「大気の状態が不安定」とは? | 雨過ぎて天晴ゆる ~三重の気象予報士が綴る~

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図は気象庁より転載許可済みです。



今日は「大気の状態が不安定」について書いてみました。簡単に言うと、上空に寒気が入る、あるいは下層に暖湿流が入る、もしくはその両方を意味します。


昨日は関東で局地的な大雨が降ったほか、東北でもまとまった降雨エコーが見られました。

特に東北ではこの時、竜巻注意情報も発表され、雷活動が活発で、発達した積乱雲が線上に居座る危険な状況となっていました。

また、愛知県を中心に東海地方でも一時大雨・洪水警報、竜巻注意情報が発表されるなど、全国的に大気の状態が不安定な一日になりました。


上の図をみてください。

この天気図、気圧配置から東北の局地的な大雨を予測できるのか。

答えはノーで、この時、オホーツク海高気圧が居座り、一見してやませの影響はあるものの、局地的な大雨になることは想像しにくいと思います。


しかし、高層天気図を見ると気象をよく知っている方であればすぐに不安定という言葉がよぎるはずです。



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図は気象庁より転載・加工許可済みです。



これは500hPa上空の天気図です。少し見にくいですが、さきほどの地上天気図とは全く様相が異なります。

500hPaとはちょうど対流圏の中間~やや下層くらいになりますが、テレビの天気予報でよく上空5500m付近の寒気の動きが伝えられますが、それがちょうどこの図になります。

オホーツク海付近には低気圧があり、寒気が南に垂れ下がっています。これが気圧(この場合サーマルトラフといいます。)の谷で、東日本の上空には寒気が入っていることがわかります。

これでなぜ不安定かというと、

まず大気の状態が不安定であることを示す目安にはいろいろありますが、一番簡単なのは500hPaと地上の気温差が40℃以上かどうかということです。

真夏であれば気温が30~35℃程度はありますので、このように-6℃や-9℃の寒気が入ってくるとその差が40℃前後になり、大気の状態が不安定となります。

大体の目安は次のとおりです。


不安定の500hPa気温の目安

・冬…-30℃以下が日本海側での大雪の目安

・春秋…-21℃(初春、初秋であれば-24℃)以下

・夏…-9℃(真夏であれば-6℃)


このように、地上天気図だけでなく、高層天気図を見るようにすれば地上天気図からは読み取れない情報が見ることができます。

また、「大気の状態が不安定」とはどういう気象現象で、どういうことが起こるのか、これを知ることは防災に直結します。

大気の状態が不安定であることは相対的に上空に寒気が入る、または下層に暖湿流が入るなどの状況で、不安定な状態は対流を起こします。寒気は空気密度が大きく、重いのです。

上に重たいものを置いたら不安的になってやがて重力によって落ちることと同じです。落ちる際に周辺の空気を巻き上げます。それが上昇気流であり、積乱雲発達の原因となります。

そのため、大気の状態が不安定な時には積乱雲が発達することが想定され、積乱雲に伴う雷や局地的な大雨、突風などに留意する必要があるため、雷注意報が発表されます。雷注意報は一般の方が大気の状態が不安定であることを認識する最も簡単な方法です。


高層天気図の見方は少し専門的になるのでここでは紹介しませんが、500hPa気温と気圧の谷は簡単にみれますので参考にしてみてください。



高層天気図を見たい場合はこちら (HBCウェザーセンター)

注意報・警報の状況を見たい場合はこちら (気象庁)