プチ哲学/佐藤 雅彦
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この本の著者 佐藤雅彦氏は、CMプランナーや、番組挿入歌の作詞やプロデューサーとして活躍されている人で、『だんご三兄弟』や『バザールでござーる』などは記憶に新しいところです。

なぜか目を引く可愛らしい絵コンテや、耳に残るリズム・音楽からは、彼のクリエイティブで多角的な思考がうかがえます。


この本も、そんな可愛らしい絵コンテと共にとてもシンプルな31個の哲学が描かれています。

哲学というよりも、“頭を柔軟にして違った角度から日常を眺めなおしたら、面白い発見があるよ” というメッセージが込められているような、優しい息抜き本のような感じで読めます。


例えばこんな感じです。

(絵コンテ1)

元気のないケロ男君カエルが仙人に、

『あこがれのケロ子ちゃんと一生を添い遂げたいのですラブラブ』と願います。

仙人は、『よし!』とばかりに、魔法の杖をトンと叩きますDASH!

するとそこには歳をとって杖をついたケロ男君とケロ子ちゃんが現れ、ケロ男君は 『... そうじゃなくて...汗』 と落胆します。


(絵コンテ2)

同じ仙人の前に、お腹をすかせたモンキーがやってきて、

『一度でいいからバナナをお腹いっぱい食べて見たいのですバナナ

と願います。

仙人は『よし!叶えてやる』 と、魔法の杖をトンと叩きますDASH!

するとそこには、満腹になってお腹の膨れたモンキーが現れ、彼は 『そういうことじゃなくて...』と落胆します。


この2つの絵コンテからの哲学として、『結果と過程』とありました。

本文から抜粋すると、『この2つの漫画に共通していることは、最終的な“結果”が目的なのではなく、好きな人と一生過ごす過程や、念願のバナナをムシャムシャ思いっきり食べる、その経過が目的であったということです。

一般的には『結果』はとても大事です。 特にプロスポーツやビジネスの世界では、いくら途中経過がよくても、いい結果をださなければ評価されないというのが現実です。

それはそれでとても健全で、かっこいいことでもあります。

しかし、それに反して、この漫画のように、結果だけでは意味を成さない事柄も、日常には少なくありません。』

と書かれていました。


その他、穴の開いたタライはカエル君にとって船としては役に立たなくても、木の上に備えつけて水を入れたらシャワーとして機能したという絵コンテでは、『偶然性の発見』という名で哲学が展開されます。

新しい“のり”の開発中にとてもはがれやすいもの=失敗作ができてしまったのだけれども、『はがれやすいということは、はがしやすいという事ではないか...』 と考え方を転換してポスト・イットが生まれたことなども例として書かれていました。


『人間の発想は、見えない枠にとらわれています。 しかし、時として成功は、その枠の外にはみ出した所に発生します。 その時、私達は新しい発見にめぐりあえたりするのです。

このような偶然性の発見を、“セレンディピティー”と言います。』 (本文抜粋)


その他たくさんの“あっ、なるほど”と思わせるプチ哲学が書かれています。

何かについて深く考えたいときよりも、むしろ何も考えたくないときに読み直したくなる一冊です。

本の装丁もカラフルでとても可愛らしいです。