怖れていたことが現実味を帯びてきた···

右手親指の付け根から手首付近にかけての痛みがとれない。
観念して接骨院に行くと、「腱鞘炎気味」との診断。
低周波やマッサージ等、一連の施術を受けテーピングをしてもらう。
─明日には少しでも改善するだろうか?
やはり不安な気持ちは隠せなかった。

7月の末頃から違和感が強くなっていた。
それだけが理由じゃないが、それ以来、ゴルフの練習は自粛していた。
ストレッチを入念に繰り返すことで一時は回避できたかに思えたが、8月の下旬になって誤魔化しが効かなくなった。
周囲にアレコレ詮索されるのが嫌で、職場では平静を装って作業していたが、もはやそうしたヤセ我慢もできそうにない。
非番明けに作業の調整を相談しなければならないことを考えると憂鬱だ。
普段、自分が頼られる分には何ともないが、逆の立場になると抵抗がある···
思わぬことで、『ええ格好しい』の偽善者的姿が浮き彫りになった。

医師の見立てによれば、今回の症状の原因は右前腕部の疲労の蓄積らしい。
加齢と喫煙癖により、血流が悪くなっている可能性が高い。
要するに疲れがとれにくいのだ。
その上夏場ということで、エアコンの冷え、シャワーのみの入浴が拍車をかけたかも知れない。

よくよく考えれば、全て既知の話だった。
─起こるべくして起きた···
自分の意識不足が招いた『想定内』とも言える事態だった。

一夜明け、状況は好転していた。
痛みの範囲は限定的に狭まり、前日の施術が効果的だったことが実感できた。
どうやら最悪の事態だけは回避できたらしい。
疲労回復について、今まで以上に留意していかなければと自分に言い聞かせた。

─もし『腱鞘炎』となり、クラブを握れなくなったらどうする?
そんな自問自答をしてみた。
どう考えても、ゴルフを抜きにした生活をイメージすることはできなかった。
たとえ満足にグリップできないとしても、何とかしてスイングできるようにするんだろう···
そんな姿が容易く浮かんできた。
─ホントなのか?
そんな執着に似た思い入れには、小さな驚きを隠せなかった。
─だとすれば、できるだけ身体を長持ちさせなきゃ···
あらためてそう噛みしめた。