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あかね🍀鍵部屋映画化熱望中@3104soslove
※ただいまやけ食い中です。探さないで下さい https://t.co/StwpDVzeng
2018年10月11日 19:51
察して下さい(´;ω;`)ウゥゥ
本日はVS嵐があったけどまだ見れてなくて!! 本日特に新しいお知らせも無くて!!
ってか午前中に結果判明って前例ありましたっけ!? てっきり本日の午後にもっとビッグなお知らせが来るものと仕事中ずっとワクワクしてましたのに、特に何も無かったようですし!!
明日、何か来るんでしょうか。来てくれたらいいなあ……と祈りつつ。
本日はこのショックを食で紛らわせた結果、お腹が重くて寝込んでおりますので特別記事です。
ここまでついてきてくれた読者様が一斉に離れて行きそうで怖いですが明日には立ち直ってまた通常モードでお届けする予定ですので本日だけお休みさせて下さい。
××××××××××
体調不良時とかに使われる特別カテゴリ。ブログ主が大昔に書いた小説をアップします。
本日アップするのは、かつて香取慎吾さん&杏さん主演で火曜10時枠に放送された「幽かな彼女」をモチーフにした山コンビの小説です。
第一話では山コンビの2人しか出て来ませんが、全15話の中で残りの3人も出てきます。
特に怪しい絡みはありませんが、素人の書いた小説なんて気持ち悪いわ! と思われる方はリターンでお願いします。
記事の終わりに何か追加してることもないので、読んで合わないな、と思われたら速やかにリターンでお願いします。
何でもおっけーよ! という方のみ、思いっきりスクロールしてよろしくどうぞ!
××××××××××
「Ghost Room」 第1話
個展に出す予定の絵になかなか納得できなくて、うっかり二週間ほど、寝食忘れて没頭していた。
気がついたら家賃の振込期限をとっくに過ぎていた。
今月だけの話なら、大家に謝れば多分許してもらえただろうが。間の悪いことに、先月も同じような理由で振り込みを忘れていたため、覗くことすら忘れていた郵便受けには警告の文書が投函されていた。
そんなわけで、ようやく全部の絵を会場に運び込んで、「ああようやく一息ついた」と自宅に戻ってきたら、数少ない荷物が全部外に放り出されて玄関の鍵が取り換えられていた。
30にもなって、まさか宿無しになるとは思わなかった――なんて最初は感心していたけれど、まさかいつまでも廊下でボケーッとしているわけにもいかない。
仕方なく、その場でいらないものは粗大ごみに出して、最低限の着替えと絵を描く道具だけを担いで、不動産屋に向かった。
どんな部屋でもいい。贅沢言わない。その代わり今日から入居できる部屋を紹介してくれ――と頭を下げたところ。紹介されたのが、このアパートだった。
そんなわけで。おいらは今日から、これまで訪れたこともなかったこの町の「ボロアパート」がそのまま建物名として通用しそうなアパートで暮らすことになった。
気がついたら家賃の振込期限をとっくに過ぎていた。
今月だけの話なら、大家に謝れば多分許してもらえただろうが。間の悪いことに、先月も同じような理由で振り込みを忘れていたため、覗くことすら忘れていた郵便受けには警告の文書が投函されていた。
そんなわけで、ようやく全部の絵を会場に運び込んで、「ああようやく一息ついた」と自宅に戻ってきたら、数少ない荷物が全部外に放り出されて玄関の鍵が取り換えられていた。
30にもなって、まさか宿無しになるとは思わなかった――なんて最初は感心していたけれど、まさかいつまでも廊下でボケーッとしているわけにもいかない。
仕方なく、その場でいらないものは粗大ごみに出して、最低限の着替えと絵を描く道具だけを担いで、不動産屋に向かった。
どんな部屋でもいい。贅沢言わない。その代わり今日から入居できる部屋を紹介してくれ――と頭を下げたところ。紹介されたのが、このアパートだった。
そんなわけで。おいらは今日から、これまで訪れたこともなかったこの町の「ボロアパート」がそのまま建物名として通用しそうなアパートで暮らすことになった。
「あーあ。失敗しちまったなあ。あそこ、画廊に近くて便利だったのに……」
おいらをここまで案内してくれた不動産屋は、鍵だけ渡すと愛想笑を浮かべてそのまま帰ってしまった。普通、引っ越しってなると何だかんだ不動産屋が世話を焼いてくれるイメージがあったんだけど……例えばガスや電気や水道はどうすればいいのか、とか。大家はどこの誰で家賃はどこに振り込めば、あるいは渡しに行けばいいのか、とか。少なくとも、前のアパートに引っ越したときはそうだった。
でも、今回は何もなし。まあ、いくら何でも今日中に入居できる部屋を紹介してくれ、って言うのが無茶だった、って言うのは、おいらにもわかる。多分、不動産屋も忙しかったんだろうと自分で納得しておくことにした。
連絡先として携帯の番号は伝えてあるから、そのうち、大家の方から連絡が入るだろう。多分。
「さーて、どうすっかなあ」
ガチャリ、と鍵を開けて中を覗きこむと、前のアパートよりもちょっと狭い、見た目を裏切らないぼろぼろの部屋が目に飛び込んできた。
今時珍しい和室で、一応トイレも風呂もついてはいるけど、どっちもいつ掃除したのか首を傾げたくなるくらい汚い。普通、引っ越し前って掃除くらいしておくもんじゃねえのか。まあそれもこれも、おいらが今日中に入居したいって無茶を言ったからだろうけど。
後、台所。コンロと流しが申し訳程度についてるくらいだけど、どうせおいら、自炊はしないからお湯をわかすことができりゃそれでいい。蛇口をひねってみると、一応水は出たしコンロの火もついた。何でかはよくわからないけど、便利だから深くはつっこまない。
スイッチを入れれば電気もついたし、とりあえず、当座暮らすのに問題はなさそうだ。いいアパートが見つかってよかった。
「えーと、後何が居るかなあ。布団は欲しいなあ……でも、もう暗いしなあ……」
前の部屋ではベッドを使っていたが、さすがに人力で担ぎ出すのは無理があったので捨てて来てしまった。同じ理由で家具も家電もほとんど置いて来て、今、おいらの手元には財布と着替えと絵を描く道具しかない。これじゃさすがに不便だから色々買いに行かないといけないけど、不動産屋で大分もめたせいで、もう外は暗くなっていた。面倒くさい。
「まあいいや。もう寝よう。疲れたし」
物事を深く考えないのは、おいらのいいとこでもあり悪いとこだ、と昔誰だかに言われた覚えがある。
でもまあ、悩んでも仕方ないことってのは世の中にあるもんだ。幸い、個展のおかげで一応当座の生活に困らないくらいの金は持ってるし、まあ何とかなるだろう、とあくびをして。
冬用のコートを布団代わりにして畳の上に横たわると、そのまま、すとん、と眠りに落ちた。
おいらをここまで案内してくれた不動産屋は、鍵だけ渡すと愛想笑を浮かべてそのまま帰ってしまった。普通、引っ越しってなると何だかんだ不動産屋が世話を焼いてくれるイメージがあったんだけど……例えばガスや電気や水道はどうすればいいのか、とか。大家はどこの誰で家賃はどこに振り込めば、あるいは渡しに行けばいいのか、とか。少なくとも、前のアパートに引っ越したときはそうだった。
でも、今回は何もなし。まあ、いくら何でも今日中に入居できる部屋を紹介してくれ、って言うのが無茶だった、って言うのは、おいらにもわかる。多分、不動産屋も忙しかったんだろうと自分で納得しておくことにした。
連絡先として携帯の番号は伝えてあるから、そのうち、大家の方から連絡が入るだろう。多分。
「さーて、どうすっかなあ」
ガチャリ、と鍵を開けて中を覗きこむと、前のアパートよりもちょっと狭い、見た目を裏切らないぼろぼろの部屋が目に飛び込んできた。
今時珍しい和室で、一応トイレも風呂もついてはいるけど、どっちもいつ掃除したのか首を傾げたくなるくらい汚い。普通、引っ越し前って掃除くらいしておくもんじゃねえのか。まあそれもこれも、おいらが今日中に入居したいって無茶を言ったからだろうけど。
後、台所。コンロと流しが申し訳程度についてるくらいだけど、どうせおいら、自炊はしないからお湯をわかすことができりゃそれでいい。蛇口をひねってみると、一応水は出たしコンロの火もついた。何でかはよくわからないけど、便利だから深くはつっこまない。
スイッチを入れれば電気もついたし、とりあえず、当座暮らすのに問題はなさそうだ。いいアパートが見つかってよかった。
「えーと、後何が居るかなあ。布団は欲しいなあ……でも、もう暗いしなあ……」
前の部屋ではベッドを使っていたが、さすがに人力で担ぎ出すのは無理があったので捨てて来てしまった。同じ理由で家具も家電もほとんど置いて来て、今、おいらの手元には財布と着替えと絵を描く道具しかない。これじゃさすがに不便だから色々買いに行かないといけないけど、不動産屋で大分もめたせいで、もう外は暗くなっていた。面倒くさい。
「まあいいや。もう寝よう。疲れたし」
物事を深く考えないのは、おいらのいいとこでもあり悪いとこだ、と昔誰だかに言われた覚えがある。
でもまあ、悩んでも仕方ないことってのは世の中にあるもんだ。幸い、個展のおかげで一応当座の生活に困らないくらいの金は持ってるし、まあ何とかなるだろう、とあくびをして。
冬用のコートを布団代わりにして畳の上に横たわると、そのまま、すとん、と眠りに落ちた。
――目が覚めたとき、部屋の中は、真っ暗だった。
何でこんな時間に目が覚めたんだろう、と考えながら身を起こすと、俺の真正面で、すごいイケメンの兄ちゃんが正座していた。
「…………」
「……あ、どうも」
電気もついていない部屋の中は真っ暗だったのに、何故だか、おいらにはその兄ちゃんの姿がはっきりと見えた。
何でかな、と考えながら目を細めると、兄ちゃんの身体がうすぼんやりした明かりで包まれているのがわかった。
何て言えばいいんだろ。兄ちゃん自体が発光してる? 蛍みてえだな。
「ふわーあ」
大あくびをして、ごろりと畳の上に横になる。兄ちゃんには悪いけどまだ眠い。今日はもうこのまま寝てしまおう。相手して欲しいなら、多分明日も出てくるだろう……と、頭までコートを被って目を閉じる。
「あ……ねえ、ちょっと。そんなあっさり流されると、こっちも対処に困るんですけど……」
――が、そのままあっさり流してもらえるほど、世の中甘くなかった。まあ当然だろう。兄ちゃんにも立場ってもんがあるだろうし。ああでも眠い。出るなら何でもっと早く、アパートについたそのときに出てくれなかったんだろ。
「ごめぇん。おいら、今日はもう寝たい……明日以降じゃ駄目?」
「いやいやいや。少しは驚いてくれないと俺の立場ってもんが……えええええええええええええええええ!? あ、あなた、俺の姿が見えるのっ!?」
耳元で叫ばれて、俺が邪険に手で追い払うと。兄ちゃんは、驚愕の声をあげて後ずさった。
……あ、しまった。徹底して無視すりゃよかったかも。そうしたら、兄ちゃんも「見えないんだ」って諦めてくれたかもしれないのに。まあ、もう遅いか。
「…………」
「あ、ねえ今更無視はやめて、お願いやめて! 『見える人』って久々なんだお願い! 俺の話聞いて!」
「……うっせえなあ……」
ああもう。面倒なのに捕まった、とぶつくさ言いながら、目を開ける。身を起こすと、相変わらず電気のついていない真っ暗な部屋の中、一人で光っている兄ちゃんが、それは嬉しそうな笑みを浮かべていた。
……改めてみるとほんとイケメン。目はぱっちり、唇ぷっくり。すげえなー……でも男の癖にすげえ撫で肩だな。
兄ちゃんの外見に、そんな失礼な感想を抱きながら身を起こすと。兄ちゃんは、「すげえ、本当に見えるんだ!」と、それは嬉しそうな顔で俺の手を握った。
まあ、握った、って言っても。兄ちゃんの手は俺の手を素通りして、そのまますかっ、と床を空ぶってしまったけど。
……ほんのちょっぴり、おいらの夢、って可能性も疑ってたんだけど、どうやら夢じゃねえみてえだ。
「わかった……けど、おいら眠いから手短にお願い。今日、色々あってちょっと疲れてんの。明日は布団買いに行きてえし……」
「あ……はい。いえ、何かすいません」
おいらの苦情に、兄ちゃんはぺこぺこと頭を下げて、「あのう……」と遠慮がちにつぶやいた。
「あまり、驚いておられないようで……」
「うん。珍しいもんじゃねえし」
「はあ……」
「前のアパートにも何人かいたしなあ。でも、しょうがねえんじゃね? だってさ……」
ふああ、とあくびをしながら、兄ちゃんの全身に目をやる。
身に着けているのは、いわゆる死に装束。
真っ白な着物。ただし、合わせは普通と逆。頭に巻いてるのは三角形の布が取り付けられた鉢巻。べたべた過ぎるスタイルだけど、何故か、おいらが会った兄ちゃんの同類はみーんな同じ格好してたから、多分、それが兄ちゃん達の「正装」なんだろう。
「だって、世の中、どこかで誰かは絶対死んでるだろうしなあ……今まで誰も死んだ奴がいねえ土地なんて、この世にはねえんじゃねえかなあ……」
「…………」
「だから、まあどこに居ても不思議はねえって、おいらは思ってるけど? 幽霊なんて」
そう、言うと。
兄ちゃんは、苦笑を浮かべて「……あなたはすごい人だねえ」と言った。
すごいんだろうか。自分ではよくわからない。
何でこんな時間に目が覚めたんだろう、と考えながら身を起こすと、俺の真正面で、すごいイケメンの兄ちゃんが正座していた。
「…………」
「……あ、どうも」
電気もついていない部屋の中は真っ暗だったのに、何故だか、おいらにはその兄ちゃんの姿がはっきりと見えた。
何でかな、と考えながら目を細めると、兄ちゃんの身体がうすぼんやりした明かりで包まれているのがわかった。
何て言えばいいんだろ。兄ちゃん自体が発光してる? 蛍みてえだな。
「ふわーあ」
大あくびをして、ごろりと畳の上に横になる。兄ちゃんには悪いけどまだ眠い。今日はもうこのまま寝てしまおう。相手して欲しいなら、多分明日も出てくるだろう……と、頭までコートを被って目を閉じる。
「あ……ねえ、ちょっと。そんなあっさり流されると、こっちも対処に困るんですけど……」
――が、そのままあっさり流してもらえるほど、世の中甘くなかった。まあ当然だろう。兄ちゃんにも立場ってもんがあるだろうし。ああでも眠い。出るなら何でもっと早く、アパートについたそのときに出てくれなかったんだろ。
「ごめぇん。おいら、今日はもう寝たい……明日以降じゃ駄目?」
「いやいやいや。少しは驚いてくれないと俺の立場ってもんが……えええええええええええええええええ!? あ、あなた、俺の姿が見えるのっ!?」
耳元で叫ばれて、俺が邪険に手で追い払うと。兄ちゃんは、驚愕の声をあげて後ずさった。
……あ、しまった。徹底して無視すりゃよかったかも。そうしたら、兄ちゃんも「見えないんだ」って諦めてくれたかもしれないのに。まあ、もう遅いか。
「…………」
「あ、ねえ今更無視はやめて、お願いやめて! 『見える人』って久々なんだお願い! 俺の話聞いて!」
「……うっせえなあ……」
ああもう。面倒なのに捕まった、とぶつくさ言いながら、目を開ける。身を起こすと、相変わらず電気のついていない真っ暗な部屋の中、一人で光っている兄ちゃんが、それは嬉しそうな笑みを浮かべていた。
……改めてみるとほんとイケメン。目はぱっちり、唇ぷっくり。すげえなー……でも男の癖にすげえ撫で肩だな。
兄ちゃんの外見に、そんな失礼な感想を抱きながら身を起こすと。兄ちゃんは、「すげえ、本当に見えるんだ!」と、それは嬉しそうな顔で俺の手を握った。
まあ、握った、って言っても。兄ちゃんの手は俺の手を素通りして、そのまますかっ、と床を空ぶってしまったけど。
……ほんのちょっぴり、おいらの夢、って可能性も疑ってたんだけど、どうやら夢じゃねえみてえだ。
「わかった……けど、おいら眠いから手短にお願い。今日、色々あってちょっと疲れてんの。明日は布団買いに行きてえし……」
「あ……はい。いえ、何かすいません」
おいらの苦情に、兄ちゃんはぺこぺこと頭を下げて、「あのう……」と遠慮がちにつぶやいた。
「あまり、驚いておられないようで……」
「うん。珍しいもんじゃねえし」
「はあ……」
「前のアパートにも何人かいたしなあ。でも、しょうがねえんじゃね? だってさ……」
ふああ、とあくびをしながら、兄ちゃんの全身に目をやる。
身に着けているのは、いわゆる死に装束。
真っ白な着物。ただし、合わせは普通と逆。頭に巻いてるのは三角形の布が取り付けられた鉢巻。べたべた過ぎるスタイルだけど、何故か、おいらが会った兄ちゃんの同類はみーんな同じ格好してたから、多分、それが兄ちゃん達の「正装」なんだろう。
「だって、世の中、どこかで誰かは絶対死んでるだろうしなあ……今まで誰も死んだ奴がいねえ土地なんて、この世にはねえんじゃねえかなあ……」
「…………」
「だから、まあどこに居ても不思議はねえって、おいらは思ってるけど? 幽霊なんて」
そう、言うと。
兄ちゃんは、苦笑を浮かべて「……あなたはすごい人だねえ」と言った。
すごいんだろうか。自分ではよくわからない。
おいらは昔から、いわゆる「見える」人だった。
山とか川とか寺とか、あるいはどこかの事故現場とか。子供の頃から、そういう場所に行くと何となく寒気を感じて、妙に顔色が悪くて変な……つまり死に装束姿の人達を見かけることが多かった。
小さい頃は、変な格好した人が歩いてるな、くらいにしか思っていなかったけど。成長するにつれて、そういう人が見えているのは自分だけらしい、ということに気づいた。
霊感が強い。一言で言えば、そういうことなんだろうけれど。別にそれでおいらが得したこと、損したことは一回も無い。
見える、って言っても、その人達の「死」においらは大抵無関係で、だからこっちから声をかけなければ向こうも何も言って来ない。逆に、向こうから何かちょっかいをかけられることもない。
慣れていないうちは、皆が見えないものを「見える」と指摘して変な目を向けられることもあったけれど。何しろ幽霊はわかりやすい格好をしているから、そのうち完全スルーするスキルを身に着けた。昨日まで住んでたアパートにも、受験を苦にして首を吊ったっていう幽霊がしょっちゅう廊下をうろうろしていたけど、別にそれでおいらが困ったことなんか一回もなかった。
だから、おいらに幽霊を怖がったり脅えたり、はたまた迷惑がったりする理由なんて、どこにもない。
まあ、さすがに住もうとした部屋の中に先住民としていた、っていうのは、初めての経験だけど。
山とか川とか寺とか、あるいはどこかの事故現場とか。子供の頃から、そういう場所に行くと何となく寒気を感じて、妙に顔色が悪くて変な……つまり死に装束姿の人達を見かけることが多かった。
小さい頃は、変な格好した人が歩いてるな、くらいにしか思っていなかったけど。成長するにつれて、そういう人が見えているのは自分だけらしい、ということに気づいた。
霊感が強い。一言で言えば、そういうことなんだろうけれど。別にそれでおいらが得したこと、損したことは一回も無い。
見える、って言っても、その人達の「死」においらは大抵無関係で、だからこっちから声をかけなければ向こうも何も言って来ない。逆に、向こうから何かちょっかいをかけられることもない。
慣れていないうちは、皆が見えないものを「見える」と指摘して変な目を向けられることもあったけれど。何しろ幽霊はわかりやすい格好をしているから、そのうち完全スルーするスキルを身に着けた。昨日まで住んでたアパートにも、受験を苦にして首を吊ったっていう幽霊がしょっちゅう廊下をうろうろしていたけど、別にそれでおいらが困ったことなんか一回もなかった。
だから、おいらに幽霊を怖がったり脅えたり、はたまた迷惑がったりする理由なんて、どこにもない。
まあ、さすがに住もうとした部屋の中に先住民としていた、っていうのは、初めての経験だけど。
「……って、おいらは思ってんだけどなあ」
「いや……すごいって。俺、結構長いことこの部屋に居るんだけど。そんな反応されたの初めてだ……」
おいらの話を聞いて、イケメンの幽霊は冷や汗を流していた。幽霊でも汗をかけるのか、と、妙に感心した。
「前の住人さんは、『見えない人』で、俺が話しかけても全然気づいてくれなくて……でも、何か気配だけは感じるみたいで。入居して一週間で逃げちゃったんです……」
「ふーん。それっていつの話」
「一昨日の話だけど」
なるほど。ガス、水道、電気が通ってる理由がわかった。前の住民が止めてくれって連絡入れてねえのか。これ、もしかしておいらが連絡入れねえと、請求が前の住民のとこに行くんじゃねえかなあ……いや、まあおいらが気にすることじゃねえか。
「そっか。んでも安心しろ。おいら別に、気にしねえから」
しょぼんとうなだれる兄ちゃんの肩を叩……こうとしたらすかっ、と素通りしたので、代わりに大きく頷いて、親指を立てた。
「だって、幽霊って死んだ場所から離れられねえんだろ? えーと、浮遊霊って言うんだっけ? 何か、土地に縛られて動けねえ、とか。前、寺の坊さんからそんな話聞いたけど」
「あ……え、ええと。まあ、強い怨念を持った幽霊とかは、そうです」
おいらの言葉に、兄ちゃんはこくこくと頷いた。
「でも、俺の場合、そこまでの執着とかはなくて。確かにここは、俺にとって思い入れの強い場所みたいで、ここにいるのが一番安定するんですけど。でも、多分その気になれば出て行ける……とは、思います。試したことないけど」
「えー。試したことねえのに、何でわかるの? 部屋を出た瞬間、ぼんっ、て消えちまうかもよ?」
「……何となく」
よくわからねえけど、幽霊にしかわからねえ感覚みてえなもんがあるらしい。っつーか、出て行きたいんだろうか。
「他に行く当て、あんの?」
「はい?」
「いや、出て行ける、ってアピールしてるから」
「! い、いえいえいえ!」
俺の言葉に、兄ちゃんはぶんぶんと首を振って、もともと撫でている肩をさらに落とした。
「出て行く当てなんて……ない、です。さっきも言ったように、ここにいるのが一番落ち着くんで、できればここに居たいです。でも、お金払って住んでいる人に迷惑はかけられないし。もし目障りだって言うのなら」
「ふーん。なら居れば」
「え」
あっさり頷くと、兄ちゃんの顔が呆けたものに変わった。何でそんな顔をされるのかわからない。
「だって、ここに居たいんだろ。一番落ち着くんだろ」
「あ……えと、はい」
「んじゃ、居ればいいじゃん。兄ちゃんのが先に住んでたんだから、兄ちゃんのが住む権利、あるんじゃね?」
幽霊には住民票なんてないから、権利って言い方はおかしいのかな……と考えていると、兄ちゃんの顔が「ぱああああっ」と輝いた。
「……俺、ここに住んでてもいいの?」
「おう。おいらは気にしない」
「ありがとう!」
感激したらしい兄ちゃんは、おいらに抱きついて来てそのままおいらの身体すり抜けて壁に激突した。おいらには触れねえのに床や壁に触れるのは何でだろうな、と考えていると、「あいたたたた……失敗した」と、照れ笑いを返された。
その顔が、やっぱりイケメンで。ってか可愛くて。何だか、嬉しくなった。どうせ一緒に暮らすなら、イケメンのがいいに決まってる。幽霊だけど。
「兄ちゃん、名前は?」
「え?」
「名前。おいら、大野智。画家やってます」
「画家!? すげえ! もしかして有名な人!?」
「いや、全然。兄ちゃんの名前は?」
おいらの質問に、兄ちゃんは「名前聞いてもらえたの初めてだー!」と感激の声をあげて、満面の笑みで頷いた。
「櫻井翔って言います! 幽霊やってます! えと……智、くん?」
「ん、よろしくう、翔くん」
「いや……すごいって。俺、結構長いことこの部屋に居るんだけど。そんな反応されたの初めてだ……」
おいらの話を聞いて、イケメンの幽霊は冷や汗を流していた。幽霊でも汗をかけるのか、と、妙に感心した。
「前の住人さんは、『見えない人』で、俺が話しかけても全然気づいてくれなくて……でも、何か気配だけは感じるみたいで。入居して一週間で逃げちゃったんです……」
「ふーん。それっていつの話」
「一昨日の話だけど」
なるほど。ガス、水道、電気が通ってる理由がわかった。前の住民が止めてくれって連絡入れてねえのか。これ、もしかしておいらが連絡入れねえと、請求が前の住民のとこに行くんじゃねえかなあ……いや、まあおいらが気にすることじゃねえか。
「そっか。んでも安心しろ。おいら別に、気にしねえから」
しょぼんとうなだれる兄ちゃんの肩を叩……こうとしたらすかっ、と素通りしたので、代わりに大きく頷いて、親指を立てた。
「だって、幽霊って死んだ場所から離れられねえんだろ? えーと、浮遊霊って言うんだっけ? 何か、土地に縛られて動けねえ、とか。前、寺の坊さんからそんな話聞いたけど」
「あ……え、ええと。まあ、強い怨念を持った幽霊とかは、そうです」
おいらの言葉に、兄ちゃんはこくこくと頷いた。
「でも、俺の場合、そこまでの執着とかはなくて。確かにここは、俺にとって思い入れの強い場所みたいで、ここにいるのが一番安定するんですけど。でも、多分その気になれば出て行ける……とは、思います。試したことないけど」
「えー。試したことねえのに、何でわかるの? 部屋を出た瞬間、ぼんっ、て消えちまうかもよ?」
「……何となく」
よくわからねえけど、幽霊にしかわからねえ感覚みてえなもんがあるらしい。っつーか、出て行きたいんだろうか。
「他に行く当て、あんの?」
「はい?」
「いや、出て行ける、ってアピールしてるから」
「! い、いえいえいえ!」
俺の言葉に、兄ちゃんはぶんぶんと首を振って、もともと撫でている肩をさらに落とした。
「出て行く当てなんて……ない、です。さっきも言ったように、ここにいるのが一番落ち着くんで、できればここに居たいです。でも、お金払って住んでいる人に迷惑はかけられないし。もし目障りだって言うのなら」
「ふーん。なら居れば」
「え」
あっさり頷くと、兄ちゃんの顔が呆けたものに変わった。何でそんな顔をされるのかわからない。
「だって、ここに居たいんだろ。一番落ち着くんだろ」
「あ……えと、はい」
「んじゃ、居ればいいじゃん。兄ちゃんのが先に住んでたんだから、兄ちゃんのが住む権利、あるんじゃね?」
幽霊には住民票なんてないから、権利って言い方はおかしいのかな……と考えていると、兄ちゃんの顔が「ぱああああっ」と輝いた。
「……俺、ここに住んでてもいいの?」
「おう。おいらは気にしない」
「ありがとう!」
感激したらしい兄ちゃんは、おいらに抱きついて来てそのままおいらの身体すり抜けて壁に激突した。おいらには触れねえのに床や壁に触れるのは何でだろうな、と考えていると、「あいたたたた……失敗した」と、照れ笑いを返された。
その顔が、やっぱりイケメンで。ってか可愛くて。何だか、嬉しくなった。どうせ一緒に暮らすなら、イケメンのがいいに決まってる。幽霊だけど。
「兄ちゃん、名前は?」
「え?」
「名前。おいら、大野智。画家やってます」
「画家!? すげえ! もしかして有名な人!?」
「いや、全然。兄ちゃんの名前は?」
おいらの質問に、兄ちゃんは「名前聞いてもらえたの初めてだー!」と感激の声をあげて、満面の笑みで頷いた。
「櫻井翔って言います! 幽霊やってます! えと……智、くん?」
「ん、よろしくう、翔くん」
――で、翔くんって何で幽霊やってんだ?
おいらの質問に、翔くんはちょっとだけ悲しそうな顔をして、「言わなきゃ駄目かな?」と首を傾げた。
もちろんそんなわけがない。言いたくない事情ってのは誰にでもあるもんだ。おいらにもあるんだから、翔君にあったって不思議はない。おいらは、自分がされたくないことは他人にもしない主義だ。
いいよ、言いたくないなら聞かないよ、と言ってやると、翔君は感激で目を潤ませていた。幽霊でも泣けるのか、と変なことに感心した。
もちろんそんなわけがない。言いたくない事情ってのは誰にでもあるもんだ。おいらにもあるんだから、翔君にあったって不思議はない。おいらは、自分がされたくないことは他人にもしない主義だ。
いいよ、言いたくないなら聞かないよ、と言ってやると、翔君は感激で目を潤ませていた。幽霊でも泣けるのか、と変なことに感心した。
こうして、おいら――しがない画家の大野智と、幽霊の櫻井翔君の、奇妙な同居生活が始まった。
~第一話 終~
××××××××××
お付き合い頂きありがとうございました!
明日には復活してまた通常モードの記事に戻りまーす!!