優秀な精神科医は、初診患者に、今日が初めての精神科受診ですか?ご自分で受診しようと思いましたか、それとも誰か家族や友達に促されてですか?という質問を必ずする。この質問を冒頭に持ってくる医者は優秀である。何故ならこれは「病識」の有無に関わる重要な質問であると同時に、近年精神科の記事がネットでいろいろ書かれるようになり、本人は健常だと思っているのに、周りが過敏になり過ぎて「病人扱い」するケースが急速に増えているからである。専門教育を受けていない素人が友達を捕まえ、「うつ病かもしれないってネットに書いてあったから病院行ったほうがいいよ」と言うのである。これはとても危険で面倒くさいことなので、必ず確認する必要がある。従って、病院に訪れた理由をちゃんと確かめようとする医者は優秀である。

医学的に「病識がない」というのは、例えば双極性障害の躁状態で、本人は「ものすごく調子が良い」ため、よもや自分が病気とは思わず、しかし調子が良いを通り越し、誇大妄想を述べたり、多弁多動で、友だちを引きずり回したり、自分の行く道を阻まれると簡単にキレて怒りをぶちまけ暴行に及ぶ、といった状況になっていることがある。これほど自分が病的な状態なのにその自覚がないことを「病識がない」と言うが、今はそっちより「病気でもないのに過敏になった周りの人が病気扱い」し、精神科に行けと言われた、というケースが増えているのである。だから精神科は今日も満員なのである。