小説 古都の花影 74 | 茶道体験教室 パート2 生徒さんとの日々のしおりとして、このブログを使わせていただきたいと思います。 

茶道体験教室 パート2 生徒さんとの日々のしおりとして、このブログを使わせていただきたいと思います。 

月に一度の体験教室でも何か人生でプラスになるものを掴んでほしいと思っています。興味ある方は日曜体験教室にご参加ください。何の用意もいりません。その人その人に合ったお茶を体験していただきたいと思います。

     第三章 晩秋

 秋も深まりゆく中で、田島家は母屋の方より、源造の隠居部屋に活気があった。

 早朝のひととき、相変わらずのんびりと茶室で過ごす源造であったが、今はその源造の座っていた釜の前に早苗が座っている。源造は、その早苗の点前をいま迄にない真剣さで見詰めていた。

 いっとき、富士見の山荘で調子を崩し寝込んだときは、またかと皆を心配させた早苗も、8月の末には前よりも一層元気になって帰ってきた。それからの早苗は、病など忘れたように活動的になっていた。

 早苗が柄杓に手をかけたところで、源造の膝の扇子が鳴った。

「まだ、その動作が可笑しいぞ。竹の柄杓は軽いものだ。そんな力んだ手を持っていったのでは、その力んだ勢いはどこへ抜ける。客の眼に触れ、見苦しい。このお点前は草庵のものだよ。書院の台子とは違う。もっと、力を抜きなさいー。そう、そのぐらい、、、。手先にも力が入りすぎたから、小指まではねてしまったのだ」

 そんな厳しく、細かな一言一言を早苗は耳で聞くというより、全身で感じ取った。もう、血縁であるという甘えを捨てきった、師匠へ対する素直な態度に徹していた。

 早苗は、富士見から帰ってきてから、茶の湯の稽古をつけてくれるように自分から源造に頼んだ。まるで、茶の湯に自らの生き方を求めるような真剣さであった。

 源造は、早苗の心境の変化に眼を輝かせた。今こそ、この孫娘に自分の茶の湯のすべてを伝えるときと悟った。ただ、自分には残されている時間が長くはないことを思うと、早苗と過ごす一時一時が貴重に感じられ、稽古にも熱が入った。

 それは、早苗にとって、今までにない厳しい祖父であったが、なぜか厳しくされればされるほど、心に張りがつくようだった。