行政法[基本的事項]④[判例]©︎seize the dream 2023 

2023.4.26 Q319〜397

 

〈採実・出題趣旨に非掲載、重要な視点〉

⑴当事者の立場に立った弁護人の主張。

⑵反対側たる相手方の利益への配慮。

⑶問題の所在の整理。鋭い問題提起。どの条文のどの文言が問題となるか。条文を大切にする姿勢。

⑷事案の特殊性。事案から出てくる考慮要素。

⑸主張、反論争点整理。争点から出てくる考慮要素。

⑹基本的事項の正確さ(定義、原原、制度趣旨、条文趣旨、要件効果)

⑺事案解決の視点。結論の妥当性。結論を導く理由の説得性。結論に至る思考の方向性。丁寧な個別・具体的検討。

2023.4.27

 

〈行政の範囲と主体〉

1〈指定検査機関による確認事項の帰属/最決平成17.6.24 百Ⅰ 7(7版)〉

 

[判]〈事実〉Q319 事案の特殊性。A周辺住民が指定確認検査機関(本件会社)による確認の取消訴訟を提起。しかし、訴訟継続中に建物が完成し検査が完了してしまったため(訴えの利益消滅)、住民は、Y市(抗告人)に対する国賠請求訴訟に変更することの許可を申立てた。

 

[判]〈要旨〉Q320 指定検査機関の確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、行訴法21条1項所定の「当該処分又は採決に係る事務の帰属する国又は地方公共団体に当たるというべきであって、抗告人(Y市)は、本件確認に係る事務の帰属する公共団体に当たる。A◯

 

[判]〈要旨〉Q321 本件会社は、本件確認を抗告人の長である特定行政庁の監督下において行ったものであること、その他本件の事情の下においては、本件確認の取消訴訟を抗告人に対する損賠請求に変更することが相当である。A◯

 

【フォロー】民間解放の一例として、建築基準法が改正(平成10年)され、私人(株式会社)でも指定を受ければ、指定確認機関となり、建築確認を行い建築確認済証を交付できるようになった。(法6の2)。

 

〈行政上の法律関係〉

2〈公営住宅の利用関係/最判昭和59.12.13 百Ⅰ 9(7版)〉

 

[判]〈事実〉Q322 事案の特殊性。A Xは、本件無断増築部分の建物を収去して土地を現状に復すること等の催告を行った。が、Yはこれに応じなかったため、Xは本件無断増築等は公営住宅法が定める明渡請求事由に該当するとして、本件住宅に係る使用許可を取消した上、本件住宅の明渡し及び本件無断増築部分の建物の収去等を求めた。

 

[判]〈判旨〉Q323 公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則、一般法である民法及び借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。A◯

 

[判]〈意義〉Q324 本判決の意義。A①第1に、公営住宅の利用関係において信頼関係において信頼関係の法理の適用があることを認めた。②第2に、公営住宅の使用関係においては、公営住宅法等が特別法として民法及び借家法に優先して適用されるが、同法等に特別の規定がない限りは、原則、【一般法である民法及び借家法の適用】があると、最高裁として初めて述べた。

 

3〈建築基準法と民法234条/最高裁平成元.9.19 百Ⅰ 10(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q325 建築基準法65条は、防火地域又は準防火地域内にある外壁が耐火構造の建築物について、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる旨規定しているが、これは、同条所定の建築物に限り、その建築物については民法234条1項の規定が排除される旨を定めたものと解する。A◯

 

3の2〈農地買収処分と民法177条/最大判昭和28.2.18 百Ⅰ 9(6版)。

 

[判]〈判旨〉Q326 政府の自作農創設特別措置法に基く農地買収処分は、国家が権力的手段を以て農地の強制買上を行うものであって、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にするものである。かかる私経済上の取引の安全を保障するために設けられた【民法177条の規定は、自作法による農地買収処分には、その適用を見ない】ものと解すべきである。A◯

 

4〈租税滞納処分と民法177条/最判昭和35.3.31 百Ⅰ 11(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q327 滞納者の財産を差し押さえた国の地位は、あたかも、民事訴訟法上の強制執行における差押債権者の地位に類するものであり、租税債権が偶々公法上のものであることは、この関係において、国が一般私法上の債権者より不利益の取扱いを受ける理由となるものではない。それ故、【滞納処分による差押押えの関係】においても、民法177条の適用がある。A◯

 

5〈生活保護受給権と相続/最大判昭和42.5.24 百Ⅰ 16(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q328 生活保護法の規定に基づき要保護者又は被保護者が国から生活保護を受けるのは、単なる国の悪意ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的利益であって、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。しかし、この権利は、被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた【一身専属の権利】であって、【他にこれを譲渡し得ないし(法59)、相続の対象ともなり得ない】。A◯

 

【フォロー/本判決の意義】生活保護の受給権が一身専属の権利であること、被保護者の生存中の扶助で既に遅滞にあるものの給付を求める権利もまたその死亡によって当然消滅することを理由に相続を否定した。所論不当利得返還請求権についても同様に解し、本件訴訟の承継を認めずその終了を宣言した。

 

〈法の一般原則・一般制度〉

6〈租税関係と信義則/最判昭和62.10.30 百Ⅰ 24(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q329 租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理、就中租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法律の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような【特別の事情が存する場合】に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。A◯

 

7〈工場誘致施策と信頼の保護/最判昭和56.1.27 百Ⅰ 25(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q330 右施策が変更されることにより、前記の勧告等に動機付けられて前記ののような活動に入った者がその信頼に反して所期の活動を妨げられ、社会観念上看過することのできない程度の【積極的損害を被る】場合に,地方公共団体において右損害を補償する等の代償措置を講じることなく施策を変更することは、それがやむを得ない客観的事情によるものでない限り、当事者に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の不法行為責任を生ぜしめるものといわなければならない。A◯

 

8〈行政権の濫用/最判昭和53.5.26 百Ⅰ 29(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q331 右事実関係の下においては、本件児童遊園設置認可処分は行政権の著しい濫用によるものとして違法であり、かつ、右処分とこれを前提としてされた本件営業停止処分によってXが被った損害との間には因果関係があると解する。A◯

 

9〈国に対する損賠請求と消滅時効/最判昭和50.2.25 百Ⅰ 31(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q332 国が、公務員に対する安全配慮義務を懈怠し違法に公務員の生命、健康等を侵害して損害を受けた公務員に対し損賠の義務を負う事態は、その発生が偶発的であって多発するものとは言えないから、右義務につき前記のような行政上の便宜を考慮する必要はなく、また、国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、公平の理念に基づき被害者に生じた損害の公平な填補を目的とする点において、私人相互間における損賠の関係とその目的性質を異ににするものではないから、国に対する右損賠請求権の消滅時効期間は、会計法30条所定の5年とすべきではなく、【民法167条の10年】と解すべきである。A◯

 

【フォロー/意義】⑴本判決は、安全配慮義務概念を最高裁として初めて認めるとともに、国が公務員に対して安全配慮義務を負い、この義務に違反した場合には公務員に損賠請求権が成立することも認めた点に意義がある。⑵同時に、国に対する金銭債権である本件債権について、その具体的目的性質に着目した上で、会計法ではなく、民法167条1項の10年間の消滅時効規定が適用されるとした点が注目される。

 

10〈公共用財産と取得時効/最判昭和51.12.24 百Ⅰ 32(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q333 公共用財産が、長年の間、事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共財産としての形態、機能を全く喪失し、その物の上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上の公の目的が害されるようなこともなく、最早その物を公共用財産として維持するべき理由が無くなった場合には、右公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げないものと解する。A◯

 

〈行政保有情報〉

11〈インカメラ審理/最決平成21.1.25 百Ⅰ 39(7版)〉

 

[判]〈要旨〉Q334 本件不開示文書について裁判所がインカメラ審理を行うことは許されず、【Xが立会権の放棄等をしたとしても】、Yに本件不開示文書の【検証を受忍すべき義務を負わせてその検証を行うことは許されない】ものというべきであるから、そのためにYに本件不開示文書の提示を命ずることも許されない。A◯

 

12〈国民健康保険診療報酬明細書の訂正請求/最判平成18.3.10 百Ⅰ 40(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q335 保険医療機関が自ら行った診察として本件レセプトに記載された内容が実際のものと異なることを理由として、実施機関が本件レセプトに記録されたXの診療に関する情報を誤りのある個人情報であるとして訂正することは、保険医療機関が請求した療養の給付に関する費用の内容等を明らかにするという本件レセプトの文書としての性格に適さないものというべきである。A◯

 

[判]〈判旨〉Q336 本件レセプトに記載されたXの診療に関する情報は、本件訂正請求がされた当時、市においてXの実際に受けた診療内容を直接明らかにするために管理されたものとは認められず、Xの権利利益に直接係るものということは困難である。A◯

 

[判]〈判旨〉Q337 実施機関が有する個人情報の訂正を行うための対外的な調査権限の内容に鑑みれば、本件条例は、このような場合にまで、Xの実際に受けた診療内容について必要な調査を遂げた上で本件レセプトにおけるXの診療に関する情報を訂正することを要請しているとは言い難い。A◯

 

〈法律と条例〉

13〈道路交通法と公安条例/最大判昭和50.9.10 百Ⅰ 43(7版) 徳島市公安条例〉

 

[判]〈判旨〉Q338 普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には、効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみではなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。A◯

 

14〈条例と罰則/最大判昭和37.5.30 百Ⅰ 44(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q339 憲法31条は必ずしも刑罰が全て法律そのもので定められなければならないとするものではなく、法律の授権によってそれ以下の法令によって定めることもできると解すべきで、このことは憲法76条但書によっても明らかである。ただ、法律の授権が【不特定な一般的の白紙委任的なもの】であっては【ならない】。A◯

 

[判]〈判旨〉Q340 条例は、法律以下の法令といっても、公選の議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律によって刑罰を定める場合には、【法律の授権が相当程度に限定されておれば足り】る。A◯

 

【フォロー/意義】条例による罰則制定権を定めた改正前地自法14条5項(現14条3項)が憲法31条に違反しないとした最初の最高判決として意義を持つ。

 

【フォロー2/争点】条例に罰則を設けるには、法律の委任を要するか否か、そして要するのであれば、その委任がどの程度であれば足りるのかという2点。

 

〈行政立法・通達・計画等〉

 

15〈法律の委任⑴〜農地施行令/最大判昭和46.1.20 百Ⅰ 47(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q341 収用が行われた後、当該収用物件につきその収用目的となった公共の用に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、なお、国にこれを担保させ、その措置を原則、国の裁量に任せるべきであるとする合理的理由はない。このような場合には、被収用者にこれを回復する権利を保障する措置をとることが立法政策上も右の趣旨で設けられたものと解すべきである。A◯

 

【フォロー/意義】本判決は、最高裁が行政事件で【委任命令を違法とした最初の判決】であり、その後の判例のリーディングケース(主要な判例)としての意義を有する。

 

16〈委任の範囲⑵〜旧監獄法施行規則/最判平成3.7.9 百Ⅰ 48(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q342 被勾留者も、当該拘禁関係に伴う一定の制約の範囲外においては原則として一般市民としての自由を保障されるものであり、幼年者の心情の保護は元来その監護に当たる親権者等が配慮すべき事柄であることからすれば、法が一律に幼年者と被勾留者との接見を禁止することを予定し、容認しているものと解することは困難である。規則120条は、原審のような限定的な解釈を施したとしても、なお法の容認する接見の自由を制限するものとして、【法50条の委任の範囲を超えた無効】のものという他ない。A◯

 

【フォロー/意義・特徴】本判決の意義・特徴は、①委任立法を違法とした先駆的な判例であること、②規律対象利益の性質・関係法規・授権条項を精査する解釈手法を採ったこと、③刑事政策に大きな影響を与えたこと。

 

17〈委任の範囲⑷〜旧薬事法施行規則/最判平成25.1.11 百Ⅰ 50(7

版)〉

 

[判]〈判旨〉Q343 新薬事法の授権の趣旨が、第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する旨の省令の制定までをも委任するものとして、上記規制の範囲や程度等に応じて明確であると解するのは困難であるというべきである。A◯

 

[判]〈判旨〉Q344 新施行規則の各規定は、いずれも上記各医薬品に係る限度において、新薬事法の趣旨に適合するものではなく、【新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効】というべきである。A◯

 

18〈委任の範囲⑸〜生活保護基準の改定/最判平成24.2.28 百Ⅰ 51(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q345 老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定は、①70歳以上の高齢者には老齢加算に見合う特別な需要が認められない等とした厚労大臣の判断に、最低限の生活の具体化に係る判断の過程及び手続きにおける過誤、欠落の有無等の観点から見て裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合、②老齢加算の廃止に際し激変緩和等の措置を採るか否か等についての同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から見て【裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合、違法】となる。A◯

 

19〈パチンコ球遊器に関する通達/最判昭和33.3.28 百Ⅰ 54(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q346 本件の課税が偶々所論通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基づく処分と解するに妨げがなく、所論違憲の主張は、通達の内容が法の定めに合致しないことを前提とするものであって、採用し得ない。A◯

 

【フォロー/意義】いわゆる課税通達について、その【内容が合法であれば憲法違反には当たらない】とした初の最高裁判例。

 

20〈墓地・埋葬等に関する通達/最判昭和43.12.24 百Ⅰ 55(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q347 本件通達は、墓埋法13条に関し、見解を改め、今後は内閣法制局第一部長の回答の趣旨に沿った解釈、運用することとしたことを明らかにすると同時に、諸機関において、この点に留意して埋葬等に関する事務処理をするよう求めたものであり、Y(厚生大臣、当時)がその権限に基づき所掌事務について、知事をも含めた関係行政機関に対し、職務権限の行使を指揮したものと解される。A◯

 

[判]〈判旨〉Q348 現行法上、行政訴訟において取消の訴の対象となり得るものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は許されない。A◯

 

〈行政行為〉

21〈行政行為の意義・種類/毒物劇物輸入業の登録〜ストロングライフ事件/最判昭和56.2.26 百Ⅰ 60(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q349 本件ストロングライフがその用途に従って使用されることにより、人体に対する危害が生じる虞れがあることをもって、毒物及び劇物の輸入業の登録の拒否事由とすることは、毒物劇物輸入業の登録の許否を、専ら設備に関する基準に適合するか否かにかからしめている劇物法の趣旨に反し、許されない。A◯

 

22〈住民票への記載〜住民票記載不利益非現実化事件/最判平成21.4.17 百Ⅰ 62(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q350 本件応答は、法令に根拠のない事実上の応答に過ぎず、これによりX1又はX3の権利義務ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分には該当しない。A◯

 

[判]〈判旨〉Q351 市長村長は、父又は母の戸籍に入る子について、出生届が提出されない結果、住民票の記載もされていない場合、常に職権調査による方法で住民票の記載をしなければならないものではなく、原則、出生届の提出義務者にその提出を促し、戸籍の記載に基づき住民票の記載をすれば足りる。A◯

 

[判]〈判旨〉Q352 X1においては、住民票の記載を欠くことに伴う最大の不利益ともいうべき、選挙人名簿への被登録資格を欠くことになるという点に関して、その年齢からして、未だその不利益が現実化しているものではなく、また、Yは、住民基本台帳に記載されていない住民に対しても、手続的に煩さな点があり得るとはいえ、多くの場合、それに記録されている住民に対するものと同様の行政サービスを提供している。一連の事務手続が法の趣旨に反するものということもできない。A◯

 

〈行政行為の効力〉

23〈公定力〜茨城県農地委員会事件/最判昭和30.12.26 百Ⅰ 67(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q353 行政処分は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解すべきである。A◯

 

[判]〈判旨〉Q354 茨城県農地委員会のなした前記訴願裁決取消の裁決は、未だ取り消されないことは原判決の確定するところであって、しかもこれを当然無効のものとすることはできない。A◯

 

【フォロー/公定力の意義】行政処分は、たとえ違法であっても、その違法事由が無効事由でないときには、権限ある機関による取消しがない限り有効なものとして通用する。

 

24〈行政行為と刑事罰〜余目町個室付浴場事件/最判昭和53.6.16 百Ⅰ 68(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q355 風俗営業取締法は、学校、児童福祉施設などの特段の特定施設と個室付浴場業の一定区域内における併存を例外なく全面的に禁止しているわけではないので、Xの営業に先立つ本件認可処分が行政権の濫用に相当する違法性を帯びているときには、A児童遊園の存在をXの営業を規制する根拠にすることは許されない。A◯

 

[判]〈判旨〉Q356 児童遊園は、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操を豊かにすることを目的とする施設なのであるから、児童遊園設置の認可申請、同認可処分もその趣旨に沿ってなされるものであって、Xの営業の規制を主たる動機、目的とする余目町のA児童遊園設置の認可申請を容れた本件認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、Xの営業に対しこれを規制し得る効力を有しない。A◯

 

〈行政行為における裁量〉

25(学校施設使用許可と考慮事項の審査〜学校施設目的外使用許可事件/最判平成18.2.7 百Ⅰ 73(7版)〉→答案化

 

[判]〈判旨〉Q357 学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則、管理者の裁量に委ねられてるものと解する。A◯

 

[判]〈判旨〉Q358 【学校教育上支障が有れば使用を許可することができない】ことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可をしなければならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した【合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる】。A◯

 

[判]〈判旨〉Q359 管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時場所、目的及び及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をするに当たっての支障又は許可した場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など【許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等】の【諸般の事情を総合考慮】してされるものである。A◯

 

[判]〈判旨〉Q360 その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使とされたことを前提とした上で、その【判断過程に合理性を欠くところがないか】を検討し、【その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って】、裁量権の逸脱濫用として違法となる。A◯

 

【フォロー/意義】本判決は、最高裁として初めて学校施設の目的外使用許可に裁量があることを認め、さらに裁量統制の手法について従来の一般的な枠組みとは異なる枠組みを採用した点で注目される。

 

26〈在留期間の更新と裁量審査〜マクリーン事件/最大判昭和53.10.4 百Ⅰ 76(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q361 裁判所は、法務大臣の右判断についてそれが違法となるかどうかを審理、判断するに当たっては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又は濫用があったものとして違法であるとすることができるものと解する。A◯

 

27〈科学技術的判断と裁判所の審査〜伊方原発訴訟/最判平成4.10.29 百Ⅰ 77(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q362 原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、【現在の科学技術水準】に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。A◯

 

[判]〈判旨〉Q363 被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料を全て被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張,立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが【事実上推認】される。A◯

 

28〈教科書検定と裁量審査〜家永訴訟/最判平成5.3.16 百Ⅰ 79(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q364 文部大臣(当時)による検定の審査、判断は「申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公平であるか、教科書の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか,等の様々な観点から多角的に行われるもので,学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣(当時)の合理的な裁量に委ねられている。A◯

 

[判]〈判旨〉Q365 合否の判定、条件付合格の条件の付与等についての【教科用図書検定調査審議会の判断の過程】に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況の認識や旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣(当時)の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国賠法上違法となる。A◯

 

29〈学生に対する措置と裁量審査〜剣道実技不受講事件/最判平成8.3.8 百Ⅰ 81(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q366 校長の裁量権の行使としての処分が、全くの事実の基礎を欠くか又は社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法である。A◯

 

[判]〈判旨〉Q367 退学処分は、学生の身分を剥奪する行為であり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要するものであり、その学生に与える不利益の大きさに照らして、原級留置処分の決定に当たっても、同様に慎重な配慮が要求される。A◯

 

[判]〈判旨〉Q368 当事者の説明する宗教上の【信条と履修拒否との合理的関連性】が認められなるかどうかを【確認する程度の調査をすることが【公教育の宗教的中立性】に反するとは言えない。A◯

 

[判]〈判旨〉Q369 Y(校長)の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会通念上著しく妥当性を欠く処分をしたものと評する他はなく、【本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法】なものである。A◯

 

〈行政行為の瑕疵〉

30〈違法性の承継/最判平成21.12.17 百Ⅰ 84〉→答案化

 

[判]Q370 安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解する。A◯

 

【フォロー/問所】本件の主たる争点は、安全認定の出訴期間経過後の建築確認取消訴訟において、安全認定の違法を理由に建築確認の違法が導かれるかという点。最高裁は、これを是認した。

 

31〈瑕疵の治癒⑴〜農地買収計画に対する訴願裁決を経ない手続の進行/最判昭和36.7.14 百Ⅰ 85〉

 

[判]〈判旨〉Q371 農地買収計画につき異議・訴願の提起があるにもかかわらず、これに対する決定・裁決を経ないで爾後の手続を進行されたという違法は、買収処分の無効原因となるのではなく、事後において決定・裁決があったときは、これにより【買収処分の瑕疵は治癒】されたものと解する。A◯

 

32〈瑕疵の治癒⑵〜更生処分の理由附記の不備/最判昭和47.12.5 百Ⅰ 86(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q372 更生が附記理由の不備ゆえに訴訟で取り消されるときは、更生期間の制限により新たな更生をする余地のないことがある等処分の相手方の利害に影響を及ぼすのであるから、【審査裁決に理由が附記】されたからといって更生を取り消すことが所論のように無意味かつ不必要となるものではない。A◯

 

[判]〈判旨〉Q373【更生における附記理由不備の瑕疵】は、後日これに対する審査裁決において、処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、それにより治癒されるものではない。A◯

 

2023.4.28

〈行政行為の取消し・撤回〉

33〈行政行為の撤回〜菊田医師事件/最判昭和63.6.17 百Ⅰ 89(7版)

 

[判]〈判旨〉Q374 Y(宮城県医師会)が指定医師の指定をした後に、Xが法秩序遵守等の面において指定医師としての適格性を欠くことが明らかとなり、Xに対する指定を存続させることが公益に適合しない状態が生じたというべきところ、実子あっせん行為の持つ右のような法的問題点、指定医師の指定の撤回によってXの被る不利益を考慮しても、なおそれを【撤回すべき公益上の必要が高い】と認められるから、【法令上その撤回について直接明文の規定がなくとも】、指定医師の権限を付与されているYは、その権限においてXに対する右規定を撤回することができる。A◯

 

【フォロー/修正】法令上、直接明文の規定がある場合に限り→×

 

〈行政上の契約〉

34〈水道供給契約/最判平成元.11.18 百Ⅰ 92(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q375 水道法上給水契約の締結を義務付けられている水道事業者としては、たとえ右の指導要綱を事業者に遵守させるため、行政指導を継続する必要があったとしても、これを理由として事業主らとの給水契約の締結を留保することは許されないというべきであるから、これを留保した被告人の行為は、給水契約を拒んだ行為に当たる。A◯

 

[判]〈判旨〉Q376 水道事業者としては、たとえ指導要綱に従わない事業者からの給水契約の申込であっても、その締結を拒むことは許されないというべきであるから、被告人らには本件給水契約の締結を拒む正当の理由はない。A◯

 

35〈公害防止協定/最判平成21.7.10 百Ⅰ 93(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q377 知事の許可が、処分業者に対し、許可が効力を有する限り事業や処理施設の使用を継続すべき義務を課すものではない。A◯

 

[判]〈判旨〉Q378 廃棄物処理法には、処分業者に処理施設の使用を継続すべき義務を課す条文は存在せず、却って、処分業者による事業の全部又は一部の廃止、処理施設の廃止については、知事に対する届出で足りる旨規定されている。A◯

 

[判]〈判旨〉Q379 処分業者が、公害防止協定において、協定の相手方に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者の自由な判断で行えることであり、その結果、許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても、廃棄物処理法に何ら抵触するものではない。A◯

 

36〈指名競争入札/最判平成18.10.26 百Ⅰ 94(7版)〉

 

[判]Q380 地方公共団体が、指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、①工場現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、②地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うについては、その【合理性を認めることができる】ものの、①又は②の観点から村内業者と同様の条件を満たす村外業者もあり得るのであり、価格の有利性確保の観点から考慮すれば、考慮すべき他の諸事情に関わらず、およそ村内業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用について、【常に合理性があり裁量権の範囲内】であるということはでき【ない。】A◯

 

〈行政上の実力行使〉

37〈ヨット係留施設の撤去/最判平成3.3.8 百Ⅰ 101(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q381 Yが乙町の町長として本件鉄杭撤去を強行したことは、漁港法及び行政代執行法上適法と認めることができないものであるが、右の緊急事態に対処するために執られたやむを得ない措置であり、民法720条の法意に照らしても、乙町としては、Yが右撤去に直接要した費用を同町の経費として支出したことを容認すべきものであって、本件請負契約に基づく公金支出については、その違法性を肯認できず、【Yが乙市(1981年4月より市制実施)に対し対し損賠責任を負うものとすることはできない】。A◯

 

〈行政調査〉

38〈税務調査と憲法/最大判昭和47.11.27 百Ⅰ 103〉

 

[判]〈判旨〉Q382 憲法38条違反に対して、検査が、専ら所得税の公平な賦課徴収を目的とする手続であって、刑事責任の追及を目的とする手続ではなく、また、そのための資料の取得収集に直結びつく作用を一般的に有するものでもないこと、及びこのような検査制度に公益上の必要性と合理性があり、憲法38条1項の法意が、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般に有する手続には、等しく及ぶと解する。本件各規定が憲法38条1項にいう「自己に不利益な供述」を強要するものとすることはできない。A◯

 

39〈税務調査と国税犯則調査/最判平成16.1.20 百Ⅰ 105(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q383 上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたに止まり、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは検査のための手段として行使されたものと見るべき根拠はないから、その権限の行使に違法はなかったというべきである。A◯

 

[判]〈判旨〉Q384 原判決は、上記質問又は検査の権限の行使及びそこから派生する手続により取得収集された証拠資料の証拠能力を肯定しているから、原判断は、結論において是認できる。A◯

 

〈行政上の義務履行の確保〉

40〈最判平成14.7.9 百Ⅰ 109 百Ⅰ 109(7版)〉

 

[判]Q385 国又は地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきである。A◯

 

[判]〈判旨〉Q386 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用ないし一般法益の保護を目的とするものであって自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される。A◯

 

〈行政手続・私人の行為/事前手続と理由の提示〉

41〈工作物使用禁止命令と事前手続/最判平成4.7.1(7版)〉

 

[判]Q387 憲法31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質において自ずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前に告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合衡量して決定されるべきものであって、【常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない】。A◯

 

42〈理由の提示⑵/最判平成23.6.7 百Ⅰ 120(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q388 行政手続法14条1項本文が、【不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければ】ならないとしているのは、名宛人に直接義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保としてその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。A◯

 

[判]〈判旨〉Q389 建築士に対する懲戒処分に際して同時に示されるべき理由としては、処分の原因となる事実及び処分の根拠法条に加えて、【本件処分基準の適用関係が示さ】れなければ、処分の名宛人 において、上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は知り得るとしても、如何なる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたかを知ることは困難であるのが通例である。A◯

 

[判]〈判旨〉Q390 行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし、同項本文の要求する理由の提示としては十分でないと言わなければならず、【本件免許取消処分】は、同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であるというべきであって、取消しを免れないものというべきである。A◯

 

43〈理由の提示⑶〜旅券発給拒否/最判昭和60.1.22 百Ⅰ 121(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q391 旅券法14条は、外務大臣が、同法13条の規定に基づき一般旅券の発給をしないと決定したとときは、速やかに、理由を付した書面をもって一般旅券の発給を申請した者に通知しなければならないことを規定している。一般に、法律が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである。A◯

 

[判]〈判旨〉Q392 一般旅券発給拒否通知書に付記すべき理由としては、如何なる事実関係に基づき如何なる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しなければならず、単に発給拒否の根拠規定を示しただけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係関係をも当然知り得るような場合は別として、旅券法の要求する理由付記として十分でない。A◯

 

[判]〈判旨〉Q393 外務大臣において旅券法13条1項5号の規定を根拠に一般旅券の発給を拒否する場合には、申請者に対する通知書に同号に該当すると付記するのみでは足りず、【如何なる事実関係を認定して申請者が同号に該当すると判断したかを具体的に記載】することを要する。A◯

 

〈行政過程における私人の行為〉

44〈申請に対する応答の留保〜建築確認〜品川マンション事件/最判昭和60.7.16 百Ⅰ 124(7版)〉

 

 [判]〈判事〉Q394 判示事項。A建築主と付近住民との紛争につき建築主に行政指導が行われていることのみを理由として建築確認申請に対する処分を留保することと、国賠法1条1項所定の違法性。

 

 [判]〈判旨〉Q395 建築主が、建築確認申請に係る建築物の建築計画を巡って生じた付近住民との紛争につき関係機関から話合いによって解決するようにとの行政指導を受け、これに応じて住民と協議を始めた場合でも、その後、建築主事に対し右申請に対する処分が留保されたままでは行政指導に協力できない旨の意思を真摯かつ明確に表明して当該申請に対し直ちに応答すべきことを求めたときは、【行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情】が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで右申請に対する【処分を留保することは、国家賠償法1条1項所定の違法な行為】となる。A◯

 

[判]〈判旨〉Q396 一旦行政指導に応じて建築主と付近住民との話し合いによる紛争解決を目指して協議が始められた場合でも、右協議の進行状況及び四囲の客観的状況により、建築主において建築主事に対し、建築確認処分を留保したままでの行政処分には協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し、当該確認申請に対し直ちに応答すべきことを求めているものと認めるときには、他に前記特段の事情が存在するものと認められない限り、当該行政指導を理由に建築主に対し確認処分の留保の措置を受忍せしめることは許されない。それ以降の右行政指導を理由とする確認処分の留保は、違法となる。A◯

 

〈一時不再理〉

〈住民監査請求と一事不再理/最判昭和62.2.20 百Ⅰ 130(7版)〉

 

[判]〈判旨〉Q397 地方自治法242条1項の規定による住民監査請求に対し、同条3項の規定による監査委員の結果が請求人に通知された場合において、請求人たる住民は、右監査の結果に対して不服があるときは、法242条の2第1項の規定に基づき同条の2第2項1号の定める期間内に訴えを提起すべきものであり、【同一住民】が先に監査請求の対象とした財務会計上の行為又は怠る事業と同一の行為又は怠る事実を対象とする【監査請求を重ねて行うことは許されない】ものと解する。A◯