増加する「武器取引量」(真田幸光氏) | 清話会

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真田幸光氏の経済、東アジア情報
増加する「武器取引量」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)


私は最近、
「防衛産業を含む武器関連産業を、ビジネスとして容認して良いのであろうか?」
といった疑問を持つことが多くなっています。

世界のGDPである75兆米ドルの3%前後に当たる2兆6,000億米ドル規模ともなる、この武器関連産業のビジネス規模を小さいと見るか、大きいと見るか以前に、そもそも、
「武器関連産業」
は、ビジネスに入れられるのであろうか?と言う疑問です。

しかし、たとえ武器関連産業を規制したとて、誰かがこっそりと武器を作れば、アンダーグラウンドでは新たに武器が作られる、すると、更に強い武器が求められ、これが出回る、こうして、規制も有名無実化するでしょう。

そして、武器関連産業ともなってしまうと、今度は、
「意図的に武器を使わす場を提供する」
と言った動きすら出てくる可能性があります。

こうしたことを続けていて良いのか? についても私は疑問を持っています。

しかし、如何に私がこのような危惧をしても、世界は防衛産業を含む武器関連産業を容認しているようです。

そして、世界の軍事動向に詳しいストックホルム国際平和研究所のデータにはこうした現実が報告されています。

以下、これを少し引用させて下さい。

「スウェーデンのシンクタンクである“ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)”は、2010~2014年の5年間の世界の武器取引量は、2005~2009年と比べて16%増加しており、国別輸出量では2005~2009年には9位だった中国本土が2010~2014年は独仏両国を僅かに上回り、米国とロシアに次ぐ3位に浮上した」
と報告しています。

更にまた、
「中国本土は、2010~2014年の5年間に、それ以前の5年間に比べて輸出量を2.4倍に増やし、世界シェアは3%から5%に上昇した。
主な輸出先はパキスタン(41%)、バングラデシュ(16%)、ミャンマー(12%)で、上位3カ国が7割近くを占めた」
とも伝えています。

その上で、
「世界におけるシェアは、米国が31%、ロシアが27%と合わせて6割近くを占め、3位以下の国を大きく引き離している。
一方、欧州連合(EU)加盟国の輸出量は2010~2014年でそれ以前の5年間と比べて16%減少した。
輸出量3位から4位となったドイツは2014年に武器輸出のいっそうの抑制方針を打ち出すなど輸出量が大幅に減少している。
しかし、5位のフランスは、同年、ウクライナ危機を理由にロシアへのミストラル級ヘリコプター空母の売却を凍結していなければ、フランスが輸出量で中国本土とドイツを上回り、3位だったものと予想される。
 国別輸入量ではインドが世界シェアの15%を占めて1位、5%を占めるサウジアラビアが続き、僅差のシェア5%で3位だった中国本土は2010~2014年は2005~2009年と比べて輸入量を42%減らしており、国内の軍需産業が発達し、輸入に頼らなくなっているためである」
と言ったコメントをしています。

尚、これらを総括して、国際情勢の不安定さを反映してのデータであるとの結論の付け方は安易であると私は考える一方で、私には、
「世界は行き過ぎた広義の信用創造によって溢れ出た余剰資金を使う道として、世界のビジネスマンの一部には、むしろ、戦争をしたがっているのではないか」
とも感じられる世界のビジネス界の様相です。

また、日本に於いては、今、
「介護ロボット」
などの純粋な人々に役立つ平和目的の産業発展が進められていますが、これが軍事目的に転じるのは易く、世界のビジネスマンの倫理観が痛むと軍需産業を軸に世界の混乱は増す可能性すらあります。

ダイナマイト博士がかつて、開発したダイナマイトが平和利用されれば良いが軍需利用されると大変だと悩んだと言われる「悩み」が良く分かる昨今の情勢であり、世界の一部ビジネスマンには、ダイナマイト博士の悩みを理解してもらいたいと感じる次第です。




真田幸光------------------------------------------------------------
清話会 1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・東京三菱銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している

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