精神科診断の手順はまず身体疾患の除外からと、何度も説明しているが、この身体疾患の中には、最初、著明な不安や焦燥感、そして多動、不注意を来す病気が少なくない。今やコモンディジーズのAIDS脳症や、大事な神経疾患、舞踏病の初期にもADHDに似たような症状が出る。
それだけじゃない。統合失調症、双極性障害、うつ病、など精神科の最重要疾患にも、あたかもADHDを思わせる多動や不注意の症状が目立ってくる場合がある。多動や不注意といえば何でもADHDにするというのは素人のすることであって医者のすることではない。そういうことにならないようにするには、受け身の問診で終わらず、医者の方から症状を獲りに行く姿勢が欠かせない。
忘れ物や不注意によるミス以外に、たとえば、色々な不安が次々に浮かんでそういうことにばかり気を取られるという症状はありませんか?とか、気分のムラが激しく、機嫌が良い時と悪い時、気分が高揚している時と落ち込んでいる時が頻繁に入れ替わると言うことはありませんか?といった具合だ。
優秀な医者は必ずしていることだが、初診問診にはあらかじめ準備した型が必要である。どの患者にもこれだけは必ず質問するという質問を、優先順位をつけて頭の中に叩き込む。そして日々、その質問集を検討し、優先順位を変更したり、新しい質問を加えたり、質問の文言のパターンを考えたりと、診察のための準備を怠らない。そういう医者を選ばないと、治るものも治らなくなるのである。