陽の光が差す中、雀の鳴く声が聞こえる。その中にガラガラとシャッターを開ける音が聞こえる。それに驚いた雀たちが勢いよく羽ばたいていく。
上がったシャッターの向こうから、ガタイのいい男が空のビール瓶ケースを抱えながら現れた。男は軒先にケースを並べる。
「恵太、こいつから頼むぜー」
奥の方から男、恵太に向かって声がかかる。
「はーい」
そう言うと恵太は、店の奥の方へと消えて行った。彼が居なくなった軒先には、いつの間にか雀たちが集まっていた。
「急に寒くなってきやがったからなぁ、鍋物商材はかなり売れるだろう」
店と続いている自宅の和室に腰掛けている老人が、腕組みをし、商品を顎でしゃくりながら言う。その先には、白菜や長ネギの箱が山積みされていた。
「こいつら正面に並べといてくれ、値札は書いとるから、椎茸とエノキも前に置くか…」
老人はそう呟きながらレジの方へ向かっていく。それを見送った恵太は、山積みになっている白菜を一ケースずつ軒先のビールケースの上へと運んでいく。白菜の箱を配置し終えた恵太は、ポケットからカッターを取り出すと、箱の一番上の蓋の部分を切り落とす。
「ほいよ」
切り落とした段ボール片を手に持ちながら、長ネギの近くに来た慶太に、老人は段ボール片を渡す。老人が渡した方には『福岡県産、白菜、1玉98円』『大分県産、白ネギ、1束98円』と書いてあった。
「一緒に立てといてくれ、全部売れたらいい儲けになるぞぉ〜」
ほくほくした表情で上機嫌にそう言いながら、老人はまたレジの方へと消えて行った。恵太は近場にあった大きなビニール袋に、段ボール片を捨てる。
「あ」
間違って値札も一緒に捨ててしまい、慌てて値札を取り出す。その後、白ネギの箱と一緒にそれを軒先へと運んで行く。白菜の値札を箱に差し、その隣に長ネギの箱を置いていく。
「いい天気だなぁ」
箱を置き終え空を見上げ、恵太は笑顔でそう言った。