初診で「あなたはADHDです」と告知するにとどめず、薬まで処方する医者がいたなら、その医者は標準治療ガイドラインを無視しています。つまり自分勝手な独断治療を行う可能性が高いということです。医療で大事なのは、まず最初は必ずガイドライン通りの標準的医療を行うことです。そうすることで鑑別診断の精度が高まるからです。めちゃくちゃなことをやれば病状が悪くなるのは当たり前です。しかしそれは本来の病気のせいではなく医原性つまり「めちゃくちゃな治療により悪くなった」ということです。
 
精神科診断手順の最初のステップは身体疾患の除外であり、このことは治療が終了するまでずっと頭の中に置き続ける必要があります。身体疾患の可能性ゼロの患者などいません。著明な不安と焦燥を来した患者が、薬だけとっかえひっかえしても一向に良くならず、おかしいなと思っていたらある夜呼吸困難を来して救急部に運ばれ、カリニ肺炎が発見され、ようやくHIV感染症(AIDS)と判明した患者がいた。明らか精神科医の見落としです。今やAIDSは治る病気だけに、もし治療タイミングを逸して患者が死んだりしたらそれこそ訴えられ、負けます。


初診の次なるステップは精神科的に重要な疾患つまり、統合失調症と双極性障害を確実に除外することです。統合失調症も双極性障害も、最初はあたかも適応障害、うつ病、不安障害、ADHDのどれにもあるような症状で発症するため、経験の浅い医者はうっかり「適応障害」「ADHD」などと診断してしまいます。しかし最初から適応障害やADHDの診断するということは精神科の診断手順に反しているので、まともな医者はそういうことをしません。