20年以上前、冬が本格的に始まる前の出来事。
長年あこがれの地、ポーランドに行く機会に恵まれた。
ドイツからベルリンを経由して、ポーランドまで陸路で移動。
ワルシャワに2日ほど宿泊した。
その後アウシュビッツ捕虜収容所に近い町、クラクフに電車で移動した。
クラクフに到着してから、旧市街のはずれにあるユースホステルを目指した。
ワルシャワのユースホステルで一緒だった香港人の女性と偶然同じ列車だったので、行動を共にした。
ユースホステル到着後、受付で香港人女性がベッドの空きを尋ねた。
「満室」とのことだった。
しょうがないから、別の宿を探そうと振り返り扉を目指していた。
しかし振り返ると、香港人はいない。
まだ受付で何かを話している。
「どうしたんだろうか」
しばらく成り行きを見守っていた。
10分以上やり取りが続いたのち、
「条件付きで・・・」と話しているのが聞こえてきた。
香港人は、その条件をのんだようだ。
私も面倒だったので、その話にのった。
明日の夜にはこの町を去る予定だったから。
チェックインの手続きを済ませると、部屋に案内された。
二段ベッドが数台並ぶ部屋はすでに先客がおり、
私たちは開いているベッドに荷物を置いた。
ベットの周りには靴が何足か転がっており、
「なんだか、えらく大きな靴があるな」
と思いつつも流していた。
そして、各々町に出かけた。
日が沈むころに宿に戻り、食事を済ませて眠りについた。
どれぐらい時間が立ったのだろうか、部屋の扉が開いた。
まどろんでいるところ、話し声が聞こえてきた。
野太い声だった。
その時になって、条件付きの謎が解けた。
そう、私たちは男性部屋に泊まっていたのだ。
場所によっては、性別ごとに部屋が分かれていないところもあるようだが、
こちらの宿は男女別で部屋が分かれているはず。
ということはさっきのやり取りは、空きベッドがある
男性部屋へ宿泊の交渉だったんだな。
翌朝、目覚めてから同室の男性にあいさつをした。
ちょっと驚いたようだったが、特に問題はないみたい。
なるほどな、交渉することの大切さを知ったクラクフの夜。
翌朝、アウシュビッツ行きのバスに乗るため、
早い時間に宿をチェックアウトして、アウシュビッツを目指した。
この年はじめての雪をアウシュビッツに向かうバスの車窓越しに見た。
※地図はGoogleMapsより引用。