、細胞がそれらの情報を感知することで変化が起こるのです。

この本の中ではそのメカニズムを、ラジオ放送局からの電波と受信器(チューナー)とに解り易く例えて説明されています。


この発見は、ある種の音楽を聴かせると植物の成長を促したり、人の集中力を増したり、ヒーリング・ミュージックや子守唄の所以などといったことを、科学的に立証する一歩といえます。

実際、植物の成長に関わるタンパク質である、「エクステンシン」と、光合成において重要な「シトクロムC」などのメロディをトマトの苗に1日12分、2ヶ月間にわたって聴かせたところ、聴かせていない苗と比べて20%UPの成長を記録しています。


しかし、だからといって欲張ると逆効果なのだそうですダウン

メロディは数分間だけ聴かせるので充分。 そのあたりは自然の摂理の妙ですね薔薇むらさき 何事も“過ぎたるは及ばざるが如し”です。


さらに特筆すべきは、人間が美しい音楽を作るときのルール(協和音 + 不協和音の構成や比率)と、『タンパク質メロディ』のルールとは一致するのです。

これは、タンパク質が人間を構成しているのだから、“必然” だといえるのかもしれませんが...。

そう考えると、地球交響曲第6番 のクジラの歌が人間の創作した音楽と似ているという事実も、真から納得できるものがあります。


この本の著者の深川氏はここで、

『もし創造主が生物を創ったのであれば、『タンパク質の音楽』 こそが音楽の根源であり、〈神の音楽〉、〈天の音楽〉と呼ぶことができよう。

すると人間が作曲した音楽のほうは、〈地の音楽〉 と表現できる。

〈地の音楽〉の中に〈天の音楽〉の一部と一致するメロディが含まれていることがあるからには、〈地の音楽〉が〈天の音楽〉の影響を受けて作曲されたと考えるのはごく自然なことである。

それならば、〈地の音楽〉にも神秘的な力が幾分か宿っているとしても不思議ではない。』


と理論を広げています。

また、作曲家の武満 徹 氏は自身の著書の中で、

『音は間違いなく生き物なのだ。』

『音のひとつひとつに生物の細胞のような美しい形態と秩序があり、音は時間の眺望(パースペクティブ)の中で絶え間ない変質を続けている。』

と、語っています。


これまで無数の音楽が生み出されてきました。

また音楽によっては短期間で絶え、あるものは何百年も残ります。

著者の深川氏は、“何がその差を生み出しているのだろうか? おそらく、人間の生命活動が深く関わるような〈天の音楽〉の影響を受けた〈地の音楽〉だけが長く歴史に残るのではないか” と考え、第2章にて深く追求して行きます。


第二章では、ベートーベンの 『運命』 から、坂本九の『上を向いて歩こう』 まで、たくさんの名曲と、タンパク質の音楽との共通点分析をしていて、斬新で

意表を突いた結果がとても興味深いです。

とても長くなってしまいましたので、続きは後日とします。


この本は、本当に面白いです合格