カストリ雑誌 | ほんの思い出

カストリ雑誌

発禁本について書いていたら山本明を思い出した。


少し過ぎたが、9月28日(1999年)が命日(享年66歳)。

山本明は鶴見俊輔に影響を受けたコミュニケーション論専攻の大学教授で、京都べ平連が発足した京都集会の呼びかけ人の一人。テレビでコメントするタレント学者の走りで、11PMに何度も出演し(たしか藤本義一と同年齢)、小松左京とNHKにも出たりしていた。カストリ雑誌の研究家としても知られている。


カストリ雑誌という名は、その仙花紙がカストリ級という説や、カストリ焼酎と同様に3号(合)で潰れるからという説などがある。

『戦後雑誌発掘』(日本エディタースクール出版部/福島鑄郎編著/昭和47年8月発行/1500円)の「大衆文芸誌の開化」にはこうある。


ほんの思い出-戦後雑誌発掘
★Amazonへのリンク 戦後雑誌発掘―焦土時代の精神 (1972年) (エディター叢書)


「……、占領政策が深部で複雑化しつつあった昭和22年から23年にかけて、これをカムフラージュすべく吉田政府はGHQの協力を得て3S(スポーツ、スクリーン、セックス)政策を打ち出した。……
これら一連の性の解放は大衆文学にとってまたとない機会であった。……後年これらのものは一括して「カストリ雑誌」とも「カストリ文学」とも称せられ、戦後文学史上、最もさげすまれ、今日でさえ“カストリ”という言葉は眉をひそめられている。」
人間の欲望は変わらないなーと思います。


山本はこの福島鑄郎やその他の先人達の協力もあり、
『カストリ雑誌研究』(出版ユース社/山本明/昭和51年7月初版/4200円)を出す。


ほんの思い出-カストリ雑誌発掘
★Amazonへのリンク カストリ雑誌研究―シンボルにみる風俗史 (1976年)


副題に「シンボルにみる風俗史」とあり、雑誌そのものの研究というよりイデオロギー観点からの研究である。これには『猟奇』(創刊復刻版)が付録として付いていた。今読んでも面白くないのはアタリマエか。

ほんの思い出-猟奇


山本明は大学教授であったが、この本に先立つ昭和50年2月7日号の「週刊ポスト」(小学館)で、小沢昭一とカストリ雑誌について対談しているがその時の肩書は「戦後艶本蒐集家」となっている。

この『カストリ雑誌研究』は22年後の1998年8月、中公文庫(1238円)で再発行されるが、付録はもちろんなく、なぜか第二部の2「『真相』をめぐって」も削除されている。


ほんの思い出-カストリ雑誌発掘/中公文庫
★Amazonへのリンク カストリ雑誌研究―シンボルにみる風俗史 (中公文庫)