関口誠人オフィシャルブログ「セキグチMaコト超個人的日記」Powered by Ameba
第十話『怪人Nap』



教室で2人の男子がケンカをしている。止めるどころか皆焚き付けている。女子達もキャーキャー云って盛り上がっている。体育教師本多がやって来てケンカを止めた。男子の一人杉山が云った
「コイツが殴りかかってきたんです」
「ナニー!?テメエがカバンをオレの顔面にぶつけてきたんだろうが」
「まあ待て、とりあえず2人とも職員室に来い」
本多先生が2人を職員室に連れて行った。
6時限目が終わり、校門の所で女子生徒2人がモメている。
「貸した2千円返してよ」
「あ もうちょっと待ってよ」
「この前も、その前も、もうちょっと待ってって云ってたじゃん、今日はいい加減返してよ、さっき購買部で5千円札出してお釣り4千円以上貰ってたの見たんだからね」
タメ息をついて金を借りていた女子がビトンの財布から2千円出した。
「返せばいいんでしょ、返せば」
そう云って財布から出した2千円を地面に放り投げた。2人は掴み合いのケンカを始めた。

下校路にある公園のベンチの上に並んで座るマサトとサキ。
「殴り合いになったらいけないのはわかるけど、借りてた金を地面に投げて謝りもしないってなんだよ」



「な~に?女が陰険だとでも云いたいの?」
「だって、借りといて ありがとうの一言も云わず地面に投げるって何だよ?昔のドラマの悪人じゃないんだから」
「貸した方にも何かあるんじゃない事情が・・・」
「何か知ってんのか?」
「う~ん、つーか関係あるかどうかわかんないけど、二高関連のサイトでNap(ナップ)っていうのがあるよ」
「ナップ?何だそれ?」
「ワタシもよく知らないけど、(No apologiz)の略とか・・・」
「ノー アポロジャイズ?謝まるなって意味?」
「らしいよ」
「そのサイト誰がやってんの?」
「3年生の田中さんって人・・・ホラ、サッカーでいきなりJから声かかったっていう・・・」
「ああ・・・あの人か・・・」

その夜マサトは自室で早速そのサイトにいってみた。サイトの冒頭にまず<我が闘争>というタイトルで自分の主張が書かれてあった。
これまでの我が人生を語ろう。と始まって、生まれてから今に至るまでの事が書いてあった。何年にどこに生まれ、通った学校について、中2で1人ヨーロッパのトップチームのカブリーグにサッカー留学した事、成績は常にトップクラスだった事、などが書かれていた。ヨーロッパでのゲームやロッカーでのケンカに至るまで書かれている。その全てに共通して書かれているのは、決して間違った事をしてはならない。よく言われたのは、日本人はすぐ謝る。すいません、っていう言葉をまるで挨拶のように使っている。サッカーにはルールがある。しかしルールよりずっと大切な事がある。それは勝つ事だ。それがサッカーだ。ジャッジがとらなければ例えルールを破っていても全く問題ない。サッカーとは勝者だけができるスポーツ。敗者はサッカーをしたとはいえない。つまりサッカーは戦争だ。負けて自分や家族が殺されて、それでも精一杯やったからいいじゃないか、なんて言えるか?その位の精神で戦うからこそサポーターは熱狂する。負ければ絶望する。そして敗者を罵倒する。そこに謝罪の言葉なんか無価値だ。生きるか死ぬかの世界に謝罪なんかはない。そんな世界で私は生きている。だから私はこう考える。

<我が人生に於いて間違いは決してない!だから我が人生に謝罪の二文字は存在しない。自分は間違わないのだから人に謝罪する必要はないのだ!だから諸君にも言おう、自分を信じていれば簡単に謝るべきではないののだ!>
サイトのカウントを見ると5万アクセスを超えていたし、登録者数を見ると2千人を超えていた。
ブログは全て自分の信念についてだった。コメントは毎回何十件にもおよび、それを読んでマサトは唖然とした。コメントは全てこの一言から始まる。
「田中大総統閣下 万歳」
(なんなんだ これは・・・) 
「田中大総統閣下 万歳!閣下もついに次回の御試合におかれまして学生サッカー界から上の世界へいかれるわけですね!おめでとうございます。 閣下の忠実なしもべより」
「田中大総統閣下 万歳!閣下の思想に強く感激し、どこまでも閣下についていこうと思っております。 いつか閣下にこの身を捧げようと思っている一兵卒より」

翌日マサトはサッカーのグラウンドに行った。ミニゲームが行われていた。そしてボールが田中に渡った。すごいドリブルだった。途中何度もパスのチャンスがあったが田中は一切パスせず強引にゴールに持ち込み見事にシュートを決めた。顧問の教師を見るとヤレヤレという顔で首を左右に振るだけで何も云わなかった。

マサトと田中の目が一瞬合った。マサトはそのチャンスを逃さなかった。マサトは人差し指を田中に向けサイコダイブした。

眩しい光の前に立っていたのは『怪人Nap』だった。
「お前は人に謝らないそうじゃないか・・・」
「そうだ。謝らなければいけない事をしていないからな、フフフ・・・」
「本当にそうか?」
「そうだ」
「じゃ コレはどうだ、お前のヘンなサイトのおかげで今日もこんな事が起きたぞ」
教室でのケンカと校庭でのやり取りがフラッシュバックした。
「コレとオレに何の関係があるんだ?」
「インナービジョン!」
ニューロンは今日学校でトラブルを起こした4人の心を映像化した。
(オレは机の横にかけてあったカバンを取って肩にかけようとした、するとたまたまアイツの顔にあたったんだ)
(突然顔をカバンで横打ちされた、当然やり返すだろ!) 
(あの子がお金を返さない、だから迫ったらあの子がお札を地面に投げた、ケンカになって当然よ!)
(返すつもりだったのにみんなの前で泥棒みたいに言われたら自分の正義を形にしなきゃだめ!それが総統の教えだから、だから地面にお札をほうったの・・・ちゃんと返すと言ったのに信じないわけだからそれならひざまづいて)

「怪人Nap!何かが欠けていると思わないか?」
「何の事だ?全くわからん、お前おかしいんじゃないのか」
「そうか、じゃ くらえ、ニューロン ネクストビジョン!」
次のビジョンはこうだった。

塾が終わり早足で路地を曲がった田中。すると歩いて来た男と肩がぶつかった。田中は急いでいたからそのまま歩いた。背後から声がした。 「兄ちゃん、人にぶつかっといて一言もないんか、あーん?」 さっき肩がぶつかったガラの悪そうな男だった。
わさとじゃない、謝る必要はないだろ]
「さよか・・・なら、コッチの返事はコレや!」
男が手にしていたナイフが田中の喉にく突き刺さった。
「な なんで・・・」
「一言謝っていれば、アンタも死なずにすんだだろうにな、ほなさいなら」

死にそうになっている田中の前にニューロンが現れた。
「どうだ田中、コレでもお前は謝る必要はないというのか」
「わかった、ニュ ニューロン、何とか 何とかしてくれ」
「サイコリワインド!」
ニューロンは時間を戻したした。

塾から出てくる田中が急いで路地を曲がった。すると男と肩がぶつかった。
田中は一瞬唇を噛んだ。しかし振り返って
「す すいません」
「しゃーないな、気いつけや」
男は去って行った。
田中が気づくと目の前にニューロンがいた。そしてニューロンは言った。
「 サッカーはたしかにそういう側面もあるスポーツだ。しかしお前が謝罪する事を覚えなければそのサッカー留学で学んだ哲学も言えなくなる!しかもサッカーする事さえ出来ずに死ぬかもしれない・・・。
田中はうなだれて暗闇に消えた。

エピローグ
例の田中のサイトをマサトは開いてみた。すると サイトは閉じます と記載された下に、土下座人形のイラストが入っており
<謝る事も大事です 田中将太>
と書かれていた。マサトは思った。
(さすがにJからさそわれているだけの事はあるな、この柔軟性と素直さは・・・)

  化面ライダー ニューロン 第10話
 「怪人Nap」 完



              2011・12・31 完