③憲法[基本的事項]③見解 ©︎seize the dream 2023

Q318〜411

 

【16】報道の自由→取材の自由

〈報道の自由/意義〉

[基]Q318 報道は、事実を知らせるものであり、特定の思想を表明するためのものではないが、報道の自由も表現の自由の保障に含まれる。A◯【フォロー】報道のために報道内容の編集という知的な作業が行われる点からも、報道機関の報道が国民の知る権利に奉仕するものとして重要な意義を持つ点からも異論はない。

 

[基]〈判〉Q319 報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するという、博多駅事件での最高裁の指摘は、現代における報道機関の重要性を的確に表現している。A◯

 

〈博多駅事件/最大判昭和44.11.26〉

[判]〈事案〉Q320 事案の特殊性。A米原子力空母寄港(きこう)反対闘争に参加した学生と機動隊員とが博多駅付近で衝突し、機動隊側に過剰警備があったとして付審判請求がなされた。福岡地裁は、テレビ放送会社に、衝突の模様を撮影したテレビフィルムを証拠として提出することを命じたが、放送会社はその命令が報道の自由を侵害するとして争った。

 

[判]〈判旨〉Q321 公正な裁判の要請に基づく提出命令の必要性と取材の自由が妨げられる程度及びこれが報道の自由に及ぼす影響の度合等の事情とを比較衡量して決せられるべきとした。A◯

 

[判]〈判旨〉Q本件フィルムは、過剰警備か否かを判定する上で、殆ど必須のものと認められる程証拠上極めて重要な価値を有するものであること、既に放映済みのものを含む放映のために準備されたものであることなどを指摘して、提出命令を合憲とした。A◯

 

【フォロー/問題点】比較衡量をする際、刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ない場合、報道機関の不利益が必要な限度を超えないよう配慮すべきと言いながら、本件で報道機関が蒙る不利益は、報道の自由そのものではなく,将来の取材の自由が妨げられる虞があるに止まるという程度の低い評価しか与えていない点は、問題である。

 

〈長良川少年推知報道事件/最判平成15.3.14〉

[判]〈判旨〉Q322 その記事等により、不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断すべきである。A◯

 

[判]〈判旨〉Q323 不特定多数の一般人には、少年と面識のない不特定多数の一般人が置かれている。面識等のない不特定多数の一般人には、本件記事から当該少年が本人であるとは推知できないとして損賠請求を否定した。A◯

 

〈取材の自由〉

[判]〈基〉Q324 博多駅事件決定において、報道のための取材の自由も、21条の精神に照らし、十分に尊重に値するとした。A◯

 

〈外務省秘密漏洩事件〜西山記者事件/最決昭和53.5.31〉

[判]〈判旨〉Q325 取材が真に報道の目的であり、手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものであれば、正当な業務行為と言えるが、取材対象者と肉体関係を持つなど、【人格の尊厳を著しく蹂躙した取材行為】は、法秩序全体の精神に照らし社会観念上、到底是認することのできない不相当なものであり、違法である。A◯

 

〈法廷メモ採取事件/最大判平成元.3.8〉

[判]〈事案〉Q326 事案の特殊性。A傍聴人のメモを取る自由が問題となった。

 

[判]〈判旨〉Q327 博多駅事件と同じ論理で、情報摂取の自由を表現の自由の派生原理として位置付け、その補助としてなされるメモを取る自由は、【21条の精神に照らして尊重】されるべきであり、公正かつ円滑な運営を妨げるという特別の事情がない限り、故なく妨げられてはならない。A◯

 

〈石井記者事件/最大判昭和27.8.6〉

[判]〈事案〉Q328 事案の特殊性。A逮捕状の発付に関する情報が、事前に漏れ、新聞に公表されたところ、その記事に関与した記者が情報漏洩者の捜査に関して裁判所に召喚され、証言を拒否したため起訴された。

 

[判]〈判旨〉Q329 比較衡量すら行わず、証言義務を犠牲にしてまで取材源の秘匿を認めることはできないとした。A◯

 

〈放送の自由〉

〈NHK受信料支払拒否事件/最大判平成29.12.6〉

[判]〈判旨〉Q330 放送法64条1項は、NHKによる契約締結の申し込みに対して応諾すべき法的義務を定めた規定であり、任意に応諾しない場合には裁判所による応諾命令により契約が成立するとした。A◯

 

[判]〈問題点〉Q331 問題の所在。A表現を受け取らない自(21①)の侵害とならないか。

 

[判]〈判旨〉Q332 現行放送規制は知る権利を実質的に充足するために採用されたものであり、立法裁量の範囲内だという単純な議論で合憲を導いた。A◯

 

〈インターネット上の表現の自由〉

〈検索エンジン事件/最決平成29.1.31〉

[判]〈判旨〉Q333 本件の逮捕情報が個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益として法的保護の対象になることを認めた。A◯

 

[判]〈判旨〉Q334 逮捕情報を検索結果に表示することが違法となるかどうかは、諸事情の利益衡量により判断すべきであり、当該事実が公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に削除が認められる。A◯

 

〈営利的言論の自由〉

[基]Q335 表現の自由の重点は、自己統治の価値にあるから、言論の自由の保障の程度は、非営利的すなわち政治的言論の自由よりも低いと解される。A◯

 

〈表現の自由の限界/二重の基準の理論/根拠〉

[基]Q336 民主政の過程を支える精神的自由は、「壊れ易く傷つき易い」権利であり、それが不当に制限されている場合には、国民の知る権利が十分に保障されず、民主政の過程そのものが傷つけられているために、裁判所が積極的に介入して民主政の過程の正常な運営を回復することが必要である。A◯

 

【フォロー】精神的自由を規制する立法の合憲性を裁判所が厳格に審査要というのはその意味。

 

[基]Q337 経済的自由の規制については、社会・経済政策の問題が関係することが多く、政策の当否について審査する能力に乏しい裁判所としては、特に明白に違憲と認められない限り、立法府の判断を尊重する態度が望まれる。A◯

 

〈理論の内容〉

[基]Q338 表現の自由の規制立法は、①検閲・事前抑制、②漠然不明確又は過度に広汎な規制、③表現内容規制、④表現内容中立規制という4つの機能に大別される。A◯

 

[定]Q339 表現の内容規制。Aある表現をそれが伝達するメッセージを理由に制限する規制をいう。【フォロー/例】国の秘密情報の公表を禁止する。

 

[定]Q340 表現の内容中立規制。A表現をそれが伝達するメッセージの内容や伝達効果に直接関係なく制限する規制をいう。【フォロー/例】一定地域・建造物での広告表示の禁止。

 

〈事前抑制の理論〉

〈北方ジャーナル事件/最大判昭和61.6.11〉

[判]〈事案〉Q341 事案の特殊性。A北海道知事選に立候補予定の者を批判する記事を掲載した雑誌が、発表前に名誉毀損を理由に差止められた事件。

 

[判]〈判旨〉Q342 事前差止めは原則として許されないけれども、①表現の内容が真実ではなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であって、かつ、②被害者が【重大にして著しく回復困難な損害】を被る虞があるときは、例外的に事前差止めが禁止される。A◯

 

〈岐阜県青少年保護育成条例事件/最判平成元.9.19〉

[判]〈判旨〉Q343 表現の自由との関係については、有害図書が、青少年の性的な逸脱行為や残虐な行為を容認する風潮を助長することは既に社会共通の認識になっていること、自販機の場合は購入が容易なので弊害も大きく、有害指定の前に販売済みも可能であること、などの理由を挙げ、青少年に対する関係はもとより、【成人に対する関係でも】、青少年の健全な育成という目的を達成するための必要やむを得ない制約で、21条1項に反しない。A◯

 

〈税関検査〉

〈税関検査事件/最大判昭和59.12.12〉

[判]〈基〉Q344 税関検査は、検閲に当たらず、また、風俗を害する書籍、図画等の輸入規制は、わいせつ表現物を規制する趣旨だと【限定解釈することができる】ので、明確性に欠けるところはないとした。A◯

 

[判]〈判旨〉〈文解〉Q345 検閲とは、【行政権が主体】となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することをいう。A◯

 

〈教科書検定〉

〈教科書裁判/最判平成5.3.16〉

[判]〈判旨〉Q346 旭川学テ判決を援用し、国に必要かつ相当と認められる範囲内で教育内容を決定する権能があるとした上で、教科書の特殊性を強調し、税関検査判決の説く検閲概念に立って、一審判決と同じ理由で検定の検閲性を否定し、その合憲性を認めた。A◯

 

〈明白性の理論〉

[基]Q347 明白性の理論。A精神的自由を規制する立法は明白でなければならないとすることをいう。

 

〈徳島市公安条例事件/最大判昭和50.9.10〉

[判]〈事案〉Q348 事案の特殊性。A表現の自由との関わりで法文の不明確性が争われた。

 

[判]〈判旨〉Q349 通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかの判断を可能ならしめる基準が読み取れない場合でない限り、「交通秩序を維持すること」という条例の定める許可条件のように、文言は抽象的であっても、右規定は、殊更な交通秩序の阻害をもたらすような行為を避止すべきことを命じているものと解されるとし、合憲である。A◯

 

[判]〈判旨〉Q350 通常の判断能力を有する一般人であれば、経験上、蛇行進・渦巻行進・座り込みや道路一杯を占有するいわゆるフランスデモのような行為が、殊更な交通秩序維持の阻害をもたらすような行為に当たることは容易に想到することができるから、秩序維持についての基準を読み取ることは不可能ではない。A◯

 

【フォロー】市条例が定める「交通秩序を維持すること」という許可条件は、1審と2審の判決では不明確だと判定された。

 

〈明白性が争われたその他の例/福岡県青少年保護育成条例事件/最大判昭和60.10.23〉

[判]〈限解〉Q351 淫行の意味を限定解釈すれば、処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるとも言えないとした。A◯【フォロー/反意】解釈の範囲を超える旨の反対意見有。

 

〈広島市暴走族追放条例事件/最判平成19.9.18〉

[判]〈事案〉Q352 事案の特殊性。A暴走族による集会の規制をした条例が定義規定において、暴走族を暴走行為をすることを目的として結成された集団又は公共の場所において、公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装でい集、集会若しくは示威行為を行う集団(2条7号)と定義したために、憲法で保障された集会まで規制するもので広汎・不明確ではないかが問題とされた。

 

[判]〈判旨〉Q353 条例全体の趣旨や施行規則による限定等を総合すれば規制対象を本来的な暴走族に限定する合憲限定解釈が可能であるとした。A◯【フォロー/反意】合憲限定解釈は、解釈の限界を超えるから許されないとする反対意見が付されている。

 

〈表現内容中立規制/中間審査の基準〉

〈屋外広告物条例事件/最大判昭和43.12.18〉

[判]〈事案〉Q354 事案の特殊性。A橋柱、電柱、電信柱等に広告物を表示・掲出することを禁ずる大阪市条例の合憲性が争われた。

 

[判]〈判旨〉Q355 美観風致の維持と公表に対する危害の防止という立法目的を正当とした上で、この程度の規制は、公共の福祉のため、表現の自由に対し許された必要かつ合理的な制限であるとして合憲性を認めた。A◯【フォロー】営利と関係のない広告でも一律に規制の対象となるとした。

 

[判]〈補意〉Q356 伊藤正己裁判官補足意見。Aそれぞれの事案の具体的な事情に照らし、広告物の数量・形状や、掲出の仕方等を総合的に考慮し、その地域の美観風致の侵害の程度と掲出された広告物に現れた表現の持つ価値とを比較衡量した結果、後者の利益が前者の利益に優越する場合に、条例の定める刑罰を科することは、適用において違憲となる。【フォロー/注目】判例と異なる考え方を示した。

 

2023.5.22

〈国会〉

〈権力分立制の現代的変容〉

[基]Q346 権力分立制は、①20世紀の積極国家・社会国家の要請に伴い、行政活動の役割が増大し、行政権が肥大し、法の執行機関である行政府が国の基本政策の結成に事実上主導的な役割を演ずる政党国家現象が顕著になっていること、②国民と議会を媒介する組織として政党が発達し、政党が国家意思の形成に事実上主導的な役割を演じる政党国会現象が生じており、伝統的な議会と政府の関係は、【政府・与党と野党の対抗関係へと機能的に変化】している。A◯

 

〈政党〉

[基]Q347 日本国憲法は、政党について規定しそれに特別の地位を与えていないが、結社の自由を保障し議員内閣制を採用しているので、【政党の存在を当然のこととして予想】している。A◯

 

【フォロー】政党を【承認・合法化】した段階。【フォロー2/注意】政党を憲法法制度に中に編入はしていない。

 

〈国会の地位〉

[基]Q348 国会は、憲法上、①国民の代表機関、②国権の最高機関、③唯一の立法機関という3つの地位を有する。A◯

 

〈国民の代表機関/政治的代表〉

〈日本新党繰上げ事件/最判平成7.5.25〉

[判]〈事案〉Q349 事案の特殊性。A参議院議員選挙の比例代表選出において、ある政党の候補者名簿に登載され時点で落選した者が、約1年後に党から除名されたため、その直後に右政党の参議院議員2名の欠員が生じたにも拘らず、下位の名簿登載順位の者が繰上げ当選とされたので、その中央選挙会の決定を争った。

 

[判]〈判旨〉Q350 除名処分の当否は、司法の介入できない【政党の自律的解決】に委ねられているとし、その不存在又は無効を理由とする当選無効は認められない。A◯

 

【20】41条国権の最高機関→政治的美称説など

〈国権の最高機関/意義〉

〈統轄機関説〉

[学説]〈内容〉Q351 統轄機関説内容。A最高機関の意味を法的意味に解釈し、国会は国政全般を統轄する機関であり、他の国家機関の活動を監視する地位に立つ。

 

[学説]〈理由〉Q352 同説理由。A①国家の目的達成のためには統轄機関が必要である。②国民全体を国権の源泉とする日本国憲法において、国会が国権の統合機関である。

 

[学説]〈批判〉Q353 同説批判。A①国家活動を創設したり、国政を終局的に決定するのは国民の任務であり、国会を国権の最高決定権者とするのは主権者である国民との関係では妥当ではない。

 

〈政治的美称説〉

[学説]〈内容〉Q354 政治的美称説内容。A国会が主権者である国民によって直接選任され、その点で国民に直結しており、国政の中心的地位を占める機関であることを強調する【政治的美称】である。

 

[学説]〈理由〉Q355 同説理由。A内閣・裁判所もそれぞれが相当する権限については他の機関の命令に服しないという意味で、最高機関である。

 

[学説]〈批判〉Q355 同説批判。A国会の最高機関を政治的意味に理解することによって、結果的に行政権優位現象の拡大に対して、有効な理論的歯止めを果たしていない。A◯

 

【21】⭐️41条唯一の立法機関→国会中心立法の原則、国会単独立法の原則

 

【重複/①有】〈国会中心立法の原則と国会単独立法の原則〉

 

[定]Q356 国会中心立法の原則。A国会が「唯一」の立法機関であるとは、実質的意味の立法は、専ら国会が定めなければならないことをいう。すなわち、国会による立法以外の【実質的意味の立法】は、【憲法に特別な定めがある場合を除いて許さない】ことをいう。【フォロー/例外】議員規則、最高裁判所規則。

 

//〈立法の委任〉

[基]Q87国会中心立法の原則によれば、国会だけが実質的意味の法律を制定することができる。A◯//

 

//〈実質的意味の立法の「実質」〉

〈最大判平成4.7.1 成田新法事件〉

[判](Q86)権利を制限する手続についても法律で定められている必要があると考えられている。31条は刑事手続についてこの点を明記するが手続の法定という要請は行政手続についても及ぶと解されている。A◯//

 

[定]Q357 国会単独立法の原則。A国会による立法は、国会以外の機関の参与を必要としないで成立することをいう。【フォロー/例外】95条、一の地方に適用される特別法の制定。

 

//〈国会単独立法の原則と立法の手続〉

〈法律案の発議・提案〉

[基](Q88)72条で「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出」することを定めていて、議案に法律案を含むか否かは明らかではない。対して、内閣法5条は内閣の法律案提出権を明示している。A◯//

 

〈国会議員の地位/不逮捕特権〉

[基]Q358 50条の「法律の定める場合」とは、院外における現行犯の場合と、議員の所属する議院の許諾がある場合である。A◯【フォロー】国会法33、34。

 

〈発言の免責特権〉

[基]Q359 51条の「責任」は、民事・刑事の責任の他、弁護士等の懲戒責任を含むが、政党が党員たる議員の発言・表決について、除名等の責任を問うことは差し支えない。A◯

 

[判]Q360 議員が職務と無関係に違法又は不当な目的をもって事実を摘示(てきし)し、あるいは、敢えて虚偽に事実を摘示して、国の賠償を求めることができる場合もある。A◯【フォロー】最判平成9.9.9。

 

〈国会の活動/会期〉

[基]Q361 緊急集会は内閣のみ求めることができる。A◯【フォロー/ゴロ】緊急内閣。

 

[基]Q362 緊急集会でとられた措置は、臨時のもので、次の国会開会の10日以内に、衆議院の同意がない場合には、将来的に、その効力を失う。A◯【フォロー/修】遡及効→×、国会の同意→×、2週間以内→×

 

〈会議の原則/公開〉

[基]Q363 両議院の会議は公開である。もっとも、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、【秘密会】を開くことができる。公開とは、【傍聴の自由は元より、報道の自由が認められる】ことをいう。本会議とは異なり、【委員会は完全な公開ではない】。A◯【フォロー】57①、国会52。

 

〈議員の権能/議院自律権〉

〈議員懲罰権〉

[基]Q364 58条2項にいう「院内」とは、議事堂という建物の内部に限られず、議場外の行為でも、会議の運営に関連し、又は、議員として行った行為で、議員の品位を傷つけ、院内の秩序をみだすことに相当因果関のあるものは、懲罰の対象となる。A◯【フォロー】議場外の行為で、会議の運営と関係のない【個人的行為は懲罰の事由にならない】。

 

【22】⭐️条約→憲法優位説 条約優位説

 

【重複/①有】〈憲法と条約の関係〉

 

//〈憲法と条約の関係〉

[基](Q39)日本の実務は、条約は原則、そのままで国内法上の効力も有するとの立場を採っている。A◯

 

[学説](Q40)憲法優位説からは、憲法改正よりもはるかに緩い承認手続しかない条約(61)によって憲法の内容が改変されるのは承認し難いとの批判がある。A◯

 

[基](Q41)締約国の国内法に抵触する条約が直ちに国際法上無効となるわけではない。A◯

 

[判](Q42)条約が違憲なりや否やの法的判断の対象となることや、裁判所がその審査権を原則として有することは、砂川事件判決において当然の前提とされていた。A◯

【フォロー】最大判昭和34.12.16。砂川事件。//

 

【重複/①有】〈条約締結承認権〉

 

//〈国会の承認を必要とする条約の範囲〉

[基](Q98)文書による国家間の合意全てについて国会の承認が必要であるとは考えられていない。A◯【フォロー/理】条約には早急な実施が必要なものもあるが、国会の承認手続には時間がかかり、また、条約には専門的・技術的なものであることから、全ての条約について国会の承認を要求することは現実的ではないから。

 

〈国会が事後承認を拒否した場合の条約の効力〉

[基](Q99)国会が条約を修正して承認することができるかが議論されることがあるが、国会が修正したということは、提案された条約については拒否したということになる。A◯【フォロー/留保】これまで【国会が条約承認を否決した事例も、修正して承認した事例もない】。【フォロー/修】国会が条約承認を否決した事例はないが、修正して承認した事例はある→×。//

 

〈内閣/総辞職〉

[基]Q365 70条にいう「内閣総理大臣が欠けたとき」とは、死亡した場合、総理大臣となる資格を失ってその地位を離れた場合の他、総辞職した場合をも含む。A◯【フォロー/修】死亡、資格喪失の場合のをいい、総辞職した場合は含まない。→×

 

[基]Q366 生死不明の場合は、暫定的な故障なので、いわゆる副総理が臨時に職務を代行する。A◯

 

[基]Q367 総辞職した内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。A◯

 

【23】⭐️解散の根拠→7条、65条、69条説。

〈衆議院の解散〉

[前提]Q368 日本国憲法には、内閣の解散権を明示した規定はない。A◯

 

〈7条説〉

[基]Q369 7条3号は、天皇の国事行為の一つとして衆議院の解散を挙げているが、天皇が実質的に決定する訳ではない。A◯

 

〈69条説〉

[基]Q370 69条の内閣不信任決議に基づく解散も、解散を正面から規定したものではない。A◯

 

〈解散権論争〉

[基]Q371 現在では、7条によって内閣に実質的な解散決定権が存するという慣行が成立している。A◯

 

【重複/①有】〈衆議院の解散〉

 

//〈制度説〉

[学説]〈根拠〉(Q115)制度説。A【議院内閣制や権力分立制の趣旨】から内閣の解散権を導く見解である。【フォロー/理解】議会と内閣の均衡、議会の専制の防止という観点から考えると、内閣が自由な解散権を持つ方がよりよいという、帰結の有用性から解散を正当化する見解と理解できる。

 

[学説]〈批判〉(Q116)同説批判。A制度説の根拠とする権力分立制、議員内閣制がそれ程一義的な原則ではないので、それから内閣の自由な解散権を導くのは困難ではないかと批判される。

 

〈69条限定説〉

[学説]〈根拠〉(Q117)69条限定説は、他説(制度説、7条説)を批判した上で、政府の解散権がどのような場合に認められるかという問題は、いわば法の欠缺であるとし、憲法が明示していない権限を解釈によって政府に付与すべきではないと説く。A◯

 

[学説]〈批判〉(Q118)同説批判。A政党内閣制の下では多数党の支える内閣に対し不信任決議が成立する可能性は稀であるため、解散権を行使できる場合が著しく限定されてしまうと批判される。

 

〈7条説〉

[学説]〈根拠〉(Q119)7条説根拠。A7条説は、内閣の助言と承認は実質的決定権を含む場合があるとする見解である。7条3号の衆議院の解散という国事行為に対する内閣の助言と承認を根拠として、内閣の自由な解散決定権が認められるとする。

 

[学説]〈批判〉(Q120)同説批判。A7条に言う「助言と承認」は【内閣による実質的決定権を含まない場合と含む場合の二つが存在】することになり、その点で問題であると批判される。//

 

//〈苫米地事件/最大判昭和35.6.8〉

[判]〈事案〉(Q121)事案の特殊性。A1952年の抜き打ち解散の際に、野党・改進党の前衆議院議員の苫米地義三が解散は無効であると主張して解散から任期満了までの歳費の支払いを求めて提訴した。

 

[判]〈判旨〉(Q122)衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、その法律上の有効無効を審査することは裁判所の審査権の外にあるとした。それゆえに、政府の見解を否定して、本件解散を憲法上無効のものとすることはできないとした。A◯

 

[判]〈判旨〉(Q123) 直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為の如きは、たとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。A◯//

 

〈司法権/法律上の争訟〉

[基]〈分解〉Q372 裁判所法3条にいう「法律上の争訟」とは、①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、②それが法律を適用することにより終局的に解決することができるものに限られる。A◯

 

[基]Q373 法律上の争訟に当たらず、裁判所の審査権が及ばない場合又は事項として、①具体的事件性もないのに、抽象的に法令の解釈又は効力について争うこと。例えば、警察予備隊の違憲性を争った事件が挙げられる。A◯

 

[基]Q374 ②単なる事実の存否、個人の主権的違憲の当否、学問上・技術上の論争など。例えば、国家試験における合格・不合格の判定は、学問又は技術上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、試験実施機関の最終判断に委せられ、裁判の対象にならない。A◯【フォロー】富山大学事件。最判昭和41.2.8

 

[基]Q375 ③純然たる信仰の価値又は宗教上の教義に関する判断自体を求める訴え、あるいは、単なる宗教上の地位、例えば住職たる地位の確認の訴えである。これらは具体的な法律関係に関する問題ではなく、法規の適用によって終局的に解決すべき法律上の争訟に当たらない。A◯

 

[基]Q376 宗教上の教義にわたるなど本来その自治によって決定すべき事項については裁判所は実体的な審理判断を行わず、自治に対する介入にわたらない。A【フォロー】住職の選任ないし罷免の手続上の問題についてのみ、審理判断することが許される。

 

〈板曼荼羅事件/最判昭和56.4.7〉

[判]〈事案〉Q377 事案の特殊性。A創価学会の元会員である原告が、創価学会に対して寄付金の返還を求めた。

 

[判]〈判旨〉Q388 訴訟は、形式的には具体的な権利義務関係ないし法律関係に関する紛争であるが、その前提として信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断を行わなければならず、結局、訴訟は実質的には法令の適用による終局的解決の不可能なものであるから、法律上の争訟に当たらない。A◯

 

〈司法権の限界/自律権に属する行為〉

〈警察法改正無効事件/最大判昭和37.3.7〉

[判]〈事案〉Q389 事案の特殊性。A昭和29年に成立した新警察法は、その審議に当たり、野党議員の強硬な反対のため、議場混乱のまま可決されたものとされたが、その議決が無効ではないかが争われた。

 

[判]〈判旨〉Q390 警察法が、両院において議決を経たものとされ、適法な手続によって公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重すべく同法制定の議事手続に関する事実を審理してその有効無効を判断すべきではない。A◯

 

〈統治行為〉

[定]Q391 統治行為。A直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為で、法律上の争訟として裁判所による法律的な判断が理論的には可能であるのに、事柄の性質上、司法審査の対象から除外される行為をいう。A◯

 

〈砂川事件〉

[判]〈判旨〉Q392 安保条約にような主権国として我が国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有する条約か否かは、内閣・国会の高度の政治性ないし自由裁量的判断と表裏をなす点が少なくないので、【一見極めて違憲無効であると認められない限り】は、裁判所の【司法審査権の範囲外】のものである。A◯

【フォロー】一見極めて明白に違憲無効の場合には、司法審査は可能である。

 

〈苫米地事件/最大判昭和35.6.8〉

[判]〈事案〉Q393 事案の特殊性。A衆議院議員苫米地義三が、1952年8月28日のいわゆる抜き打ち解散の効力につき、①解散は69条にいう内閣不信任決議を前提とすべきであるのに右解散は7条を根拠に行われたこと、②右解散の決定には適法な閣議決定を欠いていたことを理由に争った。

 

[判]〈判旨〉Q394 衆議院の解散が統治行為に当たるとし、この司法に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等に鑑み、特定の明文による規定はないけれども、【司法権の憲法上の本質に内在する制約】と理解すべきものである。A◯

 

〈団体の内部事項に関する行為〉

〈地方議会/除名処分〉

[判]〈判旨〉Q395 除名は、議員の身分の喪失に関する重大な事項で、単なる内部規律の問題に止まらないから、司法審査が及ぶ。A◯【フォロー】最大判昭和35.10.19

 

〈大学〉

〈富山大学事件/最判昭和52.3.1〉

[判]〈判旨〉Q396 単位授与行為は、他にそれが【一般市民法秩序と直接関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情】のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的判断に委ねるべきものであって、司法審査の対象にはならない。A◯

 

[判]〈判旨〉Q397 学生が専攻科修了の要件を充足したにも拘らず、大学がその認定をしないときは、一般市民として有する公の施設を利用する権利が侵害されたことになるので、司法審査の対象になる。A◯

 

〈政党〉

〈共産党袴田事件/最判昭和63.12.20〉

[判]〈事案〉Q398 事案の特殊性。A党員の除名処分の効力が争われた。

 

[判]〈判旨〉Q399 政党の除名処分が一般市民法秩序と直接関係を有しない内部的な問題に止まる限り、裁判所の審判権は及ばないが、一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の【自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段に事情】がない限り、右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則ってなされたか否かによって決すべきである。A◯

 

〈裁判員制度〉

〈裁判員制度の合憲性/最大判平成23.11.16〉

[判]Q400 裁判員が加わった裁判所は、憲法32条、37条1項の保障する裁判所による裁判と言えるかについて、憲法は下級裁判所が裁判官のみにより構成されることを命じていないとした。A◯

 

[判]Q401 裁判官が裁判員の意見に拘束されるのは、裁判官の職権の独立を保障した76条3項に反するのではないかについては、裁判員の多数の意見と異なることがあるとしても、国民の司法参加を認めた結果であり、しかも多数決で有罪とするには、少なくとも1人の裁判官の賛成が必要であるとされており、被告人の人権に対する配慮もされているから、裁判員制度を定める法律は合憲であり、裁判官は合憲の法律に拘束されるに過ぎず職権行使の独立性は侵害されない。A◯

 

[判]Q402 国民に裁判員となることを強制するのは、苦役を課すものであり、18条後段に反するのではないかについては、裁判員の職務は参政権と同様の権限を国民に付与するものであり、苦役とは言えない。A◯

 

【24】予算の法的性格→予算法規範説、予算法律説

〈財政〉

 

【重複/①有】〈予算の法的性格〉

//[定](Q92)予算。A一会計年度における国の財政行為の準則をいう。【フォロー】歳入と歳出は、全て予算に編入される(財14)。

 

〈会計年度〉

[基](Q93)予算が成立しない場合に備えて、明治憲法は前年度の予算を執行できる執行予算の制度を設けていたが(71)、この制度は日本国憲法には存在しない。A◯

 

[基](Q94)予算が新年度開始までに成立しない場合は、内閣は会計年度のうちの一定期間に係る予算を国会に提出し国家の議決を求めるしかない。これを暫定予算という(財30)。A◯

 

[基](Q95)予備費の支出は、事後に国会の承諾を得なければならないが、国会の承諾を得られなければならない場合も、支出の法的効果に影響はなく、内閣の政治責任が問われるにとどまると解されている。A◯【フォロー】87②。

 

[基](Q96)予算修正動議の提出について衆議院においては議員50人以上、参議院においては議員20人以上の賛成を必要とするという手続的な制約を課している。A◯【フォロー】国会法57の2。//

 

〈増額修正〉

[基]Q403 予算は、内閣によって作成され、国会の審議・議決を受ける。国会は議決に際し、原案にあるものを廃除削減するマイナス修正は元より、原案に新たな款項を設けたり、その金額を増加するプラス修正を行うことができる。A◯【フォロー】現行法にも増額修正を予想する規定がある。財政19、国会57の3。【フォロー2/修】現行法には増額修正を予想する規定はない→×

 

//〈国会への財政報告〉

[基](Q97)内閣は、国会及び国民に対し、定期に少なくとも毎年1回、国の財政状況について報告しなければならない。A◯【フォロー/修】91。毎月1回→×//

 

【25 】⭐️89条公の支配とは→厳格説、緩和説

〈公金支出の禁止〉

[基]Q404 89条の前段は、宗教上の組織若しくは団体への公金の支出を禁止することによって、政教分離の原則を財政面から保障することを目的とするが、後段の趣旨・目的は必ずしも明らかでない。大別して、①私的な企業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止するための規定と解する立場と、②公財産の濫費を防止し、経営事業等の営利的傾向ないし公権力に対する依存性を排除するための規定と解する立場とがある。A◯

 

[基]〈解釈〉Q405 ①の立場は、「公の支配に属する」を、「その事業の予算を定め、その執行を監督し、さらにその人事に関与するなど、その事業の根本的方向に重大な影響を及ぼすことのできる権力を有すること」と厳格かつ狭義に解するので、監督官庁が事業の自主性が失われる程度に達しない権限と言えず、その事業に対する助成は違憲の疑いがある。A◯【フォロー】厳格説。

 

[基]〈解釈〉Q406 ②の立場は、一般に「公の支配に属する」を、国又は地方公共団体の一定の監督が及んでいることをもって足りるというように、緩やかに、かつ広義に解するので、業務の内容や会計の状況に関し報告を徴したり、予算について必要な変更をすべき旨を勧告する程度の監督権をもっていれば、助成は合憲とされる。A◯【フォロー】緩和説。

 

【26】⭐️憲法改正の限界→限界説、無限界説

 

〈憲法改正の限界/人権の根本規範性〉

[基]〈沿革〉Q407 近代憲法は、本来、人間は生まれながらにして自由であり、平等であるという自然権の思想を国民に憲法を作る力(制憲権)が存するという考え方に基づいて、成文化した法である。A◯

 

[基]Q408 憲法改正権は、憲法の中の根本規範とも言うべき人権宣言の基本原則を改変することは許されない。A◯

 

[学説]Q409 憲法改正権は、憲法制定権によって生み出された権力であって、法的拘束力の点において憲法制定力に従属するという見解は、無限界説の根拠となり得ない。A◯

 

〈憲法改正手続〉

[基]Q410 96条の定める憲法改正国民投票は、国民の制憲権思想を端的に具体化したものであり、これを廃止することは国民主権の原理を揺るがす意味を持つので、改正は許されない。A◯

 

【重複/①有】〈「主権の存する日本国民の総意に基づく」(1条)の意味〉

//[基](Q67)憲法改正によって天皇制を廃止することは、憲法改正限界説の下でも可能である。A◯//

 

【27】憲法尊重擁護義務

[基]〈効果〉Q411 99条の義務は、道義的・倫理的要請を抽象的に表したものであって、本条から直ちに法律的な効果が生ずる訳ではない。すなわち、憲法尊重擁護義務を課す法律によってはじめて具体的な法的義務が生ずる。A◯

 

【重複/①有】

//〈公務員の憲法尊重擁護義務(99)〉

[基]Q公務員の憲法尊重擁護義務は、殆ど、各公務員が憲法上与えらた職責を誠実に果たすべき義務を意味する。A◯

 

[基]Q99条は義務の名宛人に「国民」を入れていない。立憲主義は国家権力のを制限することを狙いとするから、その遵守が求められるのは公務員であって国民ではない。A◯

 

[基]Q国民には、自分たちの自由と権利を保持するよう、「不断の努力」が求められている(12)。これは法的義務ではない。A◯【フォロー/修】法的義務である。→×//