彼女は 大人の女性だった



よく ばかなこという俺を たしなめてくれた



ずいぶん 年下だけど



まるで お姉さんみたいな 感じだった




彼女が めざすのは



結婚



幸せな家庭



そして 出産




しかし



ばかな 俺は  その彼女の願いを



かなえることはできなかった





11月に知り合って



8月になろうとしていた




ずっと一緒だったけど



夜中



俺とは 別の部屋に こもって



彼女



母親と 何か 真剣に  話すことが  多くなった




多分



もう いい加減にしなさい



実家に 帰ってきなさい



その男は 一体  何者なの?



って感じなんだろう




まったくそのとおり



一言も 返せない





そして


その日が やってきた




その前の夜も


激しく 愛し合った




そして



二人  出勤するため



玄関に向かった



彼女が



ドアの前に 先にたった




そして


凛と  振りかえった



まゆを


しかめて




そう 



出会ったあの日と同じように




きゅと 俺をにらみつけて


言った



「ねえ



別れて ほしい」



「え」



予想は ついていた



そんなことを 言われるって



予想はしていたんだ



何も 答えられなかった



いやだとも



別れないでくれとも



考え直してくれとも




何も 言えなかった



何も  言えなかったんだ  おれは



8か月以上



一緒に 暮らしてきたのに