7月下旬、予期せぬことで職場から足が遠のく。
肩甲骨周辺の倦怠感が酷く、気持ちがすっかり萎えてしまったからだ。
"筋膜リリース"を施術してもらっている医師には事前に予告されていた。
「筋膜の癒着がとれてくると、感覚が覚醒してくるかも」と···
いわゆる"好転反応"の一種なのだが、想像を遥かに上回る倦怠感だった。
職場での作業を終え、帰路の電車で座席に座っているだけなのに、身の置き処が無いような状態になる。
─所詮日雇い···
そんな無責任な言い訳がつのるばかりで、労働意欲など微塵も湧いてこない。
非番・週休を合わせて11連休としてしまった。

─怠けグセなのか?
あいも変わらず、そうした下らない葛藤があった。
だが、入浴やストレッチで身体をケアしていくと若干回復するのだから、職場での作業負荷に身体が耐えられなくなっていることは否めない。
体力勝負の今の仕事に就いてから二十年近く···
加齢に伴い回復力が減退し、残存する疲労が徐々に蓄積されていったのかも知れない。
施術によって感覚が覚醒し、今になってようやく、身体のあげているアラームに気づけたということか?
気づくと、自分の判断を正当化する理由ばかりを探し続けていた。
いずれにせよ、
─我慢ということができない···
いや、我慢したくない気になっていた。
─コレも"弱さ"なんだろう···
他人事のように、自分の中に棲みついた厄介な難敵のことを思った。

多少の自責の念にかられつつ二日ほどを無為に過ごした後、ゴルフの練習を再開する。
部屋に逼塞していてもダラダラするばかりで、一向にコンディションは上向きにならない。
ゴルフと向き合うことで、精神状態だけでもポジティブに保ちたいと考えたのだった。
結果的にこの目論見は成功した。
自分自身の運動機能に全神経を集中し、ひたすらイメージした球筋だけを追い求める···
やがて打球の軌跡以外、一切が脳裏から消え失せていることに気づく。
僕が思うゴルフの醍醐味の一つ。
やはりゴルフは、僕にとって最良の精神安定剤なのだった。

朝5:00頃に起床してフルーツ、ヨーグルトなどを口にしながら、前日のMLB、PGAなどの結果をチェックする。
一通り家事を済ませ、ストレッチや軽い筋トレを90分ほどこなした後、天気と相談しながら練習場に向う。
ウエッジを中心とするスイング固めはまだ続いている。
球数は少ないが、おおよそ3時間ほどの練習で気持ちのいい汗をかく。
帰宅して、今日の成果と課題を頭の中で整理しながら、入浴とセルフマッサージで身体のリカバリーを図る。
HDD録画を視ながら、タンパク質、ミネラルを主とする食事を済ませ、体調に応じて0:00までにはベッドに潜り込む。
そんな競技ゴルファー気取りの生活を重ねたある日···
食事前にベッドの上で一息入れている時だった。
替えたばかりのシーツが練習後の身体に心地良い。
やにわに、どこか懐かしい多幸感に包まれた。
─これ以上ナニもいらないな···
そんな思いに胸が満たされた。
相変わらず"手放し"とはいかないが、体調は悪くない。
何より、明日試したいことがある。
そのことに、ささやかな期待を抱いている自分がいた。
─こんな生活が続くなら···
それは決して悪いことではないと思った。

だらしない欠勤のせいで、翌月の減収は免れない。
年金を主とする生活準備に支障をきたしたのは間違いない。
成り行きのリハーサルとなった年金生活は悪いものではなかった。
ソレを実現するためにも、
─まだヤるべきことがある···
自分に言い聞かせた。