しま:今回はアケメネス朝ペルシア[前550~前330年]の歴史だ!アケメネス朝がメディアから自立してきたって話は前回したね!ちなみに、ペルシアって今のどこを指しているか分かる?

生徒:はい。イランです。

しま:その通り!ペルシア猫っているでしょ?イラン生まれの猫ちゃんなんですよ。

 

 

生徒:かわ。

 

しま:ってわけで、アケメネス朝ペルシアを建てたのはイラン人ってことになるね。彼らはインド゠ヨーロッパ語族だ。今回はエジプトの時みたいに王様ごとに業績を整理していく形で進めていこう!

生徒:先生…王様の名前が覚えられそうにありません…なんか良いゴロ、無いですか??

しま:仕方ないなぁ…アケメネス朝の王は、順番に「急患、誰です?ダレイオス!」で覚えよう!“急”で“キュロス2世”。“患”で“カンビュセス2世”。“誰です?”が“ダレイオス1世”で“ダレイオス”が“ダレイオス3世”ね。OK?

生徒:ラストのダレイオス3世の強引さがすごいですね。もうそのまま言ってるし。あれ?ってかクセルクセス1世が抜けてませんか?

しま:そうだね。抜けている。そこは自力で、ファイト。 

生徒:なんと。

しま:よし、じゃあまずは建国者、キュロス2世の業績から!彼のポイントは2つ!まず1つ目は、エジプト以外の3王国を征服したこと!まだ、全オリエントを統一したわけじゃないってのがミソだ。で、2つ目が、前538年に新バビロニア王国を征服して、ヘブライ人をバビロンから解放したこと!つまり彼はヘブライ人にとっての救世主となったわけだ。以上。

生徒:なるほど。ってことは次のカンビュセス2世がエジプトを征服して、オリエント再統一ですか?

しま:エクセレント!ちなみに先生は「カンビュセス2世で完備です。」って覚えているよ。微妙だよねー。で、いよいよ出てきましたダレイオス1世!この人は覚えることが盛りだくさん!

生徒:もう沢山です…。

しま:甘いこと言ってないで!まず、新年のお祭りなどを行うための祭都としてペルセポリスの建設を始めた!

生徒:あれ?それっていわゆる首都とは違うんです?

しま:実は、アケメネス朝には都が4つもあって、それぞれに役割があったんだよ!一番大事な政治の中心はスサ、儀式を執り行う場所がペルセポリス!他にも、夏の王宮エクバタナや、冬の王宮バビロンがあったんだよ!

生徒:そりゃすごい!ってか今地図見たんですけど、アケメネス朝ってめちゃくちゃ広いですね。

しま:そう!なんたってエーゲ海の北岸からインダス川までぜーんぶだからね!だからダレイオス1世は国内を20の“州”に分割して、各地に“サトラップ”と呼ばれる知事を派遣した。このサトラップが地方の人民を支配して、徴税と治安維持にあたっていたんだよ!

生徒:え、でもサトラップが好き勝手にやったらどうするんですか?ダレイオス1世一人じゃとうてい見きれないですよね?

しま:そ・こ・で!ダレイオス1世は、国王直属の監察官を地方に派遣した!これを「王の目・王の耳」という!

生徒:なるほど!見張り役ってわけですね!でも、いざ遠くで問題が起こったとしても、すぐに駆けつけられなくないですか?

しま:そのために整備されたのが「王の道」だ!この王の道、スサからサルデスまで繋がっている。スサは行政の中心地だから良いとして、どうしてサルデスまで繋がっているか分かるかな?

生徒:えっと…サルデスって確かリディア王国の都でしたよね?…リディアと言えば………あ!世界初の金属貨幣だ!

しま:その通り!実はリディアの貨幣がギリシアに伝わり、ギリシアの繁栄を支えたんだ!そして、ダレイオス1世の生きた前5世紀と言うのはまさにギリシアの絶頂期!!!つまり、ダレイオス1世は、ギリシア繁栄の背景となった地中海交易を狙っていたんだね。

生徒:なるほど!王の道ってのは、軍道であると同時に、重要な交易ネットワークでもあったんですね!

しま:ちなみにこの王の道、全長約2400kmもある。だから駅伝制を整備した。

生徒:駅伝制ってなんですか?

しま:スサ~サルデス間に役人や馬を配置した宿駅を設けて、ながーい距離を効率よく移動するためのシステムを整えたんだ!これが駅伝制!

生徒:あ~!じゃあお正月にやってる箱根駅伝と同じですね!中継所にあたるのが宿駅ってわけだ!

しま:そういうこと!州に分割したり、駅伝制を整備したり、このへんはアッシリア帝国を参考にしているのがよく分かるよね!

生徒:あ!先生!!!アケメネス朝ペルシアって220年も続いたんですね!これだけでかい帝国を220年も維持するなんてすごくないですか!?なんか秘訣でもあるんですか!?
 

しま:コツは“アメとムチ”だよ

生徒:あーーー!!!そうだ!大事なのは緊張と緩和だった!アッシリア帝国の時は厳しくし過ぎて短命に終わった…ってことは、アケメネス朝は…?

しま:寛容策を取ったんだ!例えば、迫害されていたユダヤ人には信仰の自由を与えたし、フェニキア人やアラム人の交易も保護した!儲かればそれだけ国全体の税収も増えるしね!

生徒:なるほど!でも、そんなアケメネス朝も最後は滅ぶわけですよね。滅んだ原因は…外からの攻撃ってことですか?

しま:その通り。厳しくし過ぎたアッシリアは帝国内の反乱で滅亡に追いやられた。対して、寛容策を取ったアケメネス朝は、外からの攻撃で滅亡してしまう!

生徒:だれですか!いったい誰が攻撃したんですか!

しま:アレクサンドロス大王という人物です。アレクサンドロス大王のことはまた今度、西洋史の“ヘレニズム”というところで詳しく勉強するよ!


 

生徒:分かりました!

しま:とりあえず今日は、アケメネス朝最後の王であるダレイオス3世を見て終わりにしよう!ダレイオス3世は今言ったアレクサンドロス大王と2回戦います!1回目が前333年のイッソスの戦い、2回目が前331年のアルベラの戦い。ダレイオス3世は、アルベラの戦いに負け、逃げてる途中に部下に裏切られて殺されちゃう。そして前330年、ペルセポリスが陥落し、ここにアケメネス朝滅亡です。前330年…“さんさんと燃えるペルセポリス”…ですね。

 

生徒:ダレイオス1世はペルシア戦争開戦時の王で、ダレイオス3世はアケメネス朝ペルシア滅亡時の王ってことですね。

 

しま:では、最後にイラン文明について勉強していこう!まず文字。帝国支配のための公用語としてはアラム語やペルシア語を使っている。あと、イラン人は楔形文字を表音化してペルシア文字を作った。で、こっからが重要!楔形文字を使って、ダレイオス1世の業績を刻んだ碑文があるんだ。その名もベヒストゥーン碑文!ベヒストゥーンってのは地名ね。

生徒:どうしてそれが重要なんですか?

しま:このベヒストゥーン碑文によって、楔形文字が解読されたからだよ!さて、問題。楔形文字を解読したイギリス人は誰でしょう?

生徒:えっと…ローソソソソ…?

しま:いや、ナイツかよ!ローリンソンな!カタカナしっかり書き分けて!このローリンソンはすごいよ。あのね、ベヒストゥーン碑文って平野から120mくらいの高さの岩山の断崖に刻まれていたんだ。だからはじめは望遠鏡で調べていた。でもそれじゃ見にくいから、断崖をよじ登って模写する事にした!一日に何往復も…誰の手も借りずにひたすらロッククライミングを繰り返した。この命がけの転写をもとに、彼は楔形文字の解読に成功したんです!

生徒:すごい!まさに執念ですね!

しま:ですね。じゃあ次はイラン人の宗教について勉強していこう!彼らが信仰したのはゾロアスター教です。

生徒:ゾロアスター教…?聞いたことないですね。

しま:これがなかなか面白い宗教なんだよ。ユダヤ教は一神教だったね?それに対してこのゾロアスター教は二神教だ。一つが善の神、光明神アフラ゠マズダ。対立するのが悪の神、暗黒神アーリマンです。で、ゾロアスター教によれば、このアフラ゠マズダとアーリマンは永遠に戦い続けている。そして、この世で起こるあらゆる出来事はすべて、この二つの神の戦いのあらわれだと考えている。例えば、うっかり電車で寝過ごしてしまうことも、なかなか彼女ができないことも、どこかの国でテロが起きてしまうことも全てね!

生徒:いや、彼女ができないのは本人の問題ですよ。

しま:うるさい!でも、この戦いってのは、いつか必ず決着が着く。最後にはアフラ゠マズダが勝つんです。そして、アフラ゠マズダの勝利のあとで最後の審判が行われる。そこでは、アフラ゠マズダに味方した人間の霊魂が救われ、楽園へと導かれる。これが、ゾロアスター教なのです!

生徒:なんか、キリスト教と似てますね!善と悪って天使と悪魔みたいだし…最後の審判だって。

しま:そう!実はこのゾロアスター教、キリスト教によく似てる!で、じゃあキリスト教とゾロアスター教は、どっちの方が先かというと、ゾロアスター教なんです。というかユダヤ教よりもゾロアスター教の方が先なんです。ユダヤ教の特徴である、救世主や最後の審判という考え方は、ゾロアスター教の影響を受けて生まれたのです!

生徒:え、じゃあゾロアスター教が色々な宗教の源泉と言っても過言じゃ無いですね!

しま:少なくとも、ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教の源泉は、ゾロアスター教ってことになるね。まぁ、ヘブライ人はアケメネス朝の支配下でユダヤ教を確立していったわけだから納得できるよね。ちなみに中国ではゾロアスター教のことを「祆教」と書きます。拝火教ってのはあくまで“火を拝む宗教”ってことで、ゾロアスター教そのものを指しているわけじゃないから気を付けて!

生徒:ゾロアスター教には教典って無いんですか!?

しま:もちろんゾロアスター教にも教典はあるよ!その名も『アヴェスター』。ただし、この『アヴェスター』が編纂されるのは、もう少し先のササン朝ペルシアの時代になってからなんだ。それに合わせてゾロアスター教が国教になるのもササン朝の時。ついでに言っておくと、この後ゾロアスター教にキリスト教や仏教を融合させたマニ教っていう宗教が作られるんだけど、これもササン朝ペルシアの時代に成立してるから、合わせて覚えておこう!

生徒:なるほど!ゾロアスター教が国教になるのはアケメネス朝じゃなくてササン朝という時代なんですね!あとマニ教もササン朝っと…覚えました!

しま:じゃあ最後にちょっとした雑談を…。マツダ自動車って聞いたことある? 

 



生徒:CMで観たことあります!

しま:松田さんという人が創業者だからマツダ自動車なんだけど、ロゴマークを見ると「mazda」になっている。で、CMを見ると、明らかにマツダじゃなくてマズダって言ってる。何故、真ん中がZ(ゼット)になっているのか…。これ、ずばりアフラ゠マズダからとっているからなんです!

生徒:ほぉ!どうしてですか!?

しま:世界平和を希求し、自動車産業の光明となることを願ってつけられたそうですよ!