人を動かす 新装版/デール カーネギー

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この本は1937年にDale Carnegieによって書かれ1955年に本人が死去した後も、基本原則はそのままに妻 ドナによって引き継がれ、以来カーネギー協会によって、時代に合致した 世界中から集められた事例に置き換えられて増刷に増刷を重ねてきました。

社会人として働いている以上、上司、部下、同僚、取引先、競合会社とのやり取りには気を使います。そして人間関係は対 恋人、家族、親、子供、妻、夫、親戚、近所、他人にまでも広く深くに及び、私達を取り巻いています。
私はつい最近まで上司のヒステリックな気質に悩んでいました。 彼女は部下が自分の方法で仕事を進めると、『時間がもったいない。 私のやり方にはすべて理のかなった意味があるのだから、その方法に従っていればいいのよ』 と、激昂していました。 下請け会社の人たちには常に高圧的なものの言い方をしていましたので、なかなかこちら側の要望に応えてはくれず、応対も冷たくなっていくのを感じました。 彼女自身、買収されてしまった自社内の新体制に対する不満や、天下ってきた新入社員への苛立ちが常にあり、かなり利己的な精神状態になっていたこともうかがえました。

すると会社はどうなるのでしょう?

利己的な意識は他の社員に伝染し、誰も会社の利益はおろか、他者への関心や心配りをなくしました。

社内に活気がなくなり、表向きだけの会話や業務、役割への不満・ストレスがつのり、明るい笑顔と思慮深さを備え前向きな思考を持った人間に人は集まりました。

上司は結局会社を去って行きましたが、私がこの本を手にしたのは、コージR さんのブログで紹介されていたのをきっかけに、『人を動かす人』 と 『人を動かせない人』 の違いってなんなんだろうと思ったからでした。


この本に書かれている『人を動かす』方法は、人情に思いを馳せて想像力を働かせたのならごく当然のことばかりともいえます。

ですが、交渉事や感情が高ぶっているときに相手の立場・目線と同位置に立ち、尊重をして言葉を選ぶことは意外に難しいものです。 それは心が伴っていなくては意味がないのです。

人はどれだけ正しく合理的な理屈であろうとも、命令や議論によっては心から納得しません。

特に上下関係や利害関係がある場合、逆に反感をもってしまうといいます。

『私が...、私の...、私を...』ではなく、『あなただったら...、 あなたのために...、 あなたを尊重して...』 という視点や立ち居地がとても大切なのだといいます。


本の中では『北風と太陽』の寓話が引用されていました。 旅人の上着を脱がそうとどれだけ北風を吹かそうとも、寒くなる一方の旅人は上着を押さえて脱ぐことを避けるばかりですが、穏やかな太陽がサンサンと照ったその後には、旅人は気持ちよく上着を脱ぐというお話です。


私の知人にもこんな話がありました。

彼の会社の受付嬢に“笑顔が少なく暗い印象を与える” という噂がちらほらと聞こえてきた頃、彼は 『君、もう少しニコニコ応対できない?』 という代わりに、『君の応対は落ち着きがあって評判がいいよ。 おっ、笑顔もいいね!』 と言ったのです。 すると実際に彼女の応対には程よく自信が感じられてとても印象のいいものに変わったのだそうです。 ここで大切なことは、彼が心から彼女を褒めたことだとも思います。

相手の弱点や誤りを指摘しても、特にビジネス上のこととなると長い目で見ても得策ではありません。

相手と同じ立場・目線に立たないと、相手も自分の目線にやってきてはくれないのだと教えてくれます。


そんな人間関係を円滑にする数々のヒントとすぐに実行に移せそうな具体的な案を、これでもかというほどの実例で力説してくれる本です。

たくさんの人達の難関を打破していく姿が目に浮かび、勇気がもらえる本でした。