「絵美ちゃん、ちょっと相談があるのよ。今年はね。典子さんも進さんも8月の中旬まで、富士見の山荘に行けそうもないんですって、、、」
絵美子は母の言葉が終わらないうちに、不服そうに口を挟んだ。
「まあ!今年はお父様も駄目、おじいちゃまも夏祭りの世話役で行けないんじゃ、お母様も居残りでしょう」
例年、田島家の人々は真夏の暑さや、観光客と海水浴の人々のざわめきを避けるように八ヶ岳の高原で夏のひと時を過ごしてきたのである。
「だからね、絵美ちゃん、典子さんはあなたの車で良介さんと和江さんを一緒に連れて行ってくれないかというのよ。今年は色々忙しいでしょ。新病院のこともあるし、、、。私も15日の諏訪湖の花火大会にはいけるから、それまで若い人たちだけで過ごすというのは、どうかしらね。その代わり、今年は花火大会、招待席で見れることになっているのよ」
「ワァ、素敵!いいわよ。今年は特別ですもの。大人がいないほうが楽しいこともあるもの」と、いたって、絵美子は正直である。
「でも、あまり気ままにしては駄目よ。管理人の安野さんご夫婦には、いつも面倒ばかり掛けているんですからね。すべて任せきりにしないで、じぶんたちのことぐらいはやって下さいよ」
「はい、はい。お母様」と綾子に生返事をすると、絵美子は典子のほうに向き直り、
「叔母様、それで良介くんと和江さんはいつごろ行けるんですの」と心は高原に飛ぶ。
「それは、絵美ちゃんの都合次第でいいのよ。本人たちはもう明日にでもなんていっているけど、、、」