●先生…前回は先生からのローマばりの徹底した分割統治に心が折れました…もう先生のことバカにしないので、僕にもどうか市民権をください。

○お!言ったね!じゃあ今日は一緒にポエニ戦争(前264~前146年)の流れと、それに伴うローマ社会の変質について勉強していこう!

●はい!ポエニ戦争のポエニってどういう意味ですか??

○ポエニって言うのはローマから見たフェニキア人のこと!ポエニ戦争ってのはローマvsカルタゴの戦争です!原因は、ローマがシチリア島を欲したから!当時ここは、北アフリカからカルタゴ人が植民活動を行っていたから、それで戦争になりましたと!

●どうしてローマはシチリア島を欲しがったんですか?

○それは、ローマにとってシチリア島が、
・大穀倉地帯
・地中海支配の要
になるからですね!

●なるほど!ってあれ!?ポエニ戦争めちゃくちゃ長いっすね!120年近くもやってるじゃないっすか!

○そうなんだ。大きく3回に分かれているから、それぞれの特徴を抑えていこう。まず第1回だけど、これはローマが勝ってシチリア島を獲得しました!これでシチリア島がローマ初の属州となります。以上!

●属州ってなんですか??

○属州ってのは、イタリア半島以外の征服地のこと!さて、負けたカルタゴ軍ですが…このままでは終われない。

●おっ!第2回の開幕ですね!!!

○第2回は、別名ハンニバル戦争とも言われる。ハンニバルってのはカルタゴの将軍ね。こいつがすげーんすよ。

●すげーって言っても、ローマにシチリア島取られてるんですよね??それってもう制海権握られたようなもんじゃないっすか!海から攻撃するのは厳しくないですか??

○その通り。“海から”攻撃するのは難しい。

●わかった!イタリア半島の北からハンニバルは攻撃したんだ!

○いやいやwイタリア半島の北にはアルプス山脈があるでしょww軍隊引き連れてアルプス山脈越えてくると思う?www

●そうっすよねwまさか、アルプス越えてくるわけないっすよねw

○と、ローマの誰もが思ってた。けど、ハンニバルはそれをやったんだよ。37頭の象を引き連れて。

●象!?

○この奇襲作戦によって、ローマは大敗を喫します。これが前216年カンネーの戦い。“カンネー”の戦いで、ローマはハンニバルに“かんねん”したというわけです(笑。

●つまらな……いや、先生おもしろいです!最高です!

○ありがとう!大好き大好き!大スキピオ!ってわけで、ローマの劣勢を逆転したのが大スキピオです!大スキピオは、一か八か、ローマの守備をがら空きにして、直接カルタゴを攻撃する!

●なんかかわいいですね。「大好き、ぴお。」みたいな。

○図表で顔見てごらん?一生忘れない顔してるよ。さて、今度は大スキピオがハンニバルを下します!これが前202年のザマの戦い!これでローマはカルタゴの本国以外の領土を全て手に入れます。ザマだけにざまぁ見ろ!って感じですね(笑。

●でもまだ第3回があるんですよね?

○そう!カルタゴは海上貿易ですぐに復興してくるんです!そのカルタゴを徹底的に破壊したのが第3回のポエニ戦争!ローマの指揮官は小スキピオです。ローマはカルタゴの土地に海水をまいて作物が育たないようにしました。

●なるほど…。これで地中海世界を征服!ローマは栄光の時代が始まるわけですね!

○いや、それが、長引く戦争がローマの社会を大きく変質させることになったんだ…。

●え?どういうことですか?

○戦争が長期化するってことは、兵士がなかなか家に帰れないってこと。普段は普通の農民なわけだから、農地が耕せない状態が長く続くことになる。なんとか残ったじっちゃんやばっちゃんが農作業を頑張るところもあるんだけど…病気になったりすればもうおしまいなわけです。結局、生活費を捻出するためにどんどん土地を売る。兵士がやっとこさ戦争から帰ってくると「…あれ?俺の土地が無い!農業ができない!」となるわけ。

●手放された土地は誰が買うんですか?

○もちろん貴族です!貴族が大土地所有者となり、農場経営を行うんです!

●あ、良かった。じゃあ、農民はそこで働くんですね。

○それが、農民はもう必要ないんだ。だって、征服した土地からいくらでも奴隷が運ばれてくるからね。この奴隷ってのがもうタダ同然なんですよ。ロクに食事を与えない。額には焼きゴテで所有者の名前が捺してある。ヒドイもんでしょ。

●えっと…まとめると、大土地所有者である貴族が奴隷を使役して、農業経営を行ってる…ってことですよね?

○そう。この仕組みをラティフンディアと言います。日本語だと大土地所有制と訳されるね。

●ところで何を栽培してたんですか?やっぱり穀物??

○いや、穀物はシチリア島からタダ同然で運ばれてくるから作る必要は無い。オリーヴとかぶどうとかの果樹栽培がメインでした!

●先生!ラティフンディアのことはよく分かりました!でも…没落した農民はどうなっちゃったんですか??

○彼らは家族ごとローマ市にやってくる。ローマ市にやってくれば、有力貴族がそれなりに面倒を見てくれるんですよ。なんたって没落しても市民は市民だからね。彼らは選挙権を持っているんだ。だからパンをあげたり、娯楽を提供したりして操ろうとする。これ「パンとサーカス」と言います。

●貴族からすればギブアンドテイクな関係…ってわけか。あれ?でも市民が無産化しちゃうってことは、重装歩兵が居なくなっちゃうってことですよね??それって困りませんか?ローマが弱くなっちゃいません?

○まさにそこが次回のテーマなのです!!!あと、ノビレスとエクイテスはプリントで確認しておいてね!






☆センターチャレンジ
共和政期のローマの属州について述べた次の文①~④のうちから、正しいものを一つ選べ。〔95 本試〕
① ローマは、ポエニ戦争によりガリアを獲得して、これを最初の属州とした。
② 属州から安価な穀物が流入したことは、それまで重装歩兵としてローマ軍の主力をなしてきた人々が没落する要因の一つとなった。
③ ローマの課す重税に苦しめられた属州内諸都市の住民は、ローマに対して同盟市戦争を起こした。
④ カエサルは、属州民の不満を解消させるため、すべての属州の自由民にローマ市民権を与えた。