糖尿病は 治る | 大局観

糖尿病は 治る

    『糖尿病患者 が治った!』

 ~4万8千人患者データ解析で明らかになった

寛解」の頻度と条件~    (2023年5月 新潟大学)

 

 

 糖尿病は「治らない」「薬を一生飲み続けなければならない」と言われてきた。

 しかし、新潟大学の研究グループが、全国の糖尿病専門施設に通院中の 4万8千人の 2型糖尿病患者を対象に、臨床データを分析したところ、 寛解血糖値が正常近くまで改善し、薬が不要な状態人が一定の割合で存在することが明らかになった。

 

 

Ⅰ.研究の背景 

 これまで「糖尿病を発症すると、一生治らない」と言われていたが、実際には、いったん 2型糖尿病と診断され、治療を開始した患者であっても、食事療法、運動療法をはじめとした生活習慣療法、一時的な薬物療法、肥満外科手術あるいはそれらの組合せによる減量などを通して血糖値が正常近くまで改善し、薬剤が不要な状態(2021年、糖尿病の「寛解」と国際的に定義された)となることが時折 経験されてきた。

 しかし、日本人において、どの程度の患者が寛解しているのか、またどのような人が寛解しやすいのかについては不明だった。

 さらにいったん寛解した人のうち、どのような人が長期間にわたり寛解状態を維持できるかについても定かではなかった。

 

 

Ⅱ.研究の概要 

 今回、新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野の藤原和哉特任准教授、曽根博仁教授らの研究グループは、糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)が保有する日本全国の糖尿病専門施設に継続して通院している糖尿病患者約 4万8千人の長期間の臨床データを解析した。

 糖尿病専門施設に通院中で、登録時に寛解の状態ではなく、血糖の指標である HbA1c値や体重を継続的に測定されている18歳以上の 2型糖尿病患者 48,320人を対象とし、1989年から2022年において寛解(薬物治療を中止され、HbA1c値 6.5%未満が3か月以上継続)したかを追跡した。

 

 

Ⅲ.研究の結果

(1)追跡期間 5.3年に 3,677人が寛解に至り、その頻度は 1000人を 1年 追跡すると 10.5人(約1%)となった。

 

(2)寛解に至る割合が高い人

 ①男性

 ②40歳未満

 ③糖尿病と診断されてから 1年未満 

 ④HbA1c値 7.0%未満        :27.8

 ⑤BMI が高値

 ⑥1年間の体重減量幅が 5%以上 

                          : 5~9.9%→25.0 、10%以上→48.2

 ⑦薬物療法を受けていない人   :21.7

 

特に ⑦薬物療法を受けていない人、④HbA1c値 7.0%未満の人、 ⑥1年間の減量幅が 5~9.9%の人、10%以上の人では、1000人1年あたりの寛解発生数が、それぞれ21.7人、27.8人、25.0人、48.2人と上昇していた。

 

⑥1年間の体重変化に関しては、BMIが 0~4.9%低下した場合を基準とすると、5.0~9.9%低下、10%以上低下した場合には、寛解の発生がそれぞれ 2.2倍4.7倍上昇していた。逆に、体重が増加すると寛解しにくくなる傾向が確認された。

 

(3)再発

寛解に達した 3,677人を追跡した結果、1年間寛解を維持した人は 1,187人にとどまり、3分の2にあたる 2,490人が再発(再び血糖値が上昇)したことが判明した。

 再発した患者の特徴は、糖尿病と診断されてからの期間が長いことや BMI が低いことに加えて、体重が増加した人だった。

 

 

Ⅳ.まとめ

 日本人を含む東アジア人は、欧米人に比べてインスリン分泌能力が低く、同じ2型糖尿病患者でも発症メカニズムや肥満の影響が異なる。そのため、日本人では欧米人より寛解率が低いことが予想され、これまで、「糖尿病は治らない」と認識されていたが、実際には日本人においても、欧米人と同様に 1%程度の寛解が見られることが初めて確認された。

 

 またこれまでの研究は、体重やHbA1c値の測定間隔は3~6か月と長く、寛解の頻度やその関連要因を正確に把握することは困難とされていたが、今回は糖尿病専門施設に継続的に通院している患者のデータを使用することにより、体重、HbA1c値や薬物治療の経過を1~2か月の短い範囲で、追跡することができた。

 

 さらに約 4万8千人のビッグデータを分析することで、年齢、血糖値、BMI、体重減量の度合いを詳細に層別化することができた。また国際的に統一された基準を使用したことで、日本人だけでなく、欧米の研究と比較することが可能となり、人種における血糖が改善する際のメカニズムの違いを考察することができた。

 

今回の研究結果から

(1)食事、運動をはじめとした治療への取組により、5%程度の減量から糖尿病の寛解が期待できる。

 

(2)早期に生活習慣改善や薬物治療に取り組み、減量を行うことで  2型糖尿病の寛解は可能である。

 

(3)一度寛解に至った場合でも、体重を適正に管理し、定期的に診察を受けることが、寛解後の再発を予防するうえで重要である。

 

 

1000人、1年当たりの寛解 発生状況

・糖尿病 罹患期間 1年未満で約 2% の人が寛解した。

 罹患期間が長くなると、寛解しにくくなる

 

 

・HbA1c 値 7.0%未満で約 3% 寛解した。

・BMI 高値(≧35)で 2% 寛解した。

・BMI が 1年で減少 10%以上で 5% の人が寛解した。

・薬物治療なしで約 2% 寛解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以 上