会社法[基本的事項]⑦

Q603〜713

 

⑸〈取締役・取締役会〉

 

339条(解任)

〈339条2項の「正当な理由」〉

 

⭐️[判]Q603 代取Aの持病が悪化したため、その有する株式全部を取締役Bに譲渡して代取の地位を交替した後、Bが経営陣の一新を図るため臨時総会を招集し、その決議により、Aを解任した場合には、339条2項の正当な事由がある。A◯【フォロー】最判昭和57.1.21 百42(4版)。

 

〈正当理由のない取締役の解任と損賠〉

⭐️[判]Q604 Y社(非公開会社)は、Xらを取締役として再任しなかったことにつき正当な理由がないから、Xら(取締役)に生じた損害を賠償する責任を負う。そのうえ、その損害額について、残存期間中に得られる報酬額とする旨のXらの主張に対して、今後におけるY社の経営状況やXらの職務内容と月額報酬が変化する可能性を鑑み、損害額の算定期間をXらが退任した日の翌日から2年間に限定するとした。A◯【フォロー】最判平成27.6.29 百A16(4版)。

 

⭐️[論][趣]Q605 339条趣旨。A役員及び会計監査人の地位を実質的企業所有者たる株主の意思にかからしめること。

 

🔷[論文リ(18)]取締役解任の正当事由(339)→最判昭和57.1.21(百)。

 

346条(役員等に欠損を生じた場合の措置)

〈退任後もなお役員の権利義務を有する者の解任請求〉

 

⭐️[判]Q606 346条1項に基づき退任後もなお役員としての権利義務を有する者の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違法する重大な事実があった場合において、本条を適用し又は類推適用して株主が訴えをもって当該者の解任請求をすることはできない。A◯

 

【フォロー/理】最判平成20.2.26 百43(4版)。854条(株式会社役員の解任の訴え)は、解任対象の請求につき、単に役員と規定しており、役員権利義務者を含む旨を規定していない。株主が訴えをもって役員権利義務者の解任請求をすることは、法の予定していないところというべき。

 

349条(株式会社の代表)

⭐️[論][定]Q代表取締役。A指名委員会等設置会社以外の会社において、会社を代表し、かつ業務執行をなす機関。

 

🔷[論文リ(19)]取締役会決議を欠いた代取の行為の効力

🔷[論文リ(20)]株主総会決議を欠く事業譲渡契約の効力

🟧🔵[予備3]取締役会設置会社における株主総会決議による代取選定に関する定款の効力

 

350条(代表者の行為についての損賠責任)

⭐️[論][趣]Q607 350条趣旨。A代取等の株式会社の代表者が職務を行うに際し不法行為をして第三者に損害を加えた場合、被害者保護の観点から、当該代表者が個人として責任を負うときであっても、当該株式会社に責任を負わせるとする。

 

⭐️[論][要件]Q608 350条の要件。A①代取等の株式会社の代表者が、②その職務を行うについて、③第三者に損害を与えたこと。

 

352条(取締役の職務を代行する者の権限)

〈代表取締役職務代行者による臨時総会の招集と会社の常務〉

 

⭐️[判]Q609 取締役の解任を目的とする臨時総会の招集は、それが少数株主の招集の請求に基づく場合でも、会社の常務に属しない行為に該当する。A◯【フォロー】最判昭和50.6.27 百45(4版)。会社の常務に該当しない行為をするには裁判所の許可要(352①)。

 

354条(表見代表取締役)

〈第三者に重過失がある場合〉

 

⭐️[判]Q610 第三者が善意である限り、過失があっても会社は354条の責任を免れないが、同条は第三者の正当な信頼を保護しようとするものであるから、代表権の欠缺を知らないことにより善意の第三者に重大な過失があるときは、悪意の場合と同視し、会社はその責任を免れる。A◯【フォロー】最判昭和52.10.14 百46(4版)。

 

⭐️[論][定]Q611 表見取締役。A創立総会又は株主総会における選任手続を経ないまま、登記上取締役として表示されている者。

 

⭐️[論][趣]Q612 354条趣旨。A会社が表見代表取締役の行為について、善意の第三者に対して代表権のある取締役の行為と同様に責任を負うとすることで、代取と誤認した第三者の保護を図る(外観法理)。

 

⭐️[論][定]Q613 表見代表取締役。A社長・副社長その他会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付されているが、代表権を有しない取締役をいう。

 

⭐️[論][要件]Q614 354条の要件。A①外観の存在。②外観への与因。③外観への信頼。

 

【フォロー】②の「付した」とは、会社が名称の使用を明示ないし黙示に認めた場合に限られ(最判昭和42.4.28)、行為者が無断で使用しただけの場合は含まれない。

 

【フォロー2】相手方が表見代表取締役に代表権限がないことにつき善意かつ無重過失であることを要する。重過失は悪意と同等に評価し得る(最判昭和52.10.14(百))。

 

⭐️[論][効果・文解]Q615 354条の「その責任を負う」とは。A表見取締役の行為が代表権のある取締役の行為と同視されることにより、会社がその取締役の行為に基づき義務を負うとともに権利をも取得するという意味。

 

🟧🔵[予備3]表見代表取締役

 

355条(忠実義務)

⭐️[論][趣]Q616 355条趣旨。A取締役と会社の関係は委任の規定に従うので、取締役は善管注意義務、忠実義務を負うことを規定した。

 

⭐️[論][定]Q617 経営判断の原則。A当該会社の属する業界における通常の経営者の有すべき知見及び経験を基準として、当該行為をすることが著しく不当とはいえない場合には、善管注意義務(民644)又は忠実義務(355)の懈怠がないというべき原則。

 

🔷[論][論文リ(21)]退任取締役による従業員引き抜き・新会社設立と忠実義務違反→東京高判平成元.10.26(引き抜き行為と忠実義務違反)

 

🟧🔵[予備25]取締役等の説明義務

 

356条(競業及び利益相反取引の制限)

〈競業取引の制限/自己又は第三者のためにの意味(356①1号)〉

 

⭐️[判]Q618 356条1項1号の自己又は第三者のためにするとは、自己又は第三者のいずれの名をもってするとを問わず、行為の経済上の利益が自己又は第三者に帰属することをいい、取締役が第三者を実質上支配する場合を含む。A◯【フォロー】大阪高判平成2.7.18

 

〈会社が進出を決意して具体的に準備をしている場合〉

⭐️[判]Q619 A会社が一定の地域への進出を決意し、既に具体的に市場調査等を進めていたにもかかわらず、A会社の代表取締役がその地域において他の競業会社Bの代取として経営することは、第三者BのためにAの営業の部類に属する取引をしたことになる。A◯【フォロー】東京地判昭和56.3.26 百53(4版)。

 

〈手形行為と利益相反取引/取締役に対する手形振出〉

 

⭐️[判]Q620 約束手形の振出は、単に売買、消費貸借契約等の実質的取引の決済手段として行われるのではなく、簡易かつ有効な信用手段としても行われ、また、約束手形の振出人は、その手形の振出しにより原因関係におけるとは別個の新たな債務を負担し、しかもその債務は、挙証責任の加重、抗弁の切断、不渡処分の危険等を伴うことから、会社がその取締役に宛てて約束手形を振り出す行為は、原則、356条1項2号、3号の取引に当たり、会社はこれにつき取締役会の承認を受けることを要する。A◯【フォロー】最大判昭和46.10.13 百55(4版)。

 

〈利益相反の間接取引/債務引受〉

 

⭐️[判]Q621 356条1項2号、3号の取引の中には、取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反の行為だけでなく、取締役個人の債務につき、その取締役が会社を代表して、債権者に対し債務を引き受けをするような、取締役個人に利益で、会社に不利益を及ぼす行為も、取締役の自己のためにする取引として、これ(利益相反取引)に包含される。A◯【フォロー】最大判昭和43.12.25 百56(4版)。

 

⭐️[論][規範]Q622「事業の部類に属する取引」(356①1号)の第三者保護規範。A①当該取引が利益相反取引に当たり、取締役会の承認を要するものであったこと、②それにもかかわらず、取締役会の承認を得ていなかったことにつき、第三者が悪意であったことを会社の側が主張立証しなければならない。

 

⭐️[論][文解]Q623 事業の部類に属する取引(356①1号)。A会社が現に行なっている事業に限定されず、会社が現に行なっているか行なおうとしている事業と市場において取引先が競合し、会社と取締役ないし第三者の間に利害関係の生ずるおそれが定型的に認められる取引。

 

⭐️[論][文解]Q624 自己又は第三者のために(356①1号)。A専ら自己又は第三者の計算をもって取引をなした場合に限られる。

 

⭐️[論][趣]Q625 356条1項1号(競業の制限)趣旨。A取締役は、会社の業務執行に関する強大な権限を有し営業の機密にも通じているため、その地位を利用して会社の取引先を奪う等、会社の利益を犠牲にし自己又は第三者の利益を図る危険があるので、その危険を防ぐ。

 

⭐️[論][趣]Q626 356条1項2号、3号(利益相反取引の制限)趣旨。A取締役に会社との間の取引を自由にさせておくと、会社の犠牲において自己又は第三者の利益を図るおそれがあるので、これを事前に防止する。

 

⭐️[論][要件]Q627 競業避止義務(356①1号)の要件。A①自己又は第三者のために、②取締役が株式会社の事業の部類に属する取引をすること。

 

⭐️[論][文解]Q628「自己又は第三者のために」(356①1号)。A会社の利益保護の趣旨から、自己又は第三者の計算において、つまり競業取引の経済的利益が取締役又は第三者に帰属する取引の意味に解する(大阪高判平成2.7.18)。

 

⭐️[論][文解]Q629 会社の事業の部類に属する取引(同条項1号)。A当該会社が実際に行う事業と市場において競合し、かつ当該会社と取締役との間の利益の衝突を生ずる可能性のある取引をいう。

 

⭐️[論][要件]Q630 利益相反取引(356①2号・直接取引)の要件。A①自己又は第三者のために、②取締役が株式会社と取引すること。

 

⭐️[論][要件]Q631 利益相反取引(同条項3号・間接取引)の要件。A①株式会社が取締役以外の者との間において、②取締役との利益が相反する取引をすること。

 

🔷[論文リ(22)]取締役会の承認を受けない利益相反取引の効力

🔷[論文リ(23)]代取による競業会社設立

 

🟩[論文マ(19)]競業避止義務(「会社の事業」の意義)

→会社の事業とは、現実に営む事業のほか、開業の準備に着手している事業も含まれる。

 

🟩[論文マ(20)]競業避止義務(「部類に属する取引」の意義)

→事業の部類に属する取引とは、会社の行う事業よりも広く、会社の営業と同種又は類似の商品の役務を対象とする取引で、会社の行う事業と市場において競合し、会社と取締役の利益が衝突する可能性がある取引をいう。

 

🟩[論文マ(21)]競業避止義務(「自己又は第三者のため」の意義)→自己又は第三者のためとは、自己又は第三者の計算においての意味。

 

🟩[論文マ(22)]利益相反取引

→利益相反取引制度の趣旨は、取締役がその地位を利用することによって、会社延いては株主に不測の損害を与えることを防止するものであるから、利益相反取引かどうかは、会社に損害を与える危険性があるかどうかによって判断する。

 

🟧🔵[予備24]利益相反取引

🟧🔵[予備25]実質的競争関係の解釈

🟧🔵[予備26]利益相反取引該当性

🟧🔵[予備26]特別利害関係取締役の参加した取締役会決議の効力

🟧🔵[予備26]第三者に対する有利発行と株主総会決議の欠缺

🟧🔵[予備30]利益相反取引

 

⭕️〈共通〉

🟩[論文マ(23)]取締役会の承認を受けない利益相反取引の効力

→取締役が自己の利益を図るため、会社を代表して第三者と行なった取引についても無効の主張を認めると取引の安全を害する。第三者との利益相反取引については、善意の第三者保護の見地から、会社は、当該取引につき取締役会決議を受けなかったほか、当該第三者の取締役会決議欠缺の事実に関する悪意を主張・立証した場合に限り、無効を主張できる。

 

358条(業務執行に関する検査役の選任)

〈新株発行による持株比率の低下〉

 

⭐️[判]Q632 株主が検査役の選任の申請をした時点で、当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3以上を有したとしても、その後、当該会社が新株を発行したことにより、当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3未満しか有しないものとなった場合には、当該会社が当該株主の申請を妨害する目的で新株を発行した等の特段の事情がない限り、本件申請は、申請人の適格を欠くものとして不適法であり、却下を免れない。A◯

【フォロー】最決平成18.9.28 百57(4版)。

 

360条(株主による取締役の行為の差止め)

⭐️[論][趣]Q633 360条趣旨。A本来、取締役の違法行為は会社自身が差止めるべきであるが、取締役間の馴れ合いによって差止めを怠り、会社延いては株主を害するおそれがあることから、これを防止する。

 

⭐️[論][要件]Q634 360条の要件。A取締役が会社の目的の範囲外の行為、法令・定款違反行為をし、又はするおそれがあること。②会社に回復することができない損害を生ずるおそれがあること。

 

⭐️[論][文解]Q635 目的の範囲内かどうかの基準(360①)。A事前の差止めの段階では、取引の安全を考慮する必要がないので、目的の範囲内かどうかは取締役の主観を基準とすべきであり、客観的には目的の範囲外の行為でも、主観的には目的達成のためではない買収は、差止めの対象となる。

 

🔷[論文リ(24)]株主による取締役の行為の差止め

 

361条(取締役の報酬等)

⭐️[論][定]Q636 報酬。A取締役の業務執行の対価となるものをいう。【フォロー】金銭に限らない。

 

⭐️[論][基準]Q637 退職慰労金の報酬の決定。A退職慰労金決議が無条件に取締役会に一任する趣旨ではなく、会社の業績・退職役員の勤続年数などから算定した一定の基準により慰労金を決定する方法が慣例となっており、この慣例によって定めるべきことを黙示してなされたときは有効な決議である(最判昭和39.12.11(百))。

 

〈退職慰労金/性質〉

[判]Q638 会社の役員に対する退職慰労金は、その在職中の職務執行の対価として支給されるものである限り、361条の報酬に含まれる。A◯【フォロー】最判昭和39.12.11 百61

 

⭐️[論文][規範]Q639 退職慰労金の取締役会への一任規範。A①一の確定された基準が存在し、②株主がその基準を知り、又は容易に知り得べき状態にあり、③その基準が、法の要求するお手盛り防止や監査役の独立性の確保の基準に合致している場合において株主総会が、その基準に基づいて定められていることを黙示して授権したときに限り、取締役会への一任も許される。

 

〈具体的報酬請求権の発生〉

⭐️[判]Q640 株式会社の取締役については、定款又は株主総会の決議によって報酬の金額が定められなければ、株主総会決議に代わる株主全員の同意がない限り、具体的報酬請求権は発生せず、取締役が会社に対して報酬を請求することはできない。A◯【フォロー】最判平成15.2.21 百A21(4版)。

 

〈定款の定め及び株主総会決議を欠いて支給された退職慰労金の返還請求〉

 

⭐️[判]Q641 Y(取締役・被告)に対し退職慰労金を支給する旨の株主総会の決議等が存在しない以上は、Yには退職慰労金請求権は発生しておらず、Yが本件金員を受けたことが不当利得になることは否定し難い。

 

しかし、Yが退職慰労金支給を催告したところ約10日後に本件金員が送金され、Xがその返還を明確に求めたのはYへの送金後1年近く経過した日であったことなどから、Yが本件送金についてX代表者の決議を経たものと信じたとしても無理からぬものがある。

 

また、X代表者が、上記催告を受けて本件送金がされたことを、その直後に認識していたとの事実が認められるのであれば、X代表者において本件送金を事実上黙認してきたとの評価を免れない。

 

さらに、Yは、Yが従前退職慰労金を支給された退任取締役と同等以上の業績を上げてきたとの事実も主張しており、上記各事実を前提とすれば、Yに対して退職慰労金を不支給とすべき合理的な理由があるなど特段の事情がない限り、XがYに対して本件金員の返還を請求することは、信義則に反し、権利の濫用として許されない。A◯【フォロー】最判平成21.12.28 百A22(4版)。

 

〈取締役の報酬額の決定後にそれを無報酬とする旨の総会決議と報酬請求権〉

 

⭐️[判]Q642 定款又は株主総会の決議によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから、その後株主総会が当該取締役の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに同意しない限り、報酬の請求権を失うものではない。A◯

 

【フォロー】最判平成4.12.18 百A23(4版)。この理は、取締役の職務内容に著しい変更があり、それを前提に株主総会決議がされた場合でも異ならない。

 

🔷[論文リ(25)]退職慰労金決定の取締役会への一任の可否

🔷[論文リ(26)]取締役報酬の事後的変更の可否

 

🟩[論文マ(24)]退職慰労金と報酬規制

→取締役の報酬規制は、自己の報酬を高くするお手盛りを防止するため、政策的に株主総会の決議を要するとした。退職慰労金は、在職中の功労という側面があるものの、報酬の後払い的性格を有するため、自己が退任の際に受け取る額の高額化を期待して、他の取締役の慰労金につきお手盛りの便宜を図る危険性もある。したがって、退職慰労金も報酬に含まれる。

 

🟩[論文マ(25)]退職慰労金の決済方法

→退職慰労金の総会決議が取締役会に一任する趣旨ではなく、慣行及び内規により一定の支給基準が確立されており、その支給基準が株主に推知し得る場合には、その基準に従うべきという趣旨で取締役会に一任する旨の総会決議は有効である。

 

🟧🔵[予備3]報酬等(361①)の意義

🟧🔵[予備3]退職慰労金の「報酬等」該当性

🟧🔵[予備3]定款の定め及び株主総会決議を欠いて支給された退職慰労金の返還請求の可否

 

362条(取締役会の権限等)

〈株主総会決議により代取を選定する旨の定款の効力〉

 

⭐️[判]Q643 取締役会設置会社である非公開会社における、取締役会決議による他、株主総会決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効である。A◯【フォロー】最判平成29.2.21 百41(4版)。

 

〈362条4項1号の重要な財産の処分〉

⭐️[判]Q644 362条4項1号の重要な財産の処分に該当するかどうかは、当該財産の価額、会社の総資産に占める割合、保有目的、処分の態様、従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断される。A◯【フォロー】最判平成6.1.20 百60(4版)。

 

〈必要な取締役会の決議を経ずになされた取引行為〉

 

[判]Q645 代表取締役は会社の業務に関し、一切の裁判上裁判外の行為をする権限を有するから、代取が取締役会の決議を経てする対外的取引を決議なしでした場合も、上記行為は内部的意思決定行為を欠くに止まり、原則として有効であって、ただ相手方が上記決議を経ていないことを知り又は知り得べかりし時に限って無効である。A◯【フォロー】最判昭和40.9.22 百64

 

〈代表取締役の業務執行に対する取締役の監視義務〉

 

[判]Q646 取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、取締役会に上程された事柄について監視するにとどまらず、代取の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務を有する。A◯【フォロー】最判昭和48.5.22 百71

 

〈招集手続/一部の取締役に対する招集通知漏れと取締役会決議の効力を〉

 

[判]Q647 取締役会の開催に当たり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠くことにより、その招集通知に瑕疵があるときは、特段の事情がない限り取締役会決議は無効であるが、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認められる特段の事情があるときは、上記瑕疵は決議の効力に影響がないとして、決議は有効になる。A◯【フォロー】最判昭和44.12.2

 

[論][文解]Q648 重要な財産の譲渡(362④1号)。A事業譲渡と異なり営業活動の承継を伴わないで営業目的のための単なる財産物件を移転すること。

 

🔷[論文リ(27)]「多額の借財」(362④2号)の意義→東京地判平成9.3.17

 

🔷[論文リ(28)]取締役の監視義務懈怠と429条(役員等の第三者に対する損賠責任)

 

🟩[論文マ(26)]取締役会決議を欠く代取の行為の効力

→取引の安全の見地から有効とするべき。相手方が取締役会決議のないことを知り又は知り得べき場合には、会社の利益を犠牲にしてまで有効とすることは妥当ではないから、無効となる。

 

🟩[論文マ(27)]取締役の監視義務の範囲

→取締役は、非上程事項についても監視義務を負う。

 

🟩[論文マ(28)]「重要な財産の処分」かどうかの判断枠組み

→当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取り扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきである。

 

🟩[論文マ(29)]「多額の借財」かどうかの判断枠組み

→当該借財の額、会社の規模、財務状態、営業成績、資金繰りの予測、市場の動向等を総合的に考慮して判断される。

 

🟧🔵[予備24]重要な財産の譲受け

 

366条(招集手続)

〈名目的取締役に対する招集通知の必要性〉

 

⭐️[判]Q649 取締役会の招集通知は、取締役全員に対してしなければならなず、単に名目的取締役の地位にあるに過ぎない者に対しては通知を要しないとする理由はない。A◯

【フォロー】最判昭和44.12.2 百62(4版)。名目的取締役にも招集通知要。

 

368条(招集手続)

⭐️[論][効果]Q650 取締役に対する招集通知(368)を欠く場合の効果。A「その取締役が出席してもなお決議の効力に影響がないと認められるべき特段の事情があるとき」は、例外的に決議は有効となる。

 

⭕️〈共通〉

🔷[論文リ(29)]招集手続に瑕疵がある場合の取締役会決議の効力

→最判昭和44.12.2(百)。

 

🟩[論文マ(30)]一部取締役に招集通知漏れがあった場合の取締役会決議の効力

→取締役の一部に対する招集通知を欠いてなされた取締役決議は、無効であるのが原則。もっとも、招集通知漏れの取締役が出席しても決議の結果に影響を及ぼさないと認めるべき特段の事情がある場合には、決議は有効。

 

🟧🔵[予備23]取締役への通知漏れがある場合の取締役会決議の効力

🟧🔵[予備23]取締役会決議と特別利害関係

 

369条(取締役会の決議)

〈株主総会への取締役選任議案の提出〉

 

[判]Q651 369条2項の特別利害関係は特定の取締役が会社に対する忠実義務を誠実に履行することを定型的に困難にすると認められる個人的利害関係ないしは会社外の利害関係であると解した上で、株主総会に取締役会の解任議案を提出するか否かを決定する取締役会の決議において、解任議案の対象とされている取締役は、特別の利害関係を有する。A◯【フォロー】東京地決平成29.9.26。

 

〈特別利害関係のある理事が加わってなされた理事会の決議の効力〉

 

⭐️[判]Q652 漁業協同組合の理事会の議決が、当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってなされたものであっても、当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは、その効力は否定されない。A◯【フォロー】最判平成28.1.22 百A17(4版)。

 

〈議決権行使に関する取締役会の合意〉

⭐️[判]Q653 取締役の間で取締役会における議決権の行使につき約束したとしても、何ら商法(会社法)の精神に反するものとはいえず、合意は有効である。A◯【フォロー】東京高判平成12.5.30 百A18(4版)。

 

⭐️[論][効果]Q654 取締役会決議を経ずに代取がなした集団的行為の効力。A 取締役会決議を遵守することにより、保護される会社の利益と、代取の行為を有効と信頼した相手方の利益などを比較衡量して決定すべき。

 

⭐️[論][文解]Q655 特別の利害関係(369②)。A取締役の忠実義務(355)違反を招くおそれのある会社利益と衝突する取締役の個人的利害関係。

 

371条(議事録等)

〈権利行使の必要性〉

 

⭐️[判]Q656 株主提案権を行使して電力事業会社の定款に原子力発電事業に関する条項を追加する議案を提案することを検討している地方公共団体が、同社の取締役会が原子力発電事業について協議又は決定した部分の議事録の閲覧及び謄写を求めることは、地方公共団体は市民の生命・安全を確保し、その円滑な日常生活を確保する責務を有していること及び原子力発電事業に関する経営判断が同社の存続及び帰趨を決定的に左右し株主が重大な利害関係を有するものであることを踏まえると、株主としての権利行使の必要性に基づくものといえる。A◯【フォロー】大阪高判平成25.11.8 百A19

 

423条(役員等の株式会社に対する損賠責任)

 

⭐️[論][趣]Q657 423条趣旨。A取締役・執行役は、会社と委任関係に立つ以上、善管注意義務・忠実義務違反で会社に損害を与えれば、当然に損賠義務を負うが、会社利益の保護の見地から423条が規定された。

 

⭐️[論][要件]Q658 423条の要件。A①役員等の任務懈怠、②故意・過失、③損害の発生、④①と③の因果関係。

 

⭐️[論][定]Q659 経営判断の原則。A裁判所は経営判断には事後的に介入しないというルール。

 

⭐️[論][要件]Q660 経営判断の原則の要件。A①経営判断を下すまでの情報収集分析に不注意な点がないこと、②経営判断の内容自体に不合理な点がないこと。

 

🔷[論文リ(31)]取締役の任務懈怠責任(423①)

🔷[論文リ(32)]経営判断の原則

🟧🔵[予備2]取締役の任務懈怠責任

🟧🔵[予備4]任務懈怠責任

 

425条(責任の一部免除)

🟧🔵[予備30]取締役の責任の一部免除

 

429条(役員等の第三者に対する損賠責任)

〈取締役就任登記を承諾した者の責任〉

 

[判]Q661 会社の取締役でないのにそれに就任した旨の登記をすることに承諾を与え、登記事項が不実であることを過失によって知らず、908条2項の類推適用により、上記登記事項が不実であることを善意の第三者に対抗できない者は、429条の取締役としての責任を免れない。A◯【フォロー】最判昭和47.6.15 百79

 

⭐️[論][文解]Q662 取締役(429)。A創立総会ないし株主総会において選任され、職務を遂行する取締役。

 

〈429条1項の責任の性質/不法行為責任との関係〉

 

⭐️[判]Q663 取締役はその職務を行うにつき故意・過失により直接第三者に損害を加えた場合は、一般不法行為の規定によって損害を賠償する義務を負うが、取締役の任務懈怠により損害を受けた第三者としては、その任務懈怠につき取締役の悪意又は重過失を主張し立証しさえすれば、自己に対する加害につき故意・過失があることを主張し立証するまでもなく、429条により取締役に対して損害の賠償を求め得る。A◯【フォロー】最大判昭和44.11.26 百66(4版)

 

〈辞任した役員の不実登記の残存についての承諾と429条の責任〉

 

[判]Q664 取締役を辞任した者が、登記申請者である会社の代表取締役に対し、辞任登記をしないで不実登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特別の事情がある場合には、908条の類推適用により善意の第三者に対して、429条1項の責任を負う。A◯ 【フォロー】最判昭和62.4.16 百68(4版)。

 

⭐️[論][趣]Q665 429条趣旨。A役員等が任務に違反した場合には、会社に対する関係で責任を負うにすぎないが、株式会社の性質上取締役の職務の執行は第三者の利害に関するところが大きいので、特に第三者の保護のために取締役に厳格な責任を課した。

 

⭐️[論][法性]Q666 429条の法的性質。A第三者保護の立場から、当該取締役が直接に第三者に対し損賠の責めに任ずべきことを規定したとして、429条1項を特別の法定責任と位置付けている。

 

⭐️[論][要件]Q667 429条の要件。A①役員等の任務懈怠責任、②①についての悪意又は重大な過失、③損害の発生、④①と③の因果関係。

 

⭕️〈共通〉

🔷[論文リ(33)]取締役の第三者に対する責任(429①)

🔷[論文リ(34)]登記簿上の取締役の対第三者責任

 

🟩[論文マ(32)]取締役の第三者責任(法的性格)

→取締役の第三者責任は、取締役の職務執行に依存した株式会社の活動によって第三者に大きな損害が生じる危険性から、第三者保護を図るために、不法行為責任(民709)とは別個に、取締役の責任を加重すべく設けられた法定責任である。

 

🟩[論文マ(33)]取締役の第三者責任(「悪意又は重大な過失」の意義)→悪意又は重大な過失は、第三者の立証責任の負担の軽減を図るべく、会社に対する任務懈怠について存すれば足りる。

 

🟩[論文マ(34)]取締役の第三者責任(「損害」の範囲)

→損害には、直接損害だけでなく、間接責任も含まれる。

 

🟧🔵[予備27]429条の法的性質

🟧🔵[予備27]法令違反の行為と取締役の責任

🟧🔵[予備27]間接損害における429条1項の「第三者」

🟧🔵[予備30]取締役の損賠責任

 

467条(事業譲渡等の承認等)

 

⭐️[論][趣]Q668 467条の趣旨。A事業の全部譲渡等につき株主総会の特別決議による承認を受けなければならないとする趣旨は、これらの行為は、会社の事業の将来に重大な影響を及ぼすので、株主保護を図る点にある。

 

⭐️[論][定]Q669 事業譲渡。A一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産を譲渡し、それにより譲受会社が営業者たる地位を承継し、譲受会社が法律上当然に競業避止義務を負う(21条)に至るものをいう。

 

⭐️[論][要件]Q670 467条1項の要件。A①一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は一部の譲渡であり、②譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ、③譲渡会社が譲渡の限度に応じ法律上当然に会社法21条に定める競業避止義務を負う結果を伴うもの。

 

⭕️〈共通〉

🔷[論文リ(35)]「事業の譲渡」(467①1号)の意義→最大判昭和40.9.22

🔷[論文リ(36)]「事業の重要な一部」(467①2号)の意義

🟩[論文マ(35)]「事業譲渡」の意義

→一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の譲渡であり、譲渡会社が法律上当然に競業避止義務(21条)を負う場合をいう。

🟧🔵[予備2]事業譲渡等に属する行為の手続

 

⑺〈監査役・監査役会〉

 

335条(監査役の資格等)

〈「自己監査」の違法性〉

 

[判]Q671 営業年度の途中に取締役から監査役に選任された者が、自分が取締役であった期間について自己を含む取締役の職務の執行を監査することは、不可能を強いるものではなく、上記選任が違法とはいえない。A◯【フォロー】東京高判昭和61.6.26。上告審は上告棄却。

 

〈弁護士である監査役の訴訟代理の可否〉

⭐️[判]Q672 335条の規定は、弁護士の資格を有する監査役が特定の訴訟事件につき会社から委任を受けてその訴訟代理人となることまでを禁止するものではない。A◯【フォロー】最判昭和61.2.18 百70(4版)。

 

390条(権限等)

🟩[論文マ(31)]監査役会と監査役の独任制

→監査役会は、それ自体機関ではなく、各監査役の独任制を妨げるものであってはならない(390②)。理由は、業務執行に関する違法か適法かの判断は、多数決で決する事柄ではない。

 

〈訴え〉

 

839条(無効又は取消しの判決の効力)

〈役員選任決議取消しの訴え/役員退任の場合に訴えの利益が認められる場合〉

 

⭐️[判]Q673 事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに、同選挙が取り消されることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙を争う訴えが併合提起されている場合には、上記特段の事情(全員出席総会等)がない限り、先行の選挙の取消しを求める訴えは消滅しない。A◯【フォロー】最判令和2.9.3百A14(4版)。

 

847条(株主による責任追及の訴え)

〈取締役の会社に対する取引債務〉

 

⭐️[判]Q674 847条1項にいう「取締役の責任」は、会社法が取締役の地位に基づいて取締役に責任を負わせている厳格な責任のほか、取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれる。A◯【フォロー】最判平成21.3.10 百64(4版)。

 

⭐️[論][文解]Q675 役員等…の責任(847①)。A役員等(423)が会社に対して負担する一切の債務を包含する。

 

⭐️[論][文解]Q676「悪意」(847⑧)。A不正な目的をもって訴えを提起した場合、又は、原告の請求に理由がなく、原告が、そのことを知って訴えを提起した場合。

 

847条の3(多重代表訴訟)

🟧🔵[予備2]多重代表訴訟

 

849条(訴訟参加)

〈会社の被告取締役側への補助参加〉

 

⭐️[判]Q677 取締役の意思決定が違法であるとして、取締役に対し提起された株主代表訴訟において、株式会社は、特段の事情がない限り、取締役を補助するため訴訟に参加することが許される。A◯【フォロー】最決平成13.1.30 百A25(4版)。

 

(14)〈計算〉

 

433条(会計帳簿の閲覧等の請求)

〈実質的に競争関係にある事業/近い将来競業を行う蓋然性が高い場合〉

 

[判]Q678 433条2項3号の「会社と競業を為す会社」には、現に競業を行う会社のみならず、将来競業を行う蓋然性の高い会社も含まれる。A◯【フォロー】東京地決平成6.3.4

 

〈請求権の主観的意図〉

 

⭐️[判]Q679 会社の会計帳簿の閲覧謄写請求をした株主につき433条2項3号に規定する拒絶事由があるというためには、当該株主が当該会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば足り、当該株主に会計帳簿の閲覧等によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要せず、同号に掲げる事由を不許可事由として規定する433条4項についても、同様である。A◯【フォロー】最決平成21.1.15 百74(4版)。

 

(22)持分会社

 

609条(持分の差押債権者による退社)

→①社員の持分を差し押さえた債権者は、事業年度の終了時において当該社員を退社させることができる。

 

〈債権者による退社予告〉

 

⭐️[判]Q680 609条2項の「相当の担保を供したとき」とは、差押債権者との間で、担保物権を設定し、又は保証契約をした場合をいい、差押債権者の承諾を伴わない担保物権設定又は保証契約締結の単なる申込はこれに当たらない。A◯【フォロー】最判昭49.12.20 百76(4版)。

 

833条(会社の解散の訴え)

〈多数派社員の不公正かつ利己的な業務執行〉

 

⭐️[判]Q681 合名会社は総社員の利益のために存立する目的的存在であるから、会社の業務が一応困難なく行われているとしても、社員間に多数派と少数派の対立があり、業務の執行が多数派社員によって不公正かつ利己的に行われ、その結果少数派社員がいわれのない恒常的な不利益を被っているような場合にも、また、これを打開する手段のない限り、解散事由がある。A◯【フォロー】最判昭和61.3.13 百79(4版)。

 

〈組織変更〉

179条の8(申立てをすることができる株主の範囲)

 

⭐️[判]Q682 179条の8第1項の趣旨は、179条の4第1項1号、社債株式振替法161条2項に基づく通知又は公告により株式を強制的に売り渡さなければならないことが確定した後に株式を取得したものは、本条1項による保護の対象ではなく、同項に基づく申立てをすることはできない。A◯【フォロー】最決平成29.8.30 百83(4版)。

 

748条(合併契約の締結)

⭐️[論][定]Q683 合併(748)。A二つ以上の会社が契約により、一つの会社を合同すること。【フォロー/趣旨】会社の規範を変更することによって、企業経営の合理化、競争力強化を図ること。

 

⭐️[論][法性]Q684 合併の法的性質。A会社の合同を生じる組織法上の一種特別の契約(人格合一説)。

 

785条(反対株主の株式買取請求)

 

〈株主買取請求における公正な価格〉

 

⭐️[判]Q685 吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合には、増加した企業価値の適切な分配を考慮する余地はないから、吸収合併等を承認する旨の株主総会決議がなされることがなければその株式が有したであろう価格(ナカリセバ価格)を算定し、これをもって「公正な価格」を定めるべきである。A◯【フォロー】最決平成23.4.19 百84(4版)。

 

〈「公正な価格」による株式買取請求権の趣旨〉

 

[判]Q686 反対株主に「公正な価格」での株式の買取りを請求する権利が付与された趣旨は、吸収合併等という会社組織の基礎に本質的変更をもたらす行為を株主総会の多数決により可能とする反面、それに反対する株主に会社からの退出する機会を与えると共に、吸収合併等がなされなかった場合と経済的に同等の状況を確保し、さらに、吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生ずる場合には、上記株主に対してもこれを適切に分配し得るものとすることにより、上記株主の利益を一定の範囲で保障することにある。A◯

 

【フォロー/趣旨コンパクト】反対する株主に会社からの退出の機会を与えるとともに、吸収合併等がなされなかった場合と経済的に同等の状況を確保し、さらに企業価値が増加する場合には、これを反対する株主にも適切に分配されることにより、株主の利益を一定の範囲で保障することにある。

 

【フォロー2】最決平成23.4.19 百84(4版)(楽天対TBS株式買取価格決定申立事件)

 

〈株式買取価格の性質〉

 

[判]Q687 裁判所による価格の決定は、客観的に定まっている過去の株価の確認ではなく、新たに「公正な価格」を形成するものであり、法が価格決定の基準について格別規定していないことからすると、法は価格決定を裁判所の裁量に委ねているものと解される。A◯【フォロー】最決昭和48.3.1

 

🟩[論文マ(36)]合併無効と株式買取請求

→合併無効の訴えを提起した株主は、同時に株式買取請求権をすることができる。

 

786条(株式の価格の決定等)

🟩[論文マ(37)]合併比率の不公正と無効事由

→合併比率が、企業の財産価値、企業の収益力、株価等の観点から見て、企業評価の問題として許される範囲を超えて著しく不公正な場合には、合併無効原因となる。

 

🟧🔵[予備25]交換比率の不公正と無効原因

🟧🔵[予備28]吸収合併の差止請求

🟧🔵[予備28]吸収合併の無効の訴え

 

〈会社分割〉

〈吸収分割によって債務を負わなくなったとする分割会社の主張の可否〉

 

⭐️[判]Q688 建物の賃借人であった分割会社が賃貸人に対し、吸収分割がされたことを理由に当該賃貸借契約に基づく違約金債権に係る債務を負わないと主張することは、信義則に反して許されず、賃貸人は、吸収分割の後も、分割会社に対して同債務の履行を請求することができる。A◯【フォロー】最判平成29.12.19 百90(4版)。

 

〈新設分割を対象とする詐害行為取消権の行使〉

 

⭐️[判]Q689 株式会社を設立する新設分割がされた場合において、新設分割設立株式会社にその債権に係る債務が承継されず、新設分割に異議を述べることもできない新設分割株式会社の債権者は、詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる。A◯【フォロー】最判昭和24.10.12 百91(4版)。

 

〈訴訟〉

828条(会社の組織に関する行為の無効の訴え)

〈新株発行等の無効の訴え/無効事由に該当する場合〉

 

[判]Q690 非公開会社において、株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合、その発行手続には重大な法令違反があり、この瑕疵は株式発行無効原因となる。A◯【フォロー】最判平成24.4.24 百29

 

[判]Q691 会社法201条3項・4項の公示は、株主が新株発行差止請求権を行使する機会を保障することを目的として会社に義務付けられたものであるから、新株発行に関する事項の公示を欠くことは新株発行差止請求権をしたとしても差止の事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行無効原因となる。A◯【フォロー】最判平成9.1.28 百27

 

[判]Q692 会社法210条に基づく新株発行差止に基づく新株発行差止請求訴訟を本案とする新株発行差止の仮処分命令があるにもかかわらず、敢えて上記仮処分命令に違反して新株が発行された場合には、この仮処分命令に違反したことが新株発行の効力に影響がないとすれば、差止請求を株主の権利として特に認め、しかも仮処分命令を得る機会を株主に与えることによって差止請求の実効性を担保しようとした法の趣旨が没却されてしまうことになるから、上記仮処分命令違反は、新株発行無効の訴えの無効原因となる。A◯

 

【フォロー】最判平成5.12.16 百101

 

〈無効事由に該当しない場合〉

[判]Q693 対外的に会社を代表する権限のある取締役が新株を発行した以上、たとえ新株の発行について有効な取締役会の決議がなくとも、新株発行は有効である。A◯【フォロー】最判昭和36.3.31

 

[判]Q694 Y会社の代表取締役Aが、専ら会社の支配権を奪い取る目的で、取締役Xに招集通知をしないで開催した取締役会決議によりXに秘して新株を発行し、その全部を自ら引き受けて保有している場合でも、代取が発行した以上、有効な新株発行であり、著しく不公正な方法で発行されたものであり、また、取締役が新株を現に保有し、Yが小規模閉鎖会社であったとしても、結論に影響しない。A◯【フォロー】最判平成6.7.14 百102

 

〈公開会社において株主総会の特別決議を経ないでなされた有利発行の効力〉

 

[判]Q695 代表取締役が新株を発行した場合には、新株が株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な金額で発行されたものでも、新株発行無効の原因にならない。A◯

 

【フォロー】最判昭和46.7.16 百24

 

⭐️[論][要件]Q696 新株発行無効原因。A政令・定款違反の中でも重大な瑕疵がある場合。

 

⭐️[論][趣]Q697 828条趣旨。A会社の組織に関する行為に無効原因がある場合、民法の一般原則に委ね、誰でもいつでもいかなる方法でも無効が主張できるとしたのでは、多数の利害関係人を生じる会社をめぐる法律関係に収拾できない混乱を招くため無効の主張を制限し、法律関係の安定を図る。

 

⭐️[論][要件]Q698 新株発行無効の訴えの要件。A①ア原告適格(株主等)、イ被告適格(会社等)、ウ提訴期間(効力発生日から6箇月、非公開会社では1年)などの訴訟要件を満たしていること、②無効原因の存在。

 

⭐️[論][要件]Q699 合併無効の訴えの要件。A①ア原告適格、イ被告適格(存続会社、設立会社)、ウ提訴期間(効力発生日から6箇月以内の訴訟要件を満たすこと、②無効原因の存在。

 

🔷[論文リ(37)]合併無効の訴えの無効原因

🔷[論文リ(38)]株式交換無効の訴えの無効原因

🔷[論文リ(39)]新株発行無効の訴えの無効原因

🔷[論文リ(40)]新株発行の差止め仮処分命令を無視してなされた新株発行

 

830条(株主総会等の決議の不存在又は無効確認の訴え)

⭐️[論][文理]Q700 決議が存在しないこと(830①)。A外形的に株主総会の決議と認められるものがない場合のみならず、手続的瑕疵が著しいため法律上不存在と評価される場合を含む。

 

831条(株主総会等の決議の取消しの訴え)

〈招集手続の瑕疵/名義書換拒絶と招集通知の欠缺〉

 

[判]Q701 会社が正当な理由がないのに、株主名簿の名義書換に応じないで、その請求者である新株主に招集通知を欠く総会手続は違法である。A◯【フォロー】最判昭和42.9.28

 

〈訴えの利益を欠く場合〉

 

 [判]Q702 役員選任の株主総会決議取消の訴えが係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によつて取締役ら役員が新たに選任されたときは、特別の事情のないかぎり、決議取消の訴えは、訴の利益を欠くに至るとものと解すべきである。A◯

 

【フォロー/特別の事情】最判昭和45.4.2。上記の場合であっても、上記株主総会決議取消の訴えが当該取締役の在任中の行為について会社の受けた損害を回復することを目的とするものである旨の特別事情が立証されるときは、訴えの利益は失われない。

 

⭐️[論][基準]Q703「特別の利害関係」(831条1項3号)に該当する決議か否かの判断基準。

 

A ①当該取締役の会社での地位や権限、②会社の経営等についての関与の有無及び程度、③当該取引に対して果たした役割、④会社が取引をなすに至った経緯や目的及び当該取引が会社に与える効果等についての知識の有無及び程度等の諸般の事情を考慮して、一般的に当該取締役についての責任を免除することが不合理なのもであったか否かの観点から判断する。【フォロー】大阪高判平成11.3.26

 

⭐️[論][文解]Q704「特別の利害関係」(831①3号)。A株主としての資格を離れた何らかの個人的な利害関係を有する者をいう。

 

⭐️[論][趣]Q705 831条趣旨。A違法な決議によって利益を害される者の保護と決議を信用した者の保護との調和を図る。

 

⭐️[論][要件]Q706 決議取消しの訴えの要件。A①ア原告適格(株主等)、イ被告適格(当該株式会社)、ウ提訴期間(決議の日から3箇月以内)、エ訴えの利益などの訴訟要件、②ア招集の手続又は決議の方法の法令違反・定款違反・著しい不公正、イ決議の内容の定款違反(2号)、ウ特別利害関係人の決議行使に著しく不当な決議(3号)などの決議取消原因の存在(831①各号)。

 

🔷[論文リ(41)]株主総会決議の取消原因

🟧🔵[予備25]株主総会の著しく不当な決議

🟧🔵[予備26]新株発行無効の訴えと無効事由

🟧🔵[予備26]第三者に対する有利発行と株主総会決議の欠缺

🟧🔵[予備4]株主代表訴訟の提訴請求の適法性

 

⭕️〈共通〉

🔷[論文リ(42)]他の株主に対する招集手続の瑕疵を理由とする決議取消しの訴え【フォロー】最判昭和42.9.28(百)。株主総会決議取消しの訴えを提起し得る。

 

🟩[論文マ(38)]招集手続の瑕疵と決議取消の訴え

→株主は、他の株主に対する招集通知漏れを理由に総会決議取消の訴えを提起できる。

 

🟩[論文マ(39)]期間経過後の取消事由の追加

→新たな取消事由の追加は、法律関係の早期確定の趣旨を没却するため許されない。

 

847条(株主による責任追及の訴え)

 

⭐️[論][趣]Q707 847条趣旨。A株主が会社に代わって会社のために会社の機関、会社関係者の責任・義務の追及を目的とした訴え(代表訴訟)を提起することを認め、会社延いては株主の利益の保護を図った。

 

⭐️[論][要件] Q708 847条の要件。A①原告適格(6箇月前(非公開会社では制限なし)から引き続き株式を有する株主、②提訴請求を行なったこと(回復することができない損害が生ずるおそれがある場合は、提訴請求不要)、③②の日から60日以内に会社が訴えを提起しないこと、④不正な利益を図り又は会社に損害を加えることを目的とする場合でないこと。

 

🔷[論文リ(43)]株主代表訴訟において追及し得る取締役の責任

 

854条(株式会社の役員の解任の訴え)

⭐️[論][趣]Q709 854条趣旨。A役員の解任の訴えを少数株主権として定めることで、多数派原理を修正し、少数派株主の保護を図る。

 

⭐️[論][要件]Q710 854条の要件。A①原告適格、②被告適格(会社及び役員)、③役員の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実が存在すること、④当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたこと又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が323条の規定によりその効力が生じないこと、⑤当該株主総会の日から30日以内であること。

 

〈企業買収、支配権の争奪〉

 

833条(会社の解散の訴え)

〈株式会社における「著しく困難な状況」及び「やむを得ない事由」に意義〉

 

⭐️[判]Q711 833条1項1号にいう「業務の執行において著しく困難な状況」とは、例えば、株主や取締役が等分に反対していて、相互の対立、不信が極めて強く、取締役の改選等を行なってみても停滞を打破できないような場合や、そもそも株主総会を開催して取締役の改選決議をすることが困難な場合をいい、また、同項柱書にいう「やむを得ない事由があるとき」とは、多数派株主の不公正かつ利己的な業務執行により、少数派株主がいわれない不利益を被っており、このような状況を打破する方法として解散以外に公正かつ相当な手段がない場合にほか、株主間の不知等を原因として、会社の正常な運営に必要な意思決定ができないために、業務の継続が不可能となり、会社の存続自体が無意味となるほどに達しているときに、会社維持の観点から解散をしないで別の公正かつ相当な方法でその状況を打開することができない場合をいう。A◯【フォロー】東京地判平成28.2.1 百93(4版)。

 

247条2号(募集新株予約権の発行をやめることの請求)

〈第三者割当による新株予約権発行の差止/著しく不公正な方法に当たる〉

 

⭐️[判]Q712 会社の経営支配権に現に争いが生じている場合において、特定の株主の経営支配権を維持・確保することを主要な目的として、新株が発行された場合には、原則、247条1号にいう「著しく不公正な方法」による新株予約権の発行に該当する。A◯

【フォロー】東京地決平成17.3.23 百97(4版)。

 

〈法令又は定款違反に当たるとはされなかった〉

 

⭐️[判]Q713 株式会社が特定の株主による株式の公開買い付けに対抗して当該株主の持株比率を低下させるためにする新株予約権無償割当てにつき、株主平等の原則の趣旨が及ぶが、会社の企業価値の毀損の防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても、衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り、同原則の趣旨に反するものではない。A◯【フォロー】最決平成19.8.7 百98(4版)。

 

908条(登記の効力)

🟧🔵[予備3]不実登記の効力