ネズミ退治に山ほど大工道具を持ってきて、手伝いに来てくれた。
大体、電動鋸もかんなも私には使えないが、天井を破って天井裏に入り3軒分の屋根裏を動き回る。
意外と大変な作業になった。
建物は改築を重ねすぎて、空いているはずの屋根裏への入り口がなくなっていたのである。
一階も二階もやはり空いていないので、穴を空けるしかない。
案の定天井裏は下から明かりが漏れていて、明るいし暖かい。
広い空間に驚いた
これは、良い住みかなのだと思う。
ネズミには可哀想な気もした。
暫くたっても、あんなに大変だったネズミ捕りは効果がない。
袋小路の木造のお店はすべて一斉にやったのだが、今の都会のネズミは利口らしい。
母はネズミも可愛がって、餌まであげていたので、嬉しそうに笑っていた。
だが、母も今困っていた。
ネズミではなく、叔母の残した猫たちである。
何とか三匹は貰ってもらえたが、あと三匹は行くところがない。
叔母の養子さんは、遺言なのに大の猫嫌い。
餌も一回もあげられない。
母は、猫たちが懐いて、可哀想でおばの家から離れられないと嘆く!
猫にネズミで困るのは可笑しいと、思う。
叔母の家の猫たちは三匹とも、もともと神楽坂のうちのギャラリーの天井で生まれたのである。
そう、猫たちにお里帰りして貰おうと言った。
ネズミは自然にいなくなるし、母も安心して叔母の家から帰ってこれるというわけである。
母は歳だから、お稽古の合間に私が世話をすればよいのだと思った。
もともと、ギャラリーの天井に入り込んだ親猫が産んだ小猫たちで、その時も大騒ぎであった。
子猫たちに蚤が湧いたのである。
天井を壊し、滑り台を作り子猫を一匹ずつソーセージを餌に天井から滑り台で下ろし、私が捕まえて、一匹づつタクシーで叔母の家に運んだ。
叔母は猫好きで大きな檻を用意して、喜んで待っていてくれた。
タクシーの三往復もしんどかったが、そのあとの蚤退治には苦労した。
バルサンを火事のように焚いた。
姉は100箇所刺された。
叔母の家に居候していた甥の車は新車なのに蚤が移り、買い換えた。
ほんとにこの猫たちには手間が掛かった。
だが、私にはこの子猫たちに借りがある。
親猫と無理に離したことなのだ。