祝日明けの金曜日。

比較的に仕事も穏やかな日。

17時に仕事を早退し、近くの泌尿器クリニックへ行ってみた。

以前に性病の検査でお世話になったので、羞恥心は特に無かった。

さほど混み合ってもおらず、すぐに自分の番がきた。

「今日はどうしたのー??」

また性病だと思ってるのか、軽めの感じ。

「左のタマが痛くて、最近硬くなってきた。」

そう言うと先生の表情が一瞬強張った。

「早速パンツ下ろして横になって」

言われるがまま、使い古されたベッドに横たわる。

キンタマを左右触診される。

ローションのようなゼリーを塗られて、冷たい器具を当てられる。

「あ、超音波あててるからね。」

何か未体験の事に緊張感が僕を襲ってた。
キンタマにローションみたいなもん塗られたら、それは風俗店。

普通のテンションならそう思ってただろ。

先生の真剣さに、そんな余裕すら無かった。

「はーい、いいですよー」

待っていましたと言わんばかりにサッとズボンを上げる。

座ると真顔の先生が真っ直ぐこちらを見ていた。

「落ち着いて聞いてね?」

あ、終わったわ。
俺の男としての人生が終わった。そんな気がした。

「精巣腫瘍・・ガンや」

動揺を悟られたく無かったのか、僕は平然を装った。

「本来なら今すぐに総合病院に行ってもらいたいけど、もう金曜日の17時過ぎ。うーーん、月曜日から仕事休め!な!予約取っておくから!!いいな!?」

圧が強くてYES以外は言えない。というか言う気もなかったけど。
 
それから精巣腫瘍について説明を受けた。

10万人に1人くらいの確率の病気だという事。

完治する確率が非常に高い事。

進行が異常に早い事。


「結婚は?子供は?」

いません。
そう答えた時に思ったこと。

婚約を解消してよかったな。人の人生を狂わせなくて済んだ。と。