「リーダーシップは思想・哲学である」(谷口碩志氏) | 清話会

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谷口碩志の「会社は人から」第31回
リーダーシップは思想・哲学である
…夢・ロマン・志なきリーダーは存在しない


谷口碩志氏 (クリエイトマネジメント協会代表取締役)

哲学者のパスカルが言いました。人間は「考える葦である」。
考える働きは、大脳前頭葉で主として営まれているとのことです。
 
「考える」とは、頭の中で「自問自答」することです。

自分で何か問いをつくり、それに自分なりの答えを出すのが「考える」ことであるとすれば、考えることが自分自身の問いになることは明らかです。

賢問賢答、愚問愚答なのだからです。

この問いを問題意識と言い換えてみれば、その人の思想・哲学の原点はここにあると気がつきます。

何かを成し遂げたい、何かをやりたいという夢・ロマン・志が、さまざまな問いとなり、答えを見出すべく行動が生まれてきます。
だとすれば、自分なりの問い、むずかしく言えば思想・哲学が、その人を動かし、チームを動かして行く原動力であることが理解できます。

そこに工夫、研究、想像といった行動の根源があるとすると、ハッキリした自分なりの思想・哲学のない人、または乏しい人はリーダーとしては「力」がないということになります。

集団力学によれば、はっきりした意志(意図)を持った人物が3人(三人よれば文殊の知恵)いれば、その人物たちの協力により、ゆうに百人の人々を自由に動かすことができるといわれています。

ましてや、強烈な思想・哲学を確立した人物ならば、百人はおろか、数百万から数億の人間をもリードします。

世界の歴史をさかのぼれば、イエス・キリスト、お釈迦様、秦の始皇帝、ナポレオン、日本の歴史を紐解けば 弘法大師、伝教大師、戦国時代の信長、秀吉、家康など、枚挙をいといません。

すべて強烈なる思想、哲学に潜む夢、ロマン、志を持っていたからこそ大いなるリーダーシップを発揮しえたのです。
 
感情の動物である人間は、言葉に強く揺り動かされます。
それゆえに強い思想を持つ人物はいつの時代でも怖れられます。

今年のNHKの大河ドラマ『黒田官兵衛』の中で、最近放映された千利休が秀吉に切腹を命ぜられた場面、秀頼の一族根絶の対応など、記憶にあたらしい事例として挙げられます。
 
多くの会社では経験されたことと思いますが、労組が企業活動に深刻な影響を及ぼしていた時期がありました。その労組を動かしていたのは、たった一人の思想的リーダーであることがしばしばでした。

大きな会社がたった一人の思想的リーダーを持て余し、振り回されていた時代がありました。
それに対抗するには、その人物の思想をうわまわる次元の高い思想・哲学を持った人がいて初めて為しえたのでした。

つまり思想・哲学が必要になってくるのです。
 
思想・哲学などと言うと、大げさで、一般人に無縁のように思われますが、簡単に言えば、夢・ロマン・志・目標といわれるものです。
 
つまり寝ても覚めても忘れることのできない問題意識を持っているということで、このことは強烈な目標意識と言い換えてもよいと思われます。

誰が何と言おうと、断固として、個人の欲・得ではなくこの方向へ進みたいという強烈な執念、これを裏付ける考え方が思想・哲学です。

これは一応は誰でも持っています。
ただ、思いの強弱と次元の違いがあるだけのことです。

次元の低い、自分中心の思い、弱い思想しか持てないリーダーは寿命が短く、つねに全体を考え、世のため・人のため・社会のためという高い理想をかかげるリーダーは強力であり、宇宙感を得た時には時代を超えて永遠の影響力を持つに至ることにもなります。



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清話会 谷口碩志
 (たにぐち みつゆき)
昭和18年5月大阪市生まれ。昭和42年関西学院大学卒業後、3年間の商社勤めから経営コンサルタント会社へ転身。約9年間在籍、その間海外の企業実態調査のため欧米・中南米・アフリカ・共産圏・東南 •アジア諸国など40数回の渡航歴を数える。昭和53年、経営コンサル会社を創設、代表取締役に就任。

・クリエイトマネジメント協会 http://www.cmajapan.co.jp/

・谷口社長のブログはこちら http://blog.livedoor.jp/senba206/