わが師、糸川英夫博士の家に泊めていただき、朝ごはんを御馳走になっていたときのこと。


糸川先生は、大抵 朝ごはんは納豆をかけて、昼はマーボ豆腐をかけてサササって 召し上がっておられました。 


 あっという間に


「ボクはミンチだからね」

え?! 先生それはどう言う意味ですか?

「味音痴ってことよ。

 食事にかける時間を節約すれば、

 研究の時間がたくさんとれるでしょ」


そんな先生が、食事しながら話すなんて滅多にないこと

 「あなたね、成功ってどんなことだと思ってます?」

 

 え、・・・いきなり・・ あの~

あ、 成功って、あらかじめ設定した目標に向かって 段階を追って

実現することって、 あの、 カーネギーの本に書いてありましたけど・・・  え~ っと

  

   しどろもどろになって理屈をこねる私に、

「ま、そんな理屈っぽいことじゃ、あなたね 成功しないよ」

 がーーーーーん

「あのね、成功者っていうのは、

  縁を大事にする人のこと

 

 縁?

 

 「そう、縁よ

   出逢いは偶然じゃありません。

この宇宙に 偶然が入り込める余地はありませんから。

 すべてが 完璧な秩序で動いているのが この宇宙です。

だから、人と人の出逢いにも、目に見えない法則が働いています。

それを大切にすれば成功しますよ。」

 

 先生、それを実践するにはどうしたらいいのでしょう。

 

 「あのね、ひとつ前の縁を大事にしてごらんなさい。

 いいことも、悪いことも どちらも大事だけど、

 いいときには、その出逢いを自分が作ったと思いがちよ。

 でもね、そんなときこそ その出逢いをもたらしてくれたひとつ前の出逢いを大事に。

 あの人のお陰でこの人が目の前にいるということを忘れない人。

 その人が、人生の成功者よ」


私はその教えを

先縁尊重」と名づけ、

ずっと大切にしてきました。


  いまの私があるのも、

  そのおかげです。

 

1999年2月21日 糸川英夫先生は天に還ってゆかれましたが、亡くなってから、先生との真実の対話が始まったように思えます。


  先生と死に別れて22年

 この夏、先生を語ろうと思います。

 先生の誕生日に、

 先生の終の住処で。


  きっとまた新しいこと教えてくださいますね。