中国古村落保護及発展専業委員会が選出した「15の中国景観村落」の
14箇所目の村は、広東省東莞市茶山鎮にある「南社村」という古鎮です。
普通、広東省の古い見所と言うと、
開平と肇慶くらいしか思い浮かばないのではないでしょうか。
特に東莞市といえば現代中国を代表する工業地帯みたいなところで、
ここに「中国の美しい村15選」に選ばれた古鎮があることが驚きです。
村ができたのが南宋の初めとされていますので、800年以上の歴史があります。
村に残されている「南社謝氏族譜」によれば、南宋末に会稽(今の浙江省紹興)から
謝尚仁という人が移り住んだころから村の発展が始まったようです。
謝一族は教育に力を入れ、明清代には多くの進士(科挙の合格者)を輩出しました。
今でも村の周辺には、謝姓が多く見られます。
明清代に村は最も繁栄したのですが、多くの人材を輩出した以外に
周囲を囲む茶畑のおかげでもありました。
緑豊かな土地であったことは村を形容していた装飾語からも読み取れます。
「四周綠樹成蔭」「桃花源風光」などなど・・
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fblogimg.goo.ne.jp%2Fuser_image%2F57%2F09%2F0e18310283305ab1d2e56d54666a8b47.jpg)
明清代の建築が残る村の中央には長形のため池があり、
そこに、池に面して公祠(先祖の位牌を祀る廟)が集中しています。
現存する明清代の祠(ほこら)は25堂あり、
これだけもの祠がある場所は中国でもかなり珍しいことです。
赤茶けた古い屋根の周囲の民居にも、明清代のものが200件以上残り、
一部には今も村人が暮らしています。
建物には安徽省や湖南省、さらには西洋建築の影響も見られます。
石彫、木彫、また陶製の装飾も見られます。
民居、書院、店鋪、家廟、楼閣、古井戸など
明清期の村落の容貌を完璧に残しているだけでなく、
祠堂など民俗的特色も保っています。
道路の配置がたいへん合理的なのは、
珠江デルタの農業集落文化の特徴的景観とされているようです。
村の代表的な古建築としては、
「社古寨墻」(1644年)
「謝氏大宗祠」(1555年)村を代表する廟
「謝遇奇家廟」(1901年)
新疆に赴任した謝家42人目の進士を記念した廟。
「資政第」(1876年)
村の99人目の進士の住居。書院、石を敷いた庭、回廊などを配し、西洋風の装飾を
施した邸宅。
「典型民居」(1880年)
進士を輩出した名家の代表的な住宅建築で、素晴らしい木彫、石彫で装飾されて
います。
などです。
大発展を遂げた中国最大の工業地域の近くで、古い村落がその中国的伝統文化と
ともに保護されていることでも、印象的な村です。
(西川 太陽)