精神科診療には全国共通の絶対ルールがあります。こういう大事なことはネット検索しても出てきません。

精神科診断において、最初に行わねばならないのは、身体の病気の除外です。

どういうことかというと、抑うつや不安、幻覚や妄想といった精神科では「よくある症状」を来すのは、何も精神の病気だけではないということです。精神の病気だけじゃく、数々の内科の病気でもそういう症状を来すことがあり、しかもそれが最初の症状だったりするのです。

例を挙げましょう。怖い例です。

ある中年男性が不安を主訴として来院しました。いろいろなことが不安で、特に自分の健康について強い不安を感じており、頭痛、腹痛、吐き気、体の痛みなど、さまざまで、まとまりのない体の症状も同時に訴えていました。精神科ではよくあるスタートです。

ここで熟練した精神科医は、不安神経症とか全般性不安障害とか、そういった診断を迂闊にすることはありません。知る限りの身体の病気を頭の中に浮かべ、照合します。

結果を先に言いますが、この男性、のちにHIV感染症(AIDS)であることがわかりました。しかし精神科医はそれに気づかずHIVの検査もせず、結果患者はカリニ肺炎を発症し、救急搬送され、下手をすれば死んでいた。コモンディジーズであるところのHIVを見逃すなど、医師としてあってはならないことと、救急部のドンからお𠮟りを受けました。
ということです。初診で、うっかり不安神経症とか、パニック障害とか、うつ病とか、診断名を告知してはいけない理由は、こういうことがよくあるからです。