3月26日。
『花冷え』という言葉がピッタリ当てはまりそうな週末となった。
降り止むことのない雨の中、花弁を散らしながらも桜はますます盛んだ。
『二月中旬並の気温』とTVは伝えるが、体感的にはもはや冬のソレではない。
やはり季節は理り通り巡っている。

雨の中、午前中からウォーキングに出かける。
県境を流れる江戸川の堤沿いに造られた遊歩道を経由して、駅前までを往復するコースだ。
途中、千葉大の園芸学部に立ち寄り、キャンパス内に植栽された花木の移ろいを見て廻る。
離職後、町中をアチコチ徘徊しながら考えた、最近のお気に入りの散歩コースになる。
スマホ一つを携え、お気に入りの楽曲を再生しながら、車や人の往来が限られた小径を選んで、自分のペースで歩を進めている。
途中、気になった花木や風景を画像に残すのが楽しみになってきた。

駅前のドトールで一服した後、買い物などを済ませ折り返すのだが、ここまでで7.5km、10,000歩前後···
前回、『15,000歩/日くらいまで伸ばしたい』と記したが、早くも20,000歩/日に上方修正することにした。
それと云うのも、1ラウンドプレーするのに20,000〜30,000歩程度を必要とすると小耳に挟んだからだ。
今までラウンド中に歩数をカウントしたことが無いので数値の信憑性は定かではないが、言われてみれば「そうなのか」と合点がゆく気がした。
試しに20,000歩消化してみると、疲労感も無く、それほど負荷がかかっているようにも思えない。
─イケるんじゃないか···
そう思った次第だ。

この日は雨脚が衰えないので、復路をショートカットし17,000歩弱。
やはり天候には影響を受ける。
傘でカバー出来ない下半身はズブ濡れに近い状態だった。
悪天候の日はやり方を工夫しなければならない。
─それにしても···
雨脚の強い中、何の工夫も無しにウォーキングに向かった自分に少し呆れていた。
─焦ってるのか?
年甲斐もなく無茶をしてる気がした。
事故に遭ったり怪我をしたら元も子もない。
普段、加齢による体力の減退を意識しながら、時々そのことがスッポリ抜け落ちてしまう自分がまだいる。
─いくら決めたことでもTPOは考えるべきだ···
自分を戒めた。

そんなことを思った矢先、早速しっぺ返しがやってくる。
翌日18,000歩弱を消化してから練習場で150球打ち込む。
新たな修正点を発見し、また一歩進展したことに満足しながらベッドに入った。
そして一夜明けた翌朝。
6〜8:00の間一時間おきにアラームをセットしているが、なかなかベッドから起き上がる気になれない。
ようやく10:00過ぎにベッドを抜け出すと、ハムストリングスから腰にかけて軽い筋肉痛に襲われていた。
左手母指周辺にも違和感がある。
前夜、いつものようにアフターケアをちゃんとしたつもりだが、それでは解消できないほどの負荷がかかっていたんだと思う。
筋肉痛の解消に一日、左手母指の違和感には三日ほどの時間を要することになった。
─調子にノッちゃいけない···
改めて自分に言い聞かせる。

一週間ほどが過ぎ、暦は四月に移った。
ゴルフの練習こそ控えているものの、江戸川沿いの遊歩道通いは続いている。
連日20,000歩をクリアし、歩行速度も徐々に上がってきた。
股関節の動きが良くなり、歩行時の安定感が高まりつつある気がする。
このように、ウォーキングが身体に及ぼす好影響は言うまでもないのだが、それにもまして近頃感じるのは精神面への効果だ。

川面や空の移ろいを眺めながら、時々、遊歩道脇の野芝の部分を歩く。
靴底を通して伝わってくる土の感触が心地良い。
額にわずかに浮き出た汗を、川沿いを渡る風がさらってゆく。
何故だろう?
ネガティブな感情は一切浮かんでこない。
次第に気持ちが和ごんでゆくのが分かる。
やがて、目に映る全てのモノの清らかな美しさに魅了されている自分に気づく。
それは、永遠に繰り返される生命の営みに"奇跡"を覚えるような、深淵な感動まで引き連れてくる。
記憶の中の遠い日の光景が浮かんでは消え、また浮かぶ。
─まだ覚えていたのか···
ちょっとした驚きがあった。
随分と荒んでしまったと思い込んでいた自分の中に、まだそうした純な光景が宿っていることに面映ゆい思いがした。
─オレは何を見てたんだろう?
世情に塗れるうちこびりついたコダワリの大方が、ひどく馬鹿らしいコトのように思えてくる。
長い間、悪い夢の中にいたような気になった。
そして、
─今感じている世界を大切にしたい···
そうした気持ちが胸の奥底から湧き上がってくる。
それは、何事にもかえ難いもののように思えた。
─こうしたコトなのかも知れない···
追い求めていた世界が見えたような気がした。

─もっと"健全"にならなきゃ···
川辺の景色に触れたことで、僕の精神は浄化されつつあるのではないか?
そのことを信じて、当面、川沿い通いを続けようと思う。