行政法[基本的事項]① ©︎seize the dream 2023

2023.4.21 Q1〜112

 

〈行政法上の法律関係における民事法の適用〉

 

[短]〈判〉Q1 【国税滞納処分としての土地の差押え及び公売処分】について、民法177条の適用を認めている。A◯ 【フォロー】最判昭和35.3.31 百Ⅰ 9。

 

〈特別権力関係論〉

[定]Q2 特別権力関係。A特別の法律上の原因に基づいて、特定の行政目的を達成するため、一方が他方を包括的に支配し、他方がこれに服従する義務を負うことを内容とする関係を意味する。

 

[基]Q3 特別権力関係論のような反法治主義的な法理は、法律化が不徹底で訴訟制度も不完全であった立憲君主制の遺物であり、現行の日本国憲法の下、今日では基本的に妥当し得ない。A◯【フォロー/修】特別権力関係論は、現行日本国憲法下においても妥当する。→×

 

〈行政機関〉

[定]Q4 行政機関。A行政主体のための事務が配分される単位。

 

〈行政庁と補助機関〜行政機関の権限による分配〉

[基]Q5 行政機関は、その権限の観点から、行政庁と補助機関とに大別され、さらに、付随的に執行機関が挙げられる。A◯

 

〈行政庁〉

[基]Q6 行政庁とは、行政主体のために意思・判断を決定して、私人に表示する権限を有する行政機関を意味する。A◯ 【フォロー】行政庁は、行政機関の中で最も重要な意味を持つ。

 

〈補助機関〉

[定]Q7 補助機関。A行政庁の意思形成・判断決定や表示行為を直接・間接に補助する権限を有するにとどまる行政機関を指す。

 

[基]Q8 諮問機関の答申等は、諮問をした当該行政庁に「尊重」を要求するにとどまるが、参与機関(電波監理審議会、検察官適格審査会等)の答申等は当該行政庁を拘束する。A◯

 

〈執行機関〉

[定]Q9 執行機関。A行政庁の決定したことを現実に執行するなど、私人に対して実力を行使する権限を有する機関を指す。

 

〈権限の委任〉

[基]Q10 委任された権限は、受任機関(副知事)の権限となり、その限りで、委任機関は権限を失う。A◯

 

〈権限の代理〉

[基]Q11 ある機関(知事)の権限を当該行政機関の本来の担当者以外の者(副知事A)が行使する。当該権限は、被代理機関の名(知事名)において、しかも、原則、同時に代表者(副知事A)による代理行使であることを示した上で、行われる。A◯

 

〈権限の専決・代決〉

[定]Q12 権限の専決・代決。A専ら行政組織内部限りで行われる決定権限の移譲・代行を指す。

 

[定]Q13 専決。A法令上の権限を有する機関の在・不在を問わず恒常的に行われる。

 

[定]Q14 代決。A原則、【不在の場合】に行われるのが代決。【フォロー】専決は決定権限の内部委任、代決は内部代理。【フォロー2】決裁後の私人(組織外部)に対する権限行使は、法令上の権限を有する機関の名で行われる。

 

〈法律による行政の原理〉

[定]Q15 法律による行政の原理。A行政活動は、法律に基づき、かつ、法律を定めを守って行わなければならないということ。【フォロー】具体的には、3つの原則(①法律による「法規」創設、②法律の優位、③法律の留保)。

 

[定]Q16 法律による「法規」創設の原則。A法規を新たに創設するのは、法律の役割であり、行政機関は法律の委任に依らずして「法規」を定めることはできない。

 

[定]Q17 法律の優位の原則。A行政機関は、法律に従わなければならず、法律に反する行政活動は許されないというもの。【フォロー】⑴権力分立下、立法府の意思が行政府の意思に優越することを意味する。また、⑵行政活動を規制する法律の定めは、別段の明文の規定がない限り、任意規定ではなく、行政が当然に遵守しなければならない「強行規定」あることをも含意している。

 

[定]Q18 法律の留保の原則。A行政機関の行政組織外部に向けられた活動には、法律の根拠が必要であること。

 

〈法律の留保の原則〉

[基]Q19 侵害留保説は、私人の権利・自由を「規制」する権力行政には、法律の根拠が必須とするもので、自由主義に根ざす伝統的な発想に支えられている。A◯

 

[判]Q20 当時、浦安町においては漁港管理規程が制定されなかったのであるから、上告人が浦安漁港の管理者たる同町の町長として、本件鉄杭撤去を強行したことは、漁港法の規定に違反しており、これにつき行政代執行に基づく代執行として適法性を肯定する余地はない。A◯【フォロー】最判平成3.3.8 百Ⅰ 103(旧版)、浦安漁港鉄杭撤去事件。

 

[判]Q21 一般に、行政機関は、その任務ないし所掌事務の範囲内において、一定の行政目的を実現するため、特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言等をすることができる。A◯

【フォロー】最大判平成7.2.22 百Ⅰ 22。

 

〈裁判による行政の統制〉

Q22 法律上の争訟。A当事者間の具体的権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつそれが法令の適用により終局的に解決することができるもの。【フォロー】最判昭和56.4.7 板曼荼羅事件。

 

〈信義則・信頼保護の原則〉

[判]Q23 右施策が変更されることにより、社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合に、地方公共団体において右損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく、施策を変更することは、それがやむを得ない客観的事情によるものでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の不法行為責任を生ぜしめる。A◯【フォロー】最判昭和56.1.27 百Ⅰ 27(旧版)。

 

〈権利濫用の禁止原則〉

[判]Q24 本件児童遊園設置認可処分は行政権の著しい濫用によるものとして違法であり、かつ、右認可処分とこれを根拠としてされた本件営業許可処分によって被上告人Xが被った損害との間には相当因果関係がある。A◯【フォロー】最判昭和53.5.26 百Ⅰ 31(旧版)。余目町国家賠償請求事件。

 

〈行政立法の実体的統制〉

[判]Q25 銃砲刀剣類登録規則4条2項は、銃砲刀剣所持取締法14条の委任の範囲を超えていない。A◯【フォロー】最判平成2.2.1 百Ⅰ 47(旧版)。

 

[判]Q26 監獄法施行規則120条の規定は、たとえ事物を弁別する能力の未発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、監獄法50条の委任の範囲を超える。【フォロー】最判平成3.7.9 百Ⅰ 48(旧版)。監獄法施行規則事件。

 

〈行政規則〉

[定]Q27 行政規則。A行政機関の定立する法的定めで、私人との関係で権利・義務に係る効果を有しないものであり、訓令・通達、要綱などの形式で定められる。

 

〈行政行為〉

[定]Q28 行政行為。A行政作用のうち、具体的事情について対外的な法効果をもってなす権力的行為である。A◯【フォロー/特殊な効力】行政行為は、それが当然に無効である場合を除いて、肯定力・自力執行力・不可争力・不可変更力という、私法上の法律行為には 見られない特殊な効力を有すると言われている。

 

〈公定力〉

[判]Q29 行政行為は、たとえ違法であっても、無効と認められる場合でない限り、権限ある行政庁又は裁判所がそれを取り消すまでは、一応効力のあるものとして適用し、相手方はもちろん、他の行政庁、裁判所、その他の第三者もその効力を承認しなければならないという、特殊な効力を有するとされている。【フォロー】最判昭和30.12.26 百Ⅰ 66(旧版)。

 

〈不可争力〉

[定]Q30 不可争力。A行政上の不服申し立てや取消訴訟には、それぞれ短期の争訟提起期間が設けられており、その期間経過後は、もはや正規の争訟手続を経て行政行為の効力を争うことができなくなること。

 

〈自力執行力〉

[基]〈定〉Q31 行政庁は、行政行為によって課された義務内容を、裁判所の強制執行手続を経ることなしに、自力で実現できることがある。このことを称して行政行為には自力執行力があるという。A◯

 

〈不可変更力〉

[定]Q32 行政行為のうち、行政上の不服申し立てに対する採決・決定のような争訟裁断行為には、行政庁が職権で取消し・撤回・変更をなし得ないという効力が生じる。その効力をいう。

 

〈行政行為の附款〉

[定]Q33 行政行為の附款。A行政庁により行政行為の本体たる法効果内容に付加された付随的効果内容である。【フォロー/種類】①条件、②期限、③負担、④撤回権の留保。

 

〈附款の種類〉

[定]Q34 条件。A行政行為の法効果の発生・消滅を将来発生不確実な事実に関わらしめる附款で、【効果発生の条件を停止条件】といい、【効果消滅の条件を解除条件】という。

 

[定]Q33 期限。A行政行為の法効果の発生・消滅を将来発生確実な事実に関わらしめる附款で、効果発生の期限を始期といい、効果消滅の期限を終期という。

 

[定]Q34 負担。A行政行為本体に付加して特別の義務を課す附款である。

 

[定]Q35 撤回権の留保。A一定の事由がある場合に行政行為本体を撤回する可能性があることを予め明らかにしておく附款である。

 

〈行政行為の効力の発生〉

[基]Q36 行政行為は、原則、意思表示の一般法理に則って名宛人に到着したときに効力が生ずる。A◯【フォロー】最判昭和29.8.24。

 

〈行政行為の効力の消滅〉

[判]Q37 競願関係において拒否処分を受けた原告が提起する取消訴訟の対象は、①自己に対する申請拒否処分と②訴外第三者に対する申請応諾処分のいずれでもよい。A◯【フォロー】最判昭和43.12.24 百II 178(旧版)。

 

〈行政行為の取消しと撤回〉

[定]Q38 撤回。A後発的に何らかの事由が生じたためにその効力を存続させることが公益上適切でない行政行為を、その後、後発的事由を根拠に効力を失わせること。

 

〈申請に対する処分手続/審査基準の設定と公開〉

[基]Q39 行政庁は、申請により求められた行政行為をするかどうかを法令の定めに従って判断するために必要な基準(審査基準)をできるだけ具体的に設定する義務を負う。A◯【フォロー】行手5①②。

 

[基]Q40 審査基準には、法令の解釈に係る解釈基準と、法令により与えられた行政庁の裁量判断に係る裁量基準の両方が含まれると考えられるが、いずれも行政規則たる性質を持つことに変わりはない。A◯

 

[判]Q41 行政庁は、審査基準に厳格に拘束されるのではなく、個別事案の特性に配慮した判断や基準の柔軟な適用も許される。A◯【フォロー】最判平成10.7.16 百Ⅰ 76。

 

[大]Q42 審査基準を新たに設定する際には、意見公募手続を採ることを要する。A◯【フォロー】39条以下。

 

〈申請拒否処分についての理由の提示〉

[大]Q44 【申請拒否処分】をする場合には、原則、その処分と同時に、その【理由を提示】しなければならない。A◯【フォロー】8①。

 

[判]Q45 単に「旅券法13条1項5号に該当する」と付記されているに過ぎない本件一般旅券発給拒否処分の通知書は、同法14条の定める理由付記の要件を欠くものという他なく、本件一般旅券発給拒否処分に右違法があることを理由としてその取消しを求める上告人の本訴請求は正当として認容すべきである。A◯【フォロー】最判昭和60.1.22。百Ⅰ 125(旧版)。旅券発給拒否事件。

 

〈不利益処分手続〉

[大]Q46 行政手続法は、①処分基準の設定と公開、②名宛人となるべき者の意見陳述のための手続としての、聴聞と弁明の機会の付与、③処分理由の提示の3種を定めている。A◯

【フォロー】12、13、14。

 

〈処分基準の設定と公開〉

[大]Q47 不利益的行為についても、そうした行政行為をするかどうか、またするとした場合どのような行為をするかどうかに関する処分(処分基準)を設定し、これを公にするよう努めなければならない。A◯【フォロー】12①。この基準は、当該行為の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない(12②)。

 

[基]Q48 審査基準は、その設定義務を課されているのに対し処分基準の設定は努力義務にとどまっている。その理由。A処分の性質上、予め具体的基準として画一的に定めるのが困難なものであり、また、処分基準を公にすることは違法行為を助長する虞もあるため。

 

〈名宛人の意見陳述の手続〉

[基]Q49 聴聞手続は、許可等の取消処分や名宛人の資格・地位の剥奪処分など不利益性の大きい処分に関する意見陳述手続であり、口頭審査を原則とする。A◯

 

[基]Q50 弁明手続は、業務改善命令や許認可の停止処分など、不利益のより軽い行政行為のなす際に行われる手続で、書面審査を原則とする。A◯

 

〈聴聞手続/名宛人への聴聞の通知〉

[大]Q51 聴聞手続の通知書には、予定される不利益的行為の内容と根拠法令の条項、処分原因事実などの所定の事項が記載されなければならない。A◯【フォロー】15①。

 

[大]Q52 聴聞手続において名宛人に反論等をする準備をさせるためであるから、名宛人の攻撃・防御を実効あらしめるため、実際に聴聞を行う期日まで相当の期間を置かなければならない。A◯【フォロー】15①。

 

[大]Q53 聴聞通知を受けた者は、聴聞手続において「当事者」として位置づけられる。A◯【フォロー】16①。

 

〈当事者の資料閲覧権〉

[大]Q54 当事者は、聴聞通知から聴聞終結までの間、行政庁に対し、当該事案に関する調査結果に係る調書その他の処分原因事実を証する資料の閲覧権を有する。A◯【フォロー】18①。

 

[大]Q55 行政庁は、第三者の利益を害するなど正当な理由がなければこの閲覧請求を拒めないが、この閲覧拒否処分に対しては、当事者や参加人は、不服申し立てをすることができない。A◯【フォロー】27①、17。

 

〈聴聞期日の審理〉

[大]Q56 聴聞期日の審理は、聴聞主宰者が主宰する。A◯【フォロー】19①。

 

[大]Q57 主宰者は、原則、行政庁の指名する職員がこれにあたる。A◯

 

[大]Q58 聴聞の審理の公正さを担保するための【一定の除斥事由】が定められている。A◯【フォロー】19②。

 

[大]Q59 聴聞の審理の冒頭、行政庁の職員が予定される不利益処分の内容・根拠法条・原因事実を説明し、当事者は、これに対して意見を述べ、証拠書類等を提出し、行政庁の職員に質問をすることができる。A◯【フォロー】20①②。

 

[大]Q60 【聴聞の審理】は、原則、【非公開】で行われる。A◯

 

[大]Q61 主宰者は、審理の結果、必要があれば他日に聴聞を続行し、必要がなければ聴聞を終結する。A◯【フォロー】22①。

 

〈利害関係人の参加〉

[大]Q62 不利益処分に関わる利害関係人は、聴聞手続に参加することができ、また参加を求められることがある。A◯【フォロー】17①。

 

[大]Q63 聴聞手続の参加人は、当事者と同じではないが、それに準ずる手続上の地位を与えられる。A◯【フォロー】18〜24。

 

〈聴聞調書・報告書による決定〉

[大]Q64 聴聞の主宰者は、聴聞期日ごとに聴聞調書を作成し、かつ、聴聞終結後、当事者の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、聴聞調書と共に行政庁に提出する。A◯【フォロー】24。

 

〈弁明手続/名宛人への通知〉

[大]Q65 弁明手続の通知書には、予定される不利益的行政行為の内容と根拠法令の条項、処分原因事実、弁明書の提出先と提出期限が記載されなければならない。A◯【フォロー】30。

 

[大]Q66 弁明手続の通知書の記載は、弁明手続において名宛人に反論等をする準備をさせるためであるから、名宛人への攻撃・防御を実効あらしめるため、提出期限まで相当の期間を置かなければならない。A◯【フォロー】30。

 

〈弁明の方式〉

[大]Q67 弁明は、原則、弁明書の提出をもって行い、書面審理主義が採られている。A◯【フォロー】29①

 

[大]Q68 弁明書の提出に合わせて証拠書類等を提出することもできる。A◯【フォロー】29②。

 

[大]Q69 主宰者が聴聞を主宰し、調書及び報告書を作成して行政庁がこれを基に処分を決定する仕組みは、【弁明手続には定められていない】。A◯【フォロー】行手法の趣旨目的に照らせば、行政庁は、弁明手続の結果を十分に考慮して決定を下す義務を負うものと解すべき。

 

〈理由の提示〉

[大]Q70 【不利益的行政行為をなす】場合には、名宛人に、原則、処分と同時に、その理由を提示しなければならない。A◯【フォロー/例外】14。14条1項但書(差し迫った事由有)と14条2項(困難な事由有)に例外有。

 

〈行政行為の瑕疵/種類〉

[大]Q71 行政行為の瑕疵には、その程度に応じて、①不当=取消事由、②違法=取消事由、③違法=無効事由の3種類がある。A◯

 

〈行政行為の無効と取消しの区別〉

[意義]Q72 行政行為の無効と取消しを区別する意義。A争訟手段との関連にあり、取消しと区別して無効概念を置く意味は、取消訴訟の出訴期間徒過後でも、別の手続(無効確認訴訟、無効前提民事訴訟=争点訴訟など)において、当該無効の主張を認めることにより、国民の権利救済を確保することにある。

 

[判]Q73 行政行為の無効と取消しの区別の基準、換言すれば無効事由たる瑕疵の判断基準について、判例は「重大かつ明白説」という重大明白説をとっている。A◯【フォロー】最大判昭和31.7.18。通説も同様。

 

2023.4.22

〈手続の瑕疵の効果〉

[判]Q74 聴聞が不十分であった事案に関し、申請書に主張と証拠の提出の機会を与えその結果を考慮したとすれば、行政庁が先にした判断と異なる判断に到達する可能性がなかったとは言えないとして、申請拒否処分を取り消した。A◯

 

〈行政行為の瑕疵の動態/瑕疵の治癒〉

[定]Q75 行政行為の瑕疵の治癒。A瑕疵ある行政行為でも、その後の行為や事実によって実質的に是正されたと解し得るとか、その瑕疵が軽微でそれを前提に次の手続が進められたような場合には、法的安定性その他の公益的見地からその行為を有効なものとして取り扱うこと。

 

〈違法行為の転換〉

[定]Q76 違法行為の転換。Aある行為が違法ないし無効であっても、これを別個の行政行為として見ると瑕疵がないと認められる場合に、その別個の行政行為として有効に成立しているとみなすこと。

 

〈違法性の承継〉

[定]Q77 違法性の承継。A法令の明文の定めによらず、ある行政行為が違法であることが別の行政行為の違法事由とされることがある。かかる事象を、前者の違法性が後者に承継されるという。

 

〈行政行為の裁量〉

[定]Q78 行政裁量。A法令・条例により行政庁に与えられた独自の最終的判断の余地である。

 

[基]Q79 行政行為は、法令ないし条例の定めに基づいてなされるものであり、その意味で行政行為は、その根拠規範を個別事案に適用する法適用の結果に他ならない。A◯

 

[基]Q80 行政行為をなす行政庁の判断は、①処分根拠法規を中心とする法の解釈②法の適用対象たる個別事実の認定、③当該事案への法の適用、④法適用の結果、行政行為を行うか否か、またどのような内容の行政行為を行うかの決定というプロセスを辿ると考えられる。A◯

 

〈自由裁量と覊束裁量〉

[基]Q81 戦後の判例は、専門技術的判断や政治政策的判断に関わる行政行為を中心に、比較的広く要件裁量を認め、その上で裁量の逸脱濫用の法理を展開してそれを制約するという傾向を辿っている。

 

【フォロー】最判昭和33.7.1(温泉掘削許可)、最判平成5.3.16(第一次教科書裁判)。

 

〈裁量の司法統制の準則〉

[判]Q82 裁量行為の司法審査については、当該処分を行った行政庁と同一の立場に立って当該処分をなすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分を比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく、全く事実の基礎を欠くか又は社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものとされている。A◯【フォロー】最判昭和52.12.30 百Ⅰ 78(旧版)、最判平成8.3.8 百Ⅰ 79(旧版)。

 

〈判断過程の統制の法理〉

[判]Q83 原子炉設置許可処分に係る伊方原発訴訟における原子力委員会等の調査審議・判断の過程、調査審議で用いられた具体的審査基準の合理性などを司法審査の対象とする方法も、判断過程の統制と言える。A◯【フォロー】最判平成4.10.29 百Ⅰ 74(旧版)。

 

〈純粋手続過程の瑕疵の統制〉

[判]Q84 その裁量の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となる。A◯

 

[判]Q85 本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。A◯

 

【フォロー】最判平成18.2.7 呉市学校施設使用不許可事件。

 

〈行政契約〉

[定]Q86 行政契約。A国や地方公共団体などの行政主体が締結する契約を総称して行政契約と呼ぶ。

 

〈行政契約の手続的統制〉

[判]Q87 指名競争入札にあたっての地元企業優先の指名について、そうした指名を行う裁量を認めつつも、およそ村内業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用は、【常に合理性があり裁量の範囲内であるとは言えない】。A◯【フォロー】最判平成18.10.26。

 

〈行政指導〉

[定]Q88 行政指導。A行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。【フォロー】2、6号。

 

〈任意性の確保〉

[判]Q89 右協議の進行状況及び四位の客観的状況により、建築主において建築主事に対し、確認処分を留保されたままでの行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し、当該確認申請に対し直ちに応答すべきことを求めているものと認められるときには、他に前記特段の事情が存在するものと認められない限り、それ以後の右行政指導を理由とする確認処分の留保は、違法となる。A◯【フォロー】最判昭和60.7.16 百Ⅰ 129(旧版)。品川マンション事件。

 

〈行政計画〉

[定]Q90 行政計画。A行政権が一定の公のために目標を設定し、その目標を達成するための手段を総合化しつつ提示した行政活動基準を大まかに指すもの。

 

〈行政計画の実体法的統制〉

[判]Q91 土地区間整理事業は、高度の行政的・技術的裁量によって決定される。A◯【フォロー】最大判昭和41.2.23 百Ⅱ 159(旧版)。

 

〈行政計画の裁判的統制/取消訴訟〉

[判]Q92 事業計画の適否が争われる場合、実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を求めることに合理性がある。A◯【フォロー】浜松市土地区画整理事業計画事件。

 

〈行政調査〉

[定]Q93 行政調査。A行政機関により、行政目的達成のため私人に対して行われる調査活動・情報収集活動である。

 

〈届出制〉

[定]Q94 届出。A行政庁に対し一定の事項の通知をする行為であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているものをいう。

 

〈行政文書・法人文書の管理〉

[大]Q95 行政文書の廃棄については、事前に内閣総理大臣の同意を要することに加え、内閣総理大臣は、保存の必要があると認める場合、廃棄の措置をとらないように行政機関の長に対して求めることができる。【フォロー】8②④。

 

〈情報公開制度/開示請求権者〉

[大]Q96 何人も行政文書の開示を請求できる。自然人・法人の他、法人格なき社団等も含まれ、外国人にも本法による開示請求権が保障されている。A◯【フォロー】法3。

 

〈インカメラ審理〉

[判]Q97 情報公開訴訟において、証拠調べとしてのインカメラ審理を行うことは、訴訟で用いられる証拠は当事者の吟味・弾劾を経たものに限られるという民事訴訟の原則に反するから、【明文の規定がない限り】許されない。A◯【フォロー】最決平成21.1.25

 

〈個人情報保護制度/利用目的の特定義務と保有制限の原則〉

[大]Q98 行政機関は、当該利用目的に必要な範囲を超えて個人情報を保有してはならない。A◯【フォロー】3①②。

 

〈義務履行確保制度〉

[判]Q99 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審査の対象になるものではなく、法律に特別な規定のある場合に限り、提起することが許される。A◯

【フォロー】最判平成14.7.9 百Ⅰ 109(7版)。宝塚市パチンコ店建築中止命令事件。

 

〈代執行〉

[定]Q100 代執行。A本人でなくてもなすことが可能な義務=代替的作為義務に係る行為を、行政庁自らが本人に代わってなし、または第三者にしてもらい、その費用を義務者=本人から徴収する制度。

 

〈代執行の要件〉

[要件]Q101 代執行の要件。A①法律・条例から直接生ずる義務又は法律・条例に基づく行政処分によって課された義務で代替性のあるものを義務者が履行しないこと。②他の手段によってその履行を確保することが困難であること。③その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められること。

 

〈執行罰〉

[定]Q102 執行罰。A義務の不履行に対して、一定期間内に義務を履行しないと、一定額の過料を科すことを予告し、その威嚇・心理的圧迫によって義務を履行させる制度。

 

[基]Q103 執行罰は、金額が低額であると余り効き目がなく、また、同じ金銭罰である事後的な刑罰等によっても実質的に同様な効果が期待できることなどから、現在では、砂防法36条(500万円以内の過料)の規定に痕跡を止めるだけである。A◯

 

[基]Q104 執行罰には、①期限を区切って、繰り返し金銭罰を加えることができること、②基本的に履行の対象となる義務の種類を問わないこと、③刑罰のように司法機関によらずに行政庁独自の権限で比較的簡易に用いることができるものであることなどの利点がある。A◯

 

〈行政罰/行政刑罰〉

[基]Q105 行政刑罰は、【刑罰の一種】であるから、【刑法総則の規定及び刑事訴訟手続の適用対象】となる。A◯【フォロー】裁判所が犯罪事実の認定と刑の量定・宣告を行うもので、その意味で司法的な行政罰と言える。

 

〈行政上の秩序罰〉

[定]Q106 行政上の秩序罰。A行政上の義務の不履行に対する制裁として科される金銭罰としての過料をいう。

 

[基]Q107 過料は刑罰とは異なり比較的簡易な手続で科すことができる点に特色がある。A◯

 

[基]Q108 地方自治法に定めのある地方公共団体の条例・規則に基づく過料については、そのような裁判所の決定を経ることなく、長が過料の処分を行うこととされている。A◯

 

[基]Q109 長が過料の処分を行う際には、事前に相手方私人に告知し・弁明の機会を与えなければならず、相手方私人は、過料の処分に不服があれば、不服申し立ての他、行政訴訟を提起して争うこともできる。A◯

 

〈即時強制〉

[定]Q110 即時強制。A相手方私人に義務を課することなしに、いきなり私人の身体て財産に直接実力を加えて、行政目的の実現を図る作用である。

 

[基]Q111 即時強制においては、強制される行為自体の義務付けが先行するものではない点で、直接強制と異なる。A◯ 

 

[例]Q112 即時強制は、相手方に義務を課して履行を促す時間的余裕がない場合や、それが実際上無意味ないし困難な場合に行われる。A◯