1/15の日経1面。企業型DCの投資信託の割合が50%を超えたとのこと。預金では老後が不安なのでしょう。image

 

 

確定拠出年金の運用、株式投信初の5割 預金偏重に転機

1/15 日経

加入者が自ら運用商品を選ぶ企業型の確定拠出年金(DC)で株式を含む投資信託の割合が初めて50%を超えた。根強い元本確保志向を背景に運用資金の受け皿となってきた預貯金は物価高で目減りリスクにさらされている。物価は上がらないという前提が変わり、約2000兆円の家計の金融資産が投資に向かっている。

企業年金の運用を受託している信託銀行や生命保険会社など58社が加盟する運営管理機関連絡協議会が2023年3月末時点の状況をまとめた。あらかじめ企業が社員に給付額を約束して運用する確定給付型(DB)と異なり、DCは企業が拠出する掛け金をどの金融商品で運用するか加入者である社員が決める。

運用の積極度を測るために、高リスク・高リターンの株式を運用対象に含む①国内株式型②外国株式型③バランス型――運用残高を合計したところ、23年3月末時点では9兆4233億円と前年同月に比べ10%増えた。約19兆円の運用残高全体に占める割合が初めて50%を超えた。株式投信の割合は20年3月末は37%で、3年間で10ポイント以上、伸びた。

株式投信での運用割合を年代別にみると50〜59歳(48%)や60歳以上(40%)が50%を下回る。一方、30〜39歳(57%)や40〜49歳(55%)は過半に達しており、年金を受け取るまでの期間が長い世代ほど一定のリスクをとって運用している姿が浮かぶ。

 

これまで日本では運用利回りより元本割れしないことを重視する傾向が強かった。DCの運用先も20年3月末は預貯金と保険商品で52%を占めていたが、23年3月末に40%まで低下した。代わりに存在感を高めたのが国内外の株式で運用する投信だ。株高を背景に足元ではさらに株式投信への資金流入が加速している公算が大きい。

企業型DCでは自ら運用商品を選ばないと、自動的に初期設定(デフォルト)商品が選択される。リスク回避志向を反映し、元本確保型の定期預金や保険商品をデフォルト商品に設定する企業が多かったが変わり始めてきた。

AGCは22年4月、それまで定期預金だったデフォルト商品をバランス型投信に切り替えた。同社は「これまでの預金では社員が資産形成できない」と考え、一定のリスクをとりつつ運用の果実を狙う商品に見直した。富士通も同年から投信に衣替えした。

三菱UFJ信託銀行によると20年3月に3%だった株式投信など元本確保型以外の運用商品をデフォルト商品にしている企業の割合は23年3月には16%まで上昇。とくにデフォルト商品を設定している企業のうち、バランス型投信など元本確保型以外の割合は20年3月の約3割から23年3月には約7割まで上がった。

2%超の物価上昇が続き、0%台の金利しかつかない預貯金の実質的な目減りリスクを個人と企業の双方が意識し始めている。

 

日本のDCのモデルである米国の401kでは約1200兆円の運用残高のうち元本確保型は7%で、株式を含む投信の割合は76%に達する。23年3月末の家計の金融資産が米国は114兆ドル(1.6京円)と00年末比3倍強に膨らんだ一方、日本は2043兆円と同期間で4割増にとどまっているのは運用先の差による面が大きい。

年金運用は長期間にわたり運用益を再投資に振り向けていくため運用商品による利回りの差は大きく、受け取れる年金額の差に直結する。物価上昇を背景とする「貯蓄から投資」が今後も進むかは、政府・日銀がめざす物価と賃金上昇の好循環の行方と密接に絡む。