───前投稿の続き


6月15日、初めての年金(加増分)が支給される。
あらかじめ通知された額が予定通り支給されただけだが、そのことに少なからぬ安堵感があった。
13年前、亡母の遺族年金支給時に随分と無為な時間を費やされ、イライラさせられたことがトラウマになっていた。
─果たしてスムーズに支給されるのか?
正直、実際に支給されるまで、"自分都合"を優先する"お役所仕事"への疑いが消えることはなかった。
嫌な思いをせずに済んだことに胸を撫で下ろしている。

四十年以上積立てた末の支給額として妥当なのかは分からない。
だが、定職から得る収入がある今、これまで"貯蓄"ということをないがしろにしてきた自分にとっては、"余禄"とも感じられるモノだった。
おかげで、月収をある程度維持すれば、懸案だった"年金生活"の準備が円滑に進められそうだ。
健康不安に慄きながらの就業に鬱々とすることもない。
このトシになって初めて、"金"の有難味が身にしみた。

身体面は好転してきている。
どうやら"筋膜リリース"は、自分にとっては効果的な施術法だったらしい。
腱鞘炎気味だった右手は完治と言っていい状態になった。
経年劣化中の身体のサビ落としを兼ねて、今は背中と首周辺を週二回ほど診てもらっている。
毎日、湯舟に浸かってのストレッチと軽いマッサージを欠かさないが、痛みの緩和と可動域の拡張が少しづつ感じられるようになってきた。
右足裏の足底腱膜炎は相変わらずだが、内腿側を意識して体重移動することで大事にならず済んでいる。
内転筋の衰えによって引き起こされたことなのか?
分からないが筋力の低下は否めない。
苦手な筋トレを再開しつつ様子をみようと思う。
すべてを加齢のせいにして半分諦めかけていたが、地道なケアでまだ回復の余地はあるのだ。
かつて両親の健康状態にあまり関心を抱いてこなかったクセに、加齢に伴う体力の減退のナニを分かった気になっていたのだろう?
「ようやく少し分かってきたか··· 」
亡夫の吐息交じりの声が聞こえた気がした。

三月の下旬頃と比較して、体重−6㎏、体脂肪率−6%となった。
誕生日前に妹と食事をした際、"16時間断食"の話を聞かされたことがキッカケだった。
足裏の不調のこともあり、少し体重を減らしてはと考えてのことだったが、停滞する精神状態を打破するために、何か形として現れる変化が欲しかったのかも知れない。
もちろんメンタル最弱の今、お題目通りのストイックなことなどできる訳もない。
かなりユルユルな形で食事や間食を減らしていっただけである。
それでもこれだけの成果がでるということは、摂取量がいかに過多だったかということだろう。
代謝が減退した今の自分にとって、『一日三食』、『規則正しい食事』の文言は摂取過多の呪縛となっていたようだ。
現在、30代の体重に戻り身体の動きは良くなってきた。
だが、体型にあまり変化はみられない。
胴回りに蓄えた脂肪は居座ったままだ。
よく云われるように、体重の変化は筋肉量の減少に繫がってるのかも知れない。
脂肪燃焼を促す代謝を上げるためには、筋力維持が今後の課題となるのだろう。

目指すモノが明確になったことで、ゴルフの練習は週一回から二回以上に増えた。
「時間が取れない」と嘆いていたが、必要となれば遣り繰りできるらしい。
要は気持ち次第なのだ。
─今までの延長線では向上できない···
そんな思いが芽生えていた。
身に染みついてしまった"自己流"のスイングイメージを頭から追いやり、セオリーに倣ってスイング中の各部の動きを点検していく。
すると、"勘違い"や"悪癖"といったアラが浮き彫りになってくる。
ボールへのコンタクトが悪くなってくると、スタンス幅が拡がってくる···e.t.c.
数え上げると切りがない。
分かったつもりでそうじゃないことがまだまだ沢山あるということを嫌というほど思い知らされた。
─アレは一体何だったのだろう?
かつてのショットを思い返し凝然としつつ、「少しはヤれている」と思い込んでいた自分に赤面するばかりだ。

4月より、ウェッジの"腰・胸・肩・フル"で縦横の距離を揃える反復練習からやり直した。
約四ヶ月を経た今、ようやく7iまでこぎつけたものの、横幅は3y、縦距離は10y前後の誤差が残る。
ウエッジでの高低の打ち分けが上手くいかない。
120球を超えた辺りから体幹の脆さが露呈し、スイングが不安定になってくる···e.t.c.
課題はいまだ山積みだが、不思議と焦りのようなモノは無い。
それよりもクラブを振る度にヒントが見つかり、まるでスイングの"謎"が徐々に紐解かれるようで、そのことに夢中になっている。
そして、
─次はどうなるか?
未来の自分に期待していることに気がついた。
長い間忘れていた感覚···
今回だけは本当に、それを取り戻せたと思った。

8月3日、36℃の猛暑の中を練習に向かう。
熱中症のことが気になったが、ワクチン接種を控えているので、この日を逃すと一週間ほど空いてしまうかも知れない。
─異変を感じたら即ヤメにすればいい···
そんな心積もりで練習することにした。
体調の異変に注意しつつ、水分補給と休憩をこまめにとりながら3時間ほど、ウエッジを中心とした練習を一通りこなす。
試したダウンスイングの手の動きは見当外れだった。
トップは一拍置くくらいの感覚でしっかりキメた方が良い··e.t.c.
この日も新たな発見があった。
夏らしい夜空が広がる帰り路、左右の肩甲骨の間に疲労感があった。
イヤな感じの張りではない。
─背筋を使ったスイングが出来た?
また一つ解決しつつあると思えた。
やはり努力は裏切らないのだ。
以前とは違う、着実な"下積み"の手応えがあった。
─オレが本気で願えばソレは必ず叶う···
何の根拠もないが、かつてずっと信じていたそのことを思い出した。

───終わり