行政法[基本的事項]②©︎seize the dream 2023

 2023.4.22 Q113〜224

 

〈行政不服審査法/暫定〉

 

〈行政訴訟〉

[定]Q113 行政訴訟。A行政活動の是正等を求める正式の争訟手続で、裁判所に対して提起されるものをいう。

 

〈抗告訴訟〉

[定]Q114 抗告訴訟。A行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。【フォロー】行訴3①。

 

[基]Q115 抗告訴訟に属する訴えとしての6種類。A①処分の取消しを求める処分の取消しの訴え(3②)、②裁決の取消しを求める裁決の取消しの訴え(3③)、③処分及び裁決の無効等の確認を求める裁決の取消しの訴え(3④)、④法令に基づく申請に対し行政庁が処分又は裁決を行わないことの違法の確認を求める不作為の違法確認の訴え(3⑤)、⑤行政庁が一定の処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める義務付けの訴え(3⑥)、⑥行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める差し止めの訴え(3⑦)。

 

[解釈]Q116 行政事件訴訟法は、抗告訴訟の種類をこれらの6種類に限定する趣旨ではない。A◯【フォロー】法定されていない抗告訴訟のことを【法定外抗告訴訟】という。

 

〈民衆訴訟〉

[定]Q117 民衆訴訟。A国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益に関わらない資格で提起するものをいう。【フォロー】法5。

 

〈住民訴訟〉

[定]Q118 住民訴訟。A地方公共団体の住民が、当該地方公共団体の執行機関及び職員について、適法な財務会計上の行為があると考える場合に、その是正を求めて提起する訴訟をいう。

 

〈機関訴訟〉

[定]Q119 機関訴訟。A国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。【フォロー】法6。

 

〈処分性の意義〉

[大]Q120 取消訴訟によって争うことができるのは、【処分及び裁決】である。A◯【フォロー】法3②③。

 

[判]Q121 行政庁の処分とは、行政庁の法令に基づく行為の全てを意味するものではなく、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

【フォロー】最判昭和39.10.29 百Ⅱ 156 大田区ゴミ焼却場設置事件。

 

〈公権力性〉

[判]Q122 大田区ゴミ焼却場設置事件において、処分性に関する一般論を示した上で、ゴミ焼却場の設置は、用地の買収、都内部における設置計画の作成、議会による同計画の承認等の一連の行為からなるが、いずれも公権力の行使には当たらないとして、処分性を否定した。A◯【フォロー】最判昭和39.10.29。ここには設置管理行為を分解して考察し、そこに公権力の行使に当たる行為が含まれるかどうかを個別に検討する考え方が見られる。こうした事案は、民事訴訟としての差止訴訟が可能であり、敢えて処分性を認める必要はない。

 

〈法的効果〉

[基]Q123 行政の行為が法的効果を及ぼさない場合、処分性は認められない。【事実行為には、原則、処分性が否定】される。A◯

 

[判]Q124 健康保険法に基づく指定医に対し、診療報酬を不正に請求したとして、県知事が戒告を行ったので、その取消訴訟が提起された事案について、戒告そのものは何らの法的効果を生ずるものではなく、たとえそれによって原告の名誉が侵害されるとしても、処分性を認めることはできない。A◯

 

[判]Q125 国民皆保険制度が採用されている我が国においては、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院を受診する者は殆どなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院が殆ど存在しないことは公知の事実であるから、【保険医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ない】ことになる。A◯【フォロー】最判平成17.7.15 百Ⅱ 167(旧版)。病院開設中止勧告事件。

 

[判]Q126 【病院開設中止の勧告】は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たる。A◯

 

〈外部性〉

[基]Q127 処分が認められるためには、争われた行為が国民に対して法的効果を及ぼすものでなければならない。A◯【フォロー】その行為が、【行政内部に留まる場合には、処分性が否定】される。

 

[判]Q128 通達は行政内部における命令に過ぎず、一般国民がこれに拘束されるわけではないから、処分性は認められない。A◯【フォロー】最判昭和43.12.24。墓地埋葬通達事件。

 

〈成熟性(個別具体性)〉

[基]Q129 国民に対して法的効果をもたらす公権力の行使に当たる行為であっても、紛争の成熟性を欠くとして、処分性が否定される場合がある。A◯

 

〈一般的抽象的行為〉

[判]Q130 特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間が満了するまでの間は、当該保育所における【保育を受けることを期待し得る法的地位を有する】ものということができる。A◯

 

[判]〈基〉Q131 【条例の制定】は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものではない。A◯

 

[判]Q132 本件改正条例は、本件各保育所の施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その【制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得る】ものということができる。A◯【フォロー】最判平成21.11.26。横浜市保育所廃止条例事件。

 

〈段階的行為〉

[判]Q133 土地区間整理事業の事業計画の取消しが求められた事件につき、【青写真判決を明示的に変更】し、事業計画に処分性を肯定した。A◯【フォロー】最大判平成20.9.10。

 

[判]Q134 同判決が処分性を認める理由。A事業計画によって施行地区内の宅地所有者等が換地処分を受けるべき地位に立たされるから、その法的地位に直接的な影響が生じるものというべきこと、また、換地処分等の取消訴訟を提起しても、その時点では工事等が進捗しているから、事情判決がなされる可能性が高く、事業計画決定の段階で取消訴訟を認めることに合理性がある。

 

〈原告適格〉

[定]Q135 原告適格。A取消訴訟を提起することができる資格をいう。【フォロー/意義】処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(9①)しか規定しておらず、その解釈が問題となる。

 

[判]Q136 道路交通法所定の違反行為があったことを理由に、優良運転者の記載のない運転免許証を交付してなされた運転免許更新処分について、取消しを求める訴えの利益を肯定した。【フォロー】最判平成21.2.27

 

[問所]Q137 問題となるのは、処分の名宛人以外の第三者について、どこまで原告適格が認められるかである。学説で有名なのは、①法律上保護された利益説と、②保護に値する利益説の二つ。

 

[学説]Q138 法律上保護された利益説。A原告適格を認められるのは、処分の根拠法規が保護している利益を有する者である。【フォロー】根拠法規の解釈が決め手となるから基準として明確である。

 

[学説]Q139 同説批判。A①法律の規定を絶対視するのは概括主義の原則に反するのではないか、②立法者は原告適格を念頭において、法律の条文を作っているわけでは必ずしもないのではないか、③法律の趣旨は多くの場合曖昧であって、基準として左程明確とは言えないのではないかという批判がある。

 

[学説]Q140 保護に値する利益説。A原告適格は、根拠法規の解釈ではなく、原告が有すると主張する利益が裁判による保護に値するかどうかによって決すべきとされる。【フォロー】原告適格の範囲が比較的広く認められる。

 

[学説]Q141 同説批判。A①基準としては不明確であり、民事訴訟の容認を結果するのではないか、②事実上の利益を有する者にも原告適格を認めることになり、「法律上の利益」という文言に反するのではないかという批判がある。

 

〈行訴法改正までの判例の展開/主婦連ジュース訴訟上告審〉

[判]Q142 同判決は、①法律上保護された利益を有する者とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害された者であり、②法律上保護された利益とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益をいうとし、法律上保護された利益説をとることを明らかにした。A◯【フォロー】最判昭和53.3.14 百Ⅱ 138。

 

〈長沼ナイキ訴訟〉

[判]Q143 自衛隊のナイキ基地を建設するため、森林法に基づく保安林の指定が解除されたのに対して、山林の伐採によって洪水等の被害を受ける付近住民が、自衛隊は違憲であり、そのための保安林解除も違法であるとして、保安林指定解除処分の取消訴訟を提起した事案において、・・・保安林の指定に直接の利益を有する者は、指定の申請ができるとされていること、保安林指定解除する際にもこれらの者が意見書を提出し、公開の公聴会に参加できるとされていること等からすると、法はこれらの者に法律上の利益を付与していると解し得るとして、原告らの一部につき原告適格を肯定した。A◯【フォロー】最判昭和57.9.9 百Ⅱ 180(旧版)。

 

〈伊達火力発電所訴訟〉

[判]Q144 発電所を建設するための公有水面埋立法による埋立免許に対し、周辺水面の漁業権者等が取消訴訟等を提起した事案について、原告適格を否定したものの、第三者の利益を保護する趣旨は、明文の規定がない場合であっても、法律の合理的解釈により当然に導かれる場合にも認められるとした。A◯【フォロー】最判昭和60.12.17 百Ⅱ 169(旧版)。

 

〈2004年行政事件訴訟法改正〉

〈国立景観訴訟〉

[判]Q145 不法行為法上、良好な景観の恵沢を享受する利益が法律上保護に値することを認めた。A◯【フォロー】最判平成18.3.30。

 

〈鞆の浦訴訟〉

[判]Q146 公有水面埋立免許の差止訴訟について、景観利益を有する住民に原告適格を認めた。A◯【フォロー】※暫定/広島地判平成21.10.1。

 

〈小田急訴訟〉

[判]Q147 当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々の利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害される虞がある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有する。A◯【フォロー】最大判平成17.12.7 百Ⅱ 176(旧版)。

 

〈訴えの利益(狭義)〉

[意義]Q148 取消訴訟を提起し、追行するためには、係争処分の取消しによって原告が現実に法律上の利益を受けることが必要である。これを狭義の訴えの利益という。A◯【フォロー】原告適格と合わせて広義の訴えの利益と呼ばれる。

 

[問所]Q149 処分後の事情変更等によって事後的に訴えの利益が失われることもあり、如何なる場合がこれに当たるか問題となる。A◯

 

[判]Q150 地方議会の議員が自らに対する除名処分の取消訴訟を提起したが、訴訟係属中に任期が満了したため、訴えの利益が残るかが争われた事案において、多数意見は、任期が満了した以上、原告が議員としての地位を回復することはなくなったとして、訴えの利益を否定した。A◯

 

【フォロー/反対意見】最大判昭和35.3.9。議員に復帰することはできないとしても、処分が違法であれば議員だったはずの期間について報酬請求権が発生することになるから、訴えの利益を肯定すべきであると主張。学説も反対意見を支持。

 

[沿革]Q151 1962年(昭和37年)の行訴法の制定に際し、上記判例の場合に訴えの利益を肯定することを明確にする趣旨で、同法9条(当時)の「法律上の利益を有する者」の後に、処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含む」というカッコ書きが設けられた。A◯

 

〈名古屋郵政局職員免職処分取消請求事件〉

[判]Q152 公務員が自らに対する免職処分の取消訴訟を提起したが、その後、市会議員選挙に立候補したため公務員の資格を失った事案について、【給料請求権等が残ることを理由に訴えの利益を肯定】した。A◯【フォロー】最大判昭和40.4.28。

 

〈訴えの利益の消滅が問題となる場合〉

〈長沼ナイキ訴訟〉

[判]Q153 農林水産大臣が森林法に基づく保安林の指定を解除したのに対し、洪水等の被害を受けるおそれのある周辺住民が取消訴訟を提起した事案において、一定範囲の住民に原告適格を認めたものの、洪水防止施設の設置により洪水等の危険はなくなったとして、【訴えの利益を否定】した。A◯【フォロー】最判昭和57.9.9。百Ⅱ 180(旧版)。

 

〈朝日訴訟〉

[判]Q154 生活保護法に基づく保護変更決定の取消訴訟を提起したが、訴訟係属中に原告が死亡した事案について、生活保護の受給権は一身専属の権利であって相続の対象とならず、また、生存中の給付に係る請求についても、生活扶助は法の予定する目的以外に流用することを許さないものであり、【原告の死亡によって当然に消滅】するとした。A◯

 

【フォロー】最大判昭和42.5.24 百Ⅰ 17(旧版)。相続人による承継を認めず、【訴訟の終了を宣言】した。

 

〈仙台市建築確認取消訴訟〉

[判]Q155 建築確認の取消訴訟係属中に建築工事が完了した場合について、建築確認は工事を適法に行わせる効果しかないこと、工事完了後の検査や是正命令は建築物それ自体の適法性を基準としており、建築確認の適法性はもはや問題とならないこと、是正命令の発動は、特定行政庁の裁量に委ねられていることを理由に、【訴えの利益を否定】した。A◯【フォロー】最判昭和59.10.26 百Ⅱ 181(旧版)。

 

[基]Q156 処分を取消しても現状回復が事実上困難であるというだけでは、訴えの利益は消滅しない。A◯

 

〈ハ鹿町土地改良事業施行認可処分取消請求事件〉

[判]〈例〉Q157 土地改良事業の施行認可取消訴訟が提起されたが、【訴訟係属中に工事が完了】した事案について、①当該認可は事業施行者に事業施行権を付与するものであり、その後の一連の手続・処分は許可の存在を前提とするから、認可取消しによってこれらの手続・処分の法的効力は影響を受けること、②工事完了により社会通念上現状回復が不可能となるとしても、こうした事情は事情判決の適用において考慮されるべき事柄であることを理由に【訴えの利益を肯定】した。A◯【フォロー】最判平成4.1.24 百Ⅱ 182(旧版)。

 

[基]Q158 処分が形式的に失効しても、何らかの解釈論的操作によって効果が存続すると看做し得る場合もある。A◯

 

〈東京12チャンネル事件〉

[判]〈例〉Q159 放送局の開設免許について競願となり、拒否処分を受けた原告が異議申し立てを行った上、棄却裁決の取消訴訟を提起したところ、訴訟係属中に当該免許の期間5年が経過し、【再免許がなされた】事案について、再免許は当初の免許を前提としており、実質的には更新と異なるところはなく、【訴えの利益は失われない】。A◯【フォロー】最判昭和43.12.24 百Ⅱ 178(旧版)。

 

〈成田新法事件〉

[判]Q160 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(成田新法)による使用禁止命令の取消訴訟が提起された事案について、同命令は1年間の期限付きであり、毎年更新されているところ、【1年の期間が経過することによって訴えの利益は消滅】する。A◯【フォロー】最大判平成4.7.1 百Ⅰ 121(旧版)。

 

〈回復すべき法律上の利益〉

[基]Q161 処分の法的効果が失われた後、如何なる場合に「回復すべき法律上の利益」(9①かっこ書き)が認められるかについては争いがある。判例は、実体法上の請求権や法規の定める効果が残っている場合は訴えの利益を肯定するが、【名誉侵害や反復の危険が残るに過ぎない場合にはこれを否定】している。A◯

 

〈実体法上の請求権〉

[基]Q162 地方議会議員に対する除名処分の取消訴訟係属中に任期が満了した場合など、当該議員が元の地位を回復することができなくなったときでも、【報酬請求権等の実体法上の請求権が残る場合、訴えの利益は存続】する。A◯

 

〈法規の定める効果〉

[基]Q163 処分の本来的な効果が失われた場合でも、実定法規が付した何らかの法的効果が残る場合は、訴えの利益が認められる。A◯

 

[判]〈例〉Q164 弁護士会が弁護士に対して懲戒処分として1年間の業務停止処分を行い、訴訟係属中に当該期間が経過した事案について、懲戒処分を受けた弁護士は日弁連会長選挙規程により日本弁護士連合会の会長選挙で被選挙権を持たないとされていることを理由に、【訴えの利益は消滅しない】。A◯【フォロー】最判昭和58.4.5。

 

〈名誉侵害〉

[基]Q165 制裁的な性質を持った処分が期間の経過等により効果を失った場合については、【名誉の侵害が残るとしても、その回復は訴えの利益を根拠付けない】と解されている。A◯

 

〈運転免許停止処分取消請求事件〉

[判]〈例〉Q166 運転免許停止処分の取消訴訟が提起されたが、【停止期間が経過】した場合について、①運転免許停止処分は、3年間前歴として考慮されるが、無事故・無処分で1年を経過したときは、前歴がないものと見做され、これによって処分の効果は一切消滅すること、②処分の記載がある運転免許証を所持することにより名誉等を侵害される可能性が継続するとしても、これは【処分がもたらす事実上の効果に過ぎず、これをもって法律上の利益と見ることはできないことを理由に、訴えの利益を否定】した。A◯【フォロー】最判昭和55.11.25 百Ⅱ 79(旧版)。

 

〈被告適格〉

[大]Q167 取消訴訟において被告とすべきは、原則、係争処分をした行政庁が所属する行政主体である。A◯【フォロー】11①。

 

[大]Q168 処分等をした【行政庁が国又は公共団体に所属しない】ときは、【当該行政庁が被告】となる。A◯【フォロー】11②。指定法人などがこれに該当。

 

[大]Q169 被告とすべき行政主体又は行政庁がないときは、当該処分等に係る事務の帰属する国又は公共団体が被告となる。A◯【フォロー】11③。

 

〈管轄裁判所〉

[大]Q170 事物管轄に関しては、行政事件訴訟法の場合、訴額に拘らず、【地裁が第一審の裁判所】となる。A◯【フォロー】裁24、1号、33①1号。【簡裁は、管轄権を持たない】。

 

〈不服申立前置〉

[定]Q171 不服申立前置主義。A処分について不服申立ての提起が可能な場合、当該不服申立てを行った後に初めて訴訟を提起できるとする考え方をいう。

 

[大]Q172 行政事件訴訟法は、不服申立前置主義を採用せず、【原則、直ちに訴訟を提起することができる】。A◯【フォロー】8①本。

 

[大]〈例外〉Q173 【個別の法律】によって、不服申立てに対する【裁決を経た後でなければ取消訴訟を提起できないと規定】されている場合は、例外的に前置主義となる。A◯【フォロー】8①但書。

 

[大]〈例外〉Q174 直ちに訴訟を提起することができることの例外が設けられている(前置主義)理由は、①大量になされる処分、②専門技術的性質の処分、③第三者的機関による裁決が予定された処分についてである。【フォロー】実際、不服申立前置主義を定める法律はかなりの数に昇っており、原則と例外が逆転しているとの指摘有。

 

[大]Q175 不服申立前置主義が個別法律によって採られている場合でも、①不服申立てがあった日から3ヵ月を経過しても裁決がないとき、②処分による著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、③その他、裁決を経ないことにつき正当な理由があるときは、【直ちに訴訟を提起できる】。A◯【フォロー】8②。

 

〈出訴期間〉

[大]Q176 取消訴訟を提起できるのは、処分があったことを知った日から6ヵ月以内、若しくは処分の日から1年以内である。A◯【フォロー】14①本、主観的出訴期間。14②本、客観的出訴期間。

 

[大]〈例外〉Q177 いずれも、正当な理由があるときは例外が認められる。A◯【フォロー】14①但書、14②但書。天災によって出訴できなかった場合や、出訴期間について誤った教示がされた場合が該当。

 

[大]Q178 行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分をする場合には、①当該処分に係る取消訴訟において被告とすべき者、②出訴期間、③不服申立前置主義が定められているときはその旨を、当該【処分の相手方】に対し、【書面で教示】しなければならない。A◯【フォロー/例外】処分を口頭でする場合はこの限りではない。

 

〈取消訴訟の審理/取消訴訟の訴訟物〉

[基]〈解釈〉Q179 訴訟における本案審理の対象を訴訟物という。取消訴訟の対象には争いがあるが、通説はこれを係争処分の違法一般であると解している。A◯

 

[基]Q180 取消訴訟の本案においては、争われた部分が違法であるかどうかが審理される。A◯

 

[大]Q181 行政に自由裁量が認められる場合には、裁量の逸脱・濫用がある場合にのみ、当該処分は違法となる。A◯【フォロー】行訴30。

 

〈自己の法律上の利益に関係のない違法事由〉

[大]Q182 原告は、【自己の法律上の利益に関係のない違法を理由】として、取消しを求めることができない。A◯【フォロー】10①。

 

〈原処分主義〉

[大]Q183 処分の取消訴訟と、当該処分に対する審査請求を棄却した裁決の取消訴訟を提起できるときは、【裁決の取消訴訟においては、原処分の違法を主張することはできない】。A◯【フォロー/趣】10②。処分取消訴訟と裁決取消訴訟の交通整理をする趣旨。

 

〈違法判断の基準時〉

[判]Q184 農地買収計画に関する訴願裁決取消訴訟の係属中に法改正がなされた事案について、【処分時の法律によって違法性を判断】すべきであるとした。A◯【フォロー】最判昭和27.1.25 百Ⅱ 200。

 

〈伊方原発訴訟〉

[判]Q185 原子炉の安全性については、【現在の科学的水準】に照らして判断すべきであると判示している。A◯【フォロー】最判平成4.10.29 百Ⅰ 74。

 

〈釈明処分の特則〉

[大]Q186 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため必要があると認めるときは、①被告に所属する行政庁に対し、処分の内容、処分の根拠となる法令の条項、処分等の原因となる事実、その他処分の理由を明らかにする資料であって、当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求め、②それ以外の行政庁に対し、当該行政庁が保有する同様の資料の全部又は一部の提出を求めることができる。A◯【フォロー】23の2①。

 

(職権証拠調べ〉

[大]Q187 行政訴訟においては、行政主体が利害関係を有しており、公益に影響するところが少なくないことから、当事者が提出しない証拠を職権で調べることができる。A◯

 

[大]Q188 証拠調べの結果について、当事者の意見を聴かなければならない。A◯【フォロー】24。

 

[大]Q187 当時者が主張していない事実を裁判所が職権で認定すること(職権探知)は、認められていない。A◯

 

〈第三者の訴訟参加〉

[大]Q188 裁判所は、訴訟の結果により権利を侵害される第三者があるときは、当事者若しくは当該第三者の申立てにより、又は職権で、決定により、当該【第三者を訴訟に参加させる】ことができる。A◯【フォロー】22①。

 

〈立証責任〉

[定]Q189 立証責任。A要件事実の存否が不明な場合に、自己に有利な法律効果の発生を認められないことをいう。

 

〈個別具体説〉

〈伊方原発訴訟〉

[判]Q190 原子炉設置許可処分取消訴訟において、要件への適合性について行政庁の合理的な判断に委ねる趣旨であり、立証責任は本来原告が負うべきものとしながら、原子炉の安全審査に関する【資料を全て被告行政庁側が保持】していることなどの点を考慮すると、【被告行政庁側が上記判断に不合理な点がないことを主張・立証する必要】があり、これを尽くさない場合には、判断に不合理な点があることが事実上推認される。A◯

 

【フォロー】最判平成4.10.29 百Ⅰ 74。立証責任を事実上転換したものと解される。

 

〈取消訴訟の判決/事情判決〉

[大]Q191 裁判所は、処分又は裁決が違法であるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合は、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、【処分等を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、請求を棄却】することができる。A◯【フォロー】31①。この場合、判決主文において、処分等が違法であることを宣告要。

 

〈八鹿町土地改良事業施行認可処分取消訴訟〉

[判]Q192 本件認可処分が取り消された場合に、本件事業計画に係る工事及び換地処分が全て完了したため、社会的、経済的損失の観点から見て、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行訴31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人Xの法律上の利益を消滅させるものではない。A◯【フォロー】最判平成4.1.24 百Ⅱ 182。

 

〈判決の効力/既判力〉

[定]Q193 既判力。A判決によって裁判所の判断内容が確定し、当事者がもはやこれを争えないことをいう。【フォロー】既判力は、原則、訴訟当事者にしか及ばない。

 

〈形成力〉

[定]Q194 形成力。A取消判決がなされると、行政庁による取消しを待つことなく、直ちに当該処分の効力が失われること。

 

[大]Q195 取消判決は、第三者に対しても効力を有する。A◯【フォロー】32①。取消判決の第三者効。

 

〈拘束力〉

[定]Q196 拘束力。A取消判決がなされた場合には、処分を行った行政庁その他の関係行政庁がその趣旨に従って行動しなければならない義務を負うことをいう。【フォロー】33①。

 

〈無効等確認訴訟〉

[定]Q197 無効等確認訴訟。A処分又は裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。【フォロー】3④。処分が無効であるか否かについて争いがある場合に、その確認を求めるのが無効等確認訴訟である。

 

[大]Q198 行訴法は、無効等確認訴訟は、補充的にのみ認められるとする規定を設け、一応の交通整理を図った。A◯【フォロー】36。

 

[基]Q199 無効等確認訴訟に補充性が要件とされたのは、無効等確認訴訟が過去の行為に関する確認訴訟であることから、民事訴訟の一般理論により例外的にしか認めらてないと考えられたことによるが、補充性の要件を過度に厳格に解することは適切ではない。A◯

 

〈訴訟要件〉

[要件]Q200 無効等確認訴訟の要件。A①当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれがある者、②その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、③当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達成することができないものに限り、提起することができる。

 

〈不作為の違法確認訴訟〉

[定]Q201 不作為の違法確認訴訟。A行政庁が、法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにも拘らず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟である。【フォロー】行訴3⑤。建築確認を申請したのに対し、建築主事が相当の期間内に何らの処分をしない場合は、この不作為が違法であることの確認を求める訴訟がこれに該当。

 

〈訴訟要件〉

[要件]Q202 不作為の違法確認訴訟について原告適格を有するのは、処分又は裁決について申請をした者に限る。A◯【フォロー】37。

 

[文解]Q203「申請」。A法令に基づく申請をいう。【フォロー】3⑤。

 

[基]Q204 明文規定はないが、訴訟提起の後に処分がなされた場合などは、訴えの利益が消滅すると解される。A◯

 

[基]Q205 出訴期間は設けられていないので、不作為状態が継続する限りいつでも不作為の違法確認訴訟を提起できる。A◯

 

〈審理〉

[大]Q206 本案においては、「相当の期間」が経過しているかどうかが審理される。A◯【フォロー】3⑤。

 

[大]Q207 訴訟の性質上、違法判断の基準時は判決時(口頭弁論終結時)と考えられる。A◯

 

〈義務付け訴訟〉

[定]Q208 義務付け訴訟。A行政庁に対して処分又は裁決をすべき旨を命じることを求める訴訟をいう。A◯【フォロー】3⑥柱書。

 

〈申請型義務付け訴訟〉

[定]Q209 申請型義務付け訴訟。A義務付け訴訟のうち、行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請がされた場合において、当該行政庁がその処分をすべきであるにも拘らずこれがされないときに提起されるものをいう。

 

【フォロー】3⑥2号。訴訟要件が緩やかなこともあって多くの訴訟が提起されており、請求認容例も、情報公開関係の他、保育園の入園承諾を義務付けたもの(東京地判平成18.10.25)など、多数に上っている。

 

〈訴訟要件〉

[要件]Q210 申請型義務付け訴訟を提起できるのは、法令に基づく申請を行った者に限られる。A◯【フォロー】37の3②。法令によって申請制度が設けられており、かつ、原告が実際に申請を行ったことが必要。

 

[要件]Q211 申請型義務付け訴訟を提起するときは、①申請に対して何らの処分もされなかった場合は、不作為の違法確認訴訟(1号)、②拒否処分がなされた場合は、当該拒否処分の取消訴訟又は無効確認訴訟(2号)を【併合提起】しなければならない。A◯

 

【フォロー/理】併合提訴強制。37の3③。併合提訴強制が規定されたのは、行政庁の義務を一義的に確定できない場合などにおいて、併合提起された訴えについてのみ判決を下すことにより、柔軟な解決を図ることを可能とするため。

 

[大]Q212 【裁決義務付け訴訟】については、処分について審査請求がなされた場合において、当該処分に係る処分取消訴訟又は無効等確認訴訟を提起できないときに限り、これを提起できる。A◯【フォロー/理】37の3⑦。取消訴訟等を提起できるのであれば、裁決の義務付けを求める必要がないから。⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️。

 

〈判決〉

[大]Q213 申請型義務付け訴訟は、取消訴訟の拘束力(33)の規定が準用されている。【フォロー】38①。義務付け判決が下された場合、【被告行政主体は当該処分を行う義務を課せられ】るが、これは既判力によるものと解すべき。

 

〈非申請型義務付け訴訟〉

[定]Q214 非申請型義務付け訴訟。A行政庁が一定の処分をすべきであるにも拘らず、これがされないときに提起される義務付け訴訟であって、申請型以外のものをいう。【フォロー】3⑥1号。

 

[判]Q215 訴訟要件が厳しいこともあり、請求認容例は今のところ、住民票作成の義務付けが求められた事案のみである。A◯

【フォロー】東京地判平成15.5.31、控訴審東京高判平成19.11.5(によって取消し)。

 

〈訴訟要件〉

[要件]Q216 非申請型義務付け訴訟は、かなり厳格な訴訟要件が設けられている。すなわち、一定の処分がされないことにより重大な損害を生じるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。A◯【フォロー】37の2①。①請求の対象が処分であること、②それが「一定の」ものであること、③当該処分がされないことにより「重大な損害」が生じること、④「他に適当な方法がない」ことが規定有。

 

[要件]Q217 まず、義務付け訴訟で求めることができるのは、処分又は裁決に限られる。A◯

 

[要件]Q218 次に、当該処分は「一定の」ものでなければならない。すなわち、処分の内容はある程度特定されたものでなければならない。A◯

 

[要件]Q219 さらに、当該処分がなされないことにより「重大な損害」を生ずるおそれがなければならない。A◯【フォロー】重大な損害の有無を判断するにあたっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとされている。37の2②。

 

[要件]Q220 最後に、「損害を避けるため他に適当な方法」がないことが要件とされている。A◯【フォロー】立法関係者によれば、①特別の権利救済手段が法律で設けられている場合(課税処分について国税通則法23条による救済手段が法律で設けられている場合)、②不利益処分について取消訴訟による救済が可能な場合、③申請型義務付け訴訟の提起が可能な場合などがこれに当たる。

 

[要件]Q221 違法建築物に対する是正命令(建基9①)については、建築主に対する民事訴訟(差止訴訟等)も可能であるが、このような民事訴訟は「適当な方法」には当たらない。A◯

 

〈判決〉

[大]Q222 義務付け判決が下された場合、【被告行政側は当該処分を行わなければ】ならない。A◯

 

[大]Q223 取消判決の第三者効(32①)の規定は準用されていない。A◯【フォロー/例】Aが、特定行政庁を被告として、隣地所有者Bの建築物に対する是正命令の義務付け訴訟を提起した場合、【勝訴判決を得たとしても、Bには判決の効力が及ばない】。A◯

 

〈渋谷マンション訴訟〉

[判]Q224 行訴法37条の2第1項にいう、「重大な損害を生じるおそれ」があることとは、義務付けの訴えによって救済されることが必要であると主張する原告自身に「重大な損害を生ずるおそれ」があることをいい、第三者に損害が生ずるおそれがある場合を含まないと解すべき。A◯【フォロー】東京地判平成19.9.7。