渡辺英樹に初めて会ったのは原宿の

ZESTというカフェバーでした。僕はその店でバーテンとか色々して働いていました。当時レコード会社のビクターが原宿にあってそこの社員の方が店によく飲みにきていました。すでに音楽をやっていた僕はそのビクターの人にデモテープを渡したりしていました。その人が合わせたい奴がいると言って連れて来たのが渡辺英樹でした。その日はビリヤードやって遊びました。一緒にバンドやろうという話ですぐに意気投合しました。コイツとなら売れるかも?と直感したんです。

 

 笠浩二と初めて会ったのは確かJRの田町駅。当時そこにアルファムーンというレコード会社があってバンドを売り込みに行った時の事でした。笠を見た時女の子だと勘違いしました。髪が長くて笑顔が愛らしかったからです。ニコニコ笑っていたのが印象的でした。が後で知ったのですが彼はヤマハのバンドコンテストでベストドラマー賞を獲得していた実力者だったんです。


 田口智治と初めて会ったのは池尻大橋にあったポリドールというレコード会社でバンドがすでに最初のアルバムをレコーディングしている最中でした。英樹が、すごいキーボードがいるから紹介したいと言われロビーで会いました。僕は何故か彼にとても熱くバンドについて語ってしまい今思うと初対面の彼にドン引きされたという記憶があります。


 米川英之と出会ったのはすでに事務所も決まりバンドの本格的な活動が始まっている最中でした。それまでサポートでギターを弾いていてくれたマーちゃんの代わりに正式メンバーとして彼は鳴り物入りでメンバーに加入しました。というのも彼は事務所が主催するロックギター教室の特待生ですでにバリバリのギタリストだったからです。やっとコードを覚えたくらいの僕とは段違いのテクニシャンでした。大阪のロケット広場という場所でライブをやった時あまりにも彼をイジってしまい楽屋でキレられた記憶があります。ライブの最中に謝った苦い記憶があります。


 僕がメンバーのみんなと出会ったのはこんな感じです。でも僕が知らない時期に英樹、笠、田口は友達だったようで最初から打ち解けた感じでした。だからバンドもすぐまとまりました。

 米川が加入した段階で僕は改めて最高のメンバーが揃ったと感じました。間もなく、ロマンティックが止まらない、のレコーディングになりました。ドラマのタイアップも決まっているとかで事務所もレコード会社もすごい意気込みでスタジオには著名なミュージシャンやエンジニアや数々の有能なスタッフが現れて僕等はひたすら緊張していました。がレコーディングは色んなプロの技の協力もあってあれよと言う間に制作は進みました。


 最初に笠にスポットが当たったのがこの時でした。それまでドラマーとして参加していた彼がリードボーカルに決定したのです。確かに彼の声は美しく、英樹の声も素晴らしいんだけどやはり笠がこの楽曲のボーカルだというのは誰もが納得する事でした。僕はひたすら焦っていました。ギターも下手だし出番と言えばあいの手コーラスくらいだったのですから。努力しないと置いていかれるぞ、とプロデューサーに言われて僕は泣きそうになりました。そんな僕にとって笠はまさしくバンドのエースでした。もちろん笠は笠で相当のプレッシャーを感じてまいっていた様でした。でも彼は根性で乗り切っていきました。しかもロマンティックが止まらないはめちゃくちゃ売れた、つまり笠はやりきったのです。結果を出したのです。もちろん他のメンバーもやりきったし微力ながら僕も頑張りました。


 笠はなるべくしてCCBの顔になっていきました。そして人生の最後までその役目を果たんです。そうだよねリュウ。


 ありがとうリュウ。今はこの言葉しかないよ。気が効かなくてごめん。

 みんなとの出会いを簡単に書いてみたけどどうだったかな?今はどこかでヒデキと2人で僕を指差して笑っているのかな?多分そんなところだろうね。でも少しだけギター弾けるようになったんだぜ。米川にはもちろん全然かなわないけどね。田口はもう音楽やめたとか言ってるけどきっと部屋でキーボードいじってなんか作ったりしてるよ、好きなチャーハンでも食べながら。


 ボクもそのうち行くからそしたらまたハモろうよ。きっと誰かほめてくれるよ。きっとね。じゃあしばらくの間さよなら。

 

 そしてもう一度だけ、

 ありがとうございました。


     ゴムことセキグチマコト