シークレット・カメラ―ユダヤ人隔離居住区ルージ・ゲットーの記録/フランク・ダバ スミス
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第二次大戦中、ポーランドのルージという街に暮らすユダヤ人16万4千人が隔離されたたゲットー で撮られた写真集です。

撮影者は、敬謙なユダヤ教の家庭に生まれたメンデル・グロスマン

(1913-1945)という人です。

グロスマンはゲットーの行政府から、写真を撮る任務を命じられていた人で、彼の任務は、作業所で作った製品を撮ったり、強制労働者たちの身分証明書の写真を撮ることでした。


そういった任務以外にしかし彼は、個人的にフィルムと暗室を使うことを許されていた限られた人物であり、彼はその悲惨で非人道的な現実を残そうと、レインコートの中にカメラを隠し、ポケットに穴を開けて、誰にも気づかれることなく写真を撮り続けていたのです。


見つかった時点でもちろん何の迷いもなく銃殺されてしまったであろう状況の中、元々心臓の弱かった身体にも無理をさせて撮り続けた写真は1万枚にも及び、そのネガは死への場所アウシュビッツに強制連行される前日に、プリキの缶に詰められて彼の家の窓枠の下に隠しました。

また、プリントされた何百枚もの写真も、仲間達に預けていったといいます。


彼は、アウシュビッツに連行される途中で病気で亡くなりました。

最期までカメラを離さなかったといいます。


非常に残念なことに、1万枚にも及んだネガは、1945年5月にナチスが降伏したあと、グロスマンの妹によってイスラエルにある生活共同体に送られたのですが、1948年のイスラエル独立戦争により、消失してしまったのだそうです。


この写真集の写真は、グロスマンの親しい友人が密かに大切に護っていたもので、現在に遺されている数少ないものです。


写真の中には確かにそこで生きていた人々の姿があります。

あれほどの絶望的で残酷な、飢えと疲労と病と恐怖で満ちた一日一日の中で、助け合っている人々が見えます。

僅かすぎる食料を分け合って食べている兄妹がいます。

有刺鉄線越しに話をしている家族がいます。

小学生にも満たない子供達が、馬のように革帯をつけられて重い荷物を引っ張っています。

愉快な歌を唄って皆を楽しませている人が見えます。

穏やかに笑っている大人と子供達が見えます。


この写真集は底知れない悲しみと、

それでも消えずに灯っている希望の光を写し出しています。