治療室に入ってきたKさん。いつも笑顔が少ない。
聞いてみると、自分に自信が持てないという・・・。

今の世の中、自信のある人は少ないだろう。むしろ99%の人が何らかの
自信がないという思いを持っているのではないだろうか・・・。

では自信がないとは、どういう事なんだろう。
自信とは、多くの場合人と何かを競走したり比較したりする。あるいは他人
から自分を見られた評価を気にする ということから生まれる観念ではないだろうか。

幼い時から親に兄弟や同年代の子供と比較され、学校へ入れば成績や運動で比較され、
社会に入れば上司や同僚から比較される。人生比較されっぱなしの社会で、先進国の
大部分の人は何かしら自信を失っている状態なのではないか。
自信のなさが裏にあって、がむしゃらに努力している人も多いと思う。

しかしよくよく考えてみると、評価する人も子供の時から同じように比較され自信が
なかったり、評価する人自身が培ってきた観念という色眼鏡のフィルターを通して
他人を評価しているということに気づく。
Aさんには評価されなくても、Bさんには評価されるというのは、その人たちの持って
いる視点や観念が違うからだ。
だから人様の評価というものは絶対ではないのだ。そのような絶対基準でないものに
あまりに振り回され過ぎてきたのではないのだろうか。

この宇宙には、自分自身という存在は一人しかいない。他の何ものとも比較すること
などできやしない。自分自身を認識できる自分こそが、唯一最高の大切な存在だ。

むろん、切磋琢磨というポジティブな競走もある。しかしあまりにネガティブな比較
は人を疲れさせる。そういった組織の中で生きていかなくてはならない現実もある。
でも、自信や比較ということの成り立ちが自分の中でハッキリとしていると、
今までのように振り回され続けることは少なくなる。
さらに自分自身が最も適応できるワクワクする場に身を置くこと。そこには自信の
なさは存在しないだろう。
そして、多くの人がそれに気づいた時、もう少し生きやすい世の中になっていると思う。

Kさんにそのことを話すと、にっこりとほほ笑んで、肩の力が抜けた。