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Ⓑ『ⓑ謝康楽(しゃこうらく)』
=ⓑ『謝霊運(しゃれいうん)』
Ⓑ『㋺「西堂」㋩鳴琴ⓑ謝康楽』より
ⓑ「謝霊運」
{六朝(りくちょう)時代を代表する門閥(もんばつ)貴族である
謝氏の出身である。
祖父の「謝玄(しゃげん)」は「謝安(しゃあん)」の甥(おい)で、
”肥水の戦い”で前秦の苻堅(ふけん)の大軍を撃破した
東晋の名将である。
父の謝瑍(謝慶)が早世したこともあって、
祖父の爵位である「謝康楽」とも呼ばれる。}
ⓑ「謝霊運(しゃれいうん)」
(385年~433年,49歳没)
中国、六朝(りくちょう)宋時代の詩人。
{㋑晋室(しんしつ)の名門で、晋の㋺東遷(とうせん)とともに
始寧(「しねい」,今の浙江省)に移った。
東晋の車騎将軍「謝玄(しゃげん)」の孫として
「康楽(こうらく)公」の爵(しゃく)をついだので
「謝康楽(しゃこうらく)」ともよばれる。
宋(そう)に入って侯に下げられ、
永嘉(えいか)郡太守や㋩秘書監(ひしょかん)になったが、
政治に関与できぬ不満からみな辞任し、
自然美で美しい故郷始寧の旧宅を修築し、
父祖の資産をたのみ一族㊁奴僕(どぼく)数百人を
㋭擁(よう)して、山水を㋬跋渉(ばっしょう)し
㋣雅宴(がえん)を張ったので、
㋠謀反(むほん)の志ありとしばしば㋷奏上(そうじょう)され、
ついに広州で㋦斬罪(ざんざい)に処せられた。
故郷で作った㋸《山居賦(さんきょふ)》をはじめ、
その詩の㋾豪放(ごうほう)にして繊細(せんさい)な写景には
㋻風韻(ふういん)あふれる趣がある。
陶淵明(とうえんめい)の写景が技功を用いず
㋕平淡(へいたん)であったのと異なり、
一字一句をみがきあげ、つとめて
自然の姿を客観的にとらえ、
東晋以来はぐくまれてきた
<山水詩>を大成した。
㋵韻律(いんりつ)のととのった
㋟格調(かくちょう)の高いその作品は、
族弟の謝恵連や顔廷之(がんえんし)、鮑照(ほうしょう)らの
作とともに、斉(せい)・梁(りょう)の時代に受けつがれ、
やがて唐の律詩や絶句を生み出すための
大きな力となった。
㋑「晋室」
{晋の王室の一族。家族。}
㋺「東遷」
{都などが東の方へうつること。}
㋩「秘書監」
{中国の官名の一つ。
秘書省の長官。
図書を管理する職。}
㊁「奴僕」
{男の召使。下男。雑役に使われる男のこと。}
㋭「擁する」
{①だきかかえる。いだく。
②所有する。
③ひきいる。従える。}
㋬「跋渉」
{山野を越え、川をわたり、各地を歩き回ること。}
㋣「雅宴」
{風流な宴会。}
㋠「謀反」
{国家・朝廷・君主にそむいて兵を挙げること。}
㋷「奏上」
{天子に申し上げること。」「上奏」。}
㋦「斬罪」
{首を切る刑罪。打ち首。}
㋸「山居賦」
{隠退し、その地に山居をはじめた。
中央を出され、季最郡、守に着任してから、
わずか一年後のことである。}
㋾「豪放」
{度量が大きく、大胆で、細かいことにこだわらないこと。}
㋻「風韻」
{風流なおもむき。「風趣」。}
㋕「平淡」
{おだやかであっさりしていること。また、そのさま。}
㋵「韻律」
{韻文における音声上の形式。
音声の長短、アクセント、子音・母音の一定の配列のしかたなどで
表す音楽的な調子。
また、俳句・和歌など、音数によって表すものをいう。}
㋟「格調」
{詩歌・文章・演説などの構成や表現から生じる
全体の品格。}
〔日暮れに(Ⓑ,㋺)「西射堂(せいしゃどう)」を出る。〕
{『西の城門から歩み出て、遥か町の西の山を眺める。
連なる屋根には幾重(いくえ)にも崖が切れ込み、
木々の緑も小暗(おぐら)く沈みゆく。
朝の霜に打たれた楓樹(ふうじゅ)の葉は赤く染まり、
夕闇(ゆうやみ)のなかに山の気は翳(かげ)る。
季節は移ろい、憂いは募(つの)り、
心動いて思念(しねん)はひたすら深まる。
遠く旅する雌(めす)鳥は昔のつれあいを慕(した)い、
はぐれた鳥は元の林を懐(なつ)かしむ。
思慕(しぼ)の念を抱(いだ)くとき鳥でも心を砕(くだ)く。
ともに景色を愛(め)でる人と、どうして離れられよう。
鏡をさすれば黒かった髪も白く、
帯を手にすれば、きつかった襟元(えりもと)に緩(ゆる)みがある。
「変化に任せて天と一つになる」など、空言(そらごと)に過ぎない。
※独りひっそり生きるのに、頼るは(Ⓑ,㋩)「琴(きん)の音(ね)」。』}

※{光が「明」から「暗」に変わりゆく夕暮れ、
季節も秋へと移りゆく。
秋の日暮れに覚える
㋑寂寥(せきりょう)は友への思いを掻(か)き立てる。
身もやつれるなかで、
万物の㋺推移(すいい)に同化(どうか)するという
㊁『荘子(そうし)』の哲学を想起するが、
それも中身はない。
しばしの慰めを得るために
(Ⓑ,㋩)「琴にすがってみる。」
表面に語られてはいないが、
都から永嘉に追いやられた
㋭悲憤(ひふん)の念が、
この詩に流れる
㋬憂愁(ゆうしゅう)のもとにある。}
㋭「悲憤」
{悲しみ、 いきどおること。}
㋬「憂愁」
{うれえ悲しむこと。気分が晴れず沈むこと。}